ショートストーリー フルーツ飴

いちご、ぶどう、りんご。
薄い膜に覆われている果物がキラキラ光る。
薄い飴を噛めば無くなるいちごは、後に残る酸味が甘ったるさを中和する。
ぶどうもいちごと似ている。
違いがあるとすれば、果汁の甘みが飴の甘みと合わさると、感じたことのない幸福感が得れるところだ。
りんごは酸味も甘みもバランスが良い。
後味もスッキリしていて、大きさに比例して楽しみが長持ちする。

どれを選ぶか迷い、やっぱりあちらの方がと選んだ後からも迷える。
美しく楽しい祭りの日だけの特別な飴。

祭りの灯りがまだいらない明るいうちに、屋台の中で一番好きなフルーツ飴の店に立ち寄る。
昔の恋人は子供っぽいとあざ笑っていたが、今の彼は違う。
穏やかで私の好みに合わせてくれる。
祭りの会場につくなり、フルーツ飴を売る屋台を三つも見つけ、どこの店に行くか悩みだすほど。
店選びに優柔不断さを発揮し、さらに店の前で三種類のフルーツ飴に悩みだす。

いちごみたいに可愛らしく、ぶどうみたいに柔らかく、りんごみたいに優しい彼は、フルーツ飴がとても似合う。
結局、全部買えば悩まなくて良いと、一つずつ買ってくれた。

フルーツ飴好きとはいえ、私も初めての食べ比べ。
三つもあるけれど、じっくり食べる。
日が暮れてくると、祭りを楽しむ人も徐々に増えてくる。
かき氷屋の前では、学生らしい甲高い声でキャッキャッと騒ぐ様子がうかがえた。

祭りらしい賑やかさに私達は微笑み、次の屋台を探し歩く。
途中、あの元恋人にあった。
まだ私のことを子供っぽいと笑っていたが、私の隣にいる彼が大企業の御曹司だと知ったら、そそくさとどこかへ去っていった。
連れていた新しい彼女という子は、子供っぽい装いに言葉遣いをして、彼を追いかけていた。

付き合っていたことが恥ずかしくて、今の恋人を見ると、彼が見るからに嫉妬をしていた。
彼も意外に子供っぽいところがある。
フルーツ飴が似合う理由は、そこにある気がした。

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