ショートストーリー あんかけ皿うどん

「お待たせしました。皿うどんと餃子セットです」
店の人から手渡された時から、勝負のカウントが始まる。
パリパリの麺をいかにパリパリのままで食べられるか。
それが勝負。
手早く餃子のタレに酢とラー油を含ませる。

フードコートに並ぶテーブルの中でも、店の目の前を選ぶ。
椅子に座って、箸を掴む。
それは、無駄のない動作だったと自負する。
そして、あんがトロリと落ちる皿うどんは口内へ吸い込まれていった。
プリプリのエビ、コリコリのキクラゲを咀嚼しながら、次の一口の準備。
箸で崩れるパリパリ麺の、音を味わう。
箸休めに挟む餃子はすぐになくなった。

そうやって一口、また一口とあんかけ皿うどんは、皿から消える。
皿うどんが残りわずかとなると一旦、手を止めた。
最終形態へと変化させるためだ。

麺を滑らせ、あんを余さず絡めとる。
箸からも、クリスピー感がなくなっていく感覚が伝わってくる。
徐々に重くなる麺。
しなる麺を持ち上げると、一気に啜る。

麺の細さとあんの重さが癖になる。
食べ進めるスピードは落ちることなく完食。
口の中に残る後味まで楽しむ。
水を飲んで、ふと考える。

今日は薄味だったような気がする。
そこでようやく、店のカウンター横に備え付けられたソースと目があった。
餃子のタレにしか酢をかけていないことがフラッシュバックする。
皿うどんにソースとお酢をかけるのを忘れていた。
自分のケアレスミスに愕然としながら、空になった食器を返却した。

沢山の記事の中から読んで頂いて光栄に思います! 資金は作家活動のための勉強(本など資料集め)の源とさせて頂きます。