ショートストーリー おまじないとソフトキャンディ

噛めばくっついてくるのも愛おしい。
気付けば消えてなくなる甘く柔らかいお菓子。

コンビニで買ったソフトキャンディを食べながらテスト勉強をする。
特にぶどう味が美味しくて、最近のお気に入り。
難しい問題にぶつかると、噛む回数が自然と増える。
ぶどうのフレーバーが強く香り、問題の難しさに反して、ストレスが逃げていく。
それどころか、ソフトキャンディの糖分は脳の回転の手助けをしてくれているみたいだ。
噛めば噛むほど、頭がさえる。
噛めば噛むほど、難問も解ける。

問題集のページが進むように、ソフトキャンディの減りも比例する。
難問にぶつかると、机の脇に避けてあるソフトキャンディに自然と手が伸びる。
問題から目を離さないで頬杖ついて、問題の突破口を考える。
空いている手はひたすら、机のソフトキャンディを探す。

机の上で手をバタバタ踊ろさせるも、ソフトキャンディの感触に当たらない。
不思議に思って問題集から目を離す。
ソフトキャンディは、いつの間に間違えたのか筆箱の中に入っていた。
変わりに筆箱から出てきていたのは、消しゴム。

自分のドジにため息をついて、筆箱に潜り込んだソフトキャンディを取り出して、包みを開けた。
勉強中にもさんざん食べていたのに、包みを開けた瞬間に、飛んでくるぶどうの香りに疲労が溶ける。
ソフトキャンディを食べる間、休憩にする。

ソフトキャンディに居場所を取られた消しゴムを手に取る。
カバーを外すと隣の席のあの子の名前が出てくる。
両思いになれるおまじないは、消しゴムを使い切らなければならない。
だけど、ついこの間の席替えで隣になってしまい、使うタイミングを逃してしまっている。
まだカバーも綺麗な消しゴム。
あの子に名前を書いていることがバレたらと気が気でなくて、学校では違う消しゴムを使っている。
だんだん使わないのが日常化して、そのままにしてあった。

少しでも小さくなったら良いと、解きかけの問題をわざと消す。
消しカスは出るけれど、大きさの変化はない。
当たり前だが、それが少し悔しい。
しばらく無心で何もないところを消し続けているた。
ソフトキャンディが口の中で溶けきったところで、我に返った。

消しゴムは相変わらず、大きいまま。
ソフトキャンディみたいに早く小さくなればいいのに。
馬鹿なことを考えた自分を笑い飛ばして、問題集に向き直った。
問題をイチから解き直すと、最初解答しようとしていた答えが間違えていたことに気がつき、得した気分で次の問題に目を移した。

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