ショートストーリー 三匹の子豚とキャベツときのこのスープ

暖炉の火にかけた鍋の中は、芯まで柔らかなキャベツと肉厚きのこが澄んだスープで泳いでいる。
コンソメが染み込んだキャベツは舌で潰すと、溶けて消える。
潰したキャベツは、旨味を蜜のように吐き出して肉厚きのこの風味と仲よくまとまった。

レンガの家を建てた三匹の子豚は、家を吹き飛ばされることなく平和に暮らす。
風が吹く日も雨の日も、晴れている日も三匹は仲良く音楽を奏でて暮らす。

ある日、楽しい音楽があるなら、美味しいご飯もあればもっと素敵だ。
長男坊が言い出した。
次男坊も三男坊も流石は兄だと同意して、鍋を一つ用意した。
そして、それぞれ思い思いの食材を見つけてくるように、長男坊は弟達に言いつけた。

長男は、手塩にかけて育てた食べ頃のキャベツを畑からとって鍋に火をかけた。
次に次男坊が、森で探した肉厚で香り豊かなきのこを鍋に入れる。
鍋の中は湯がグラグラ沸き立つ。
キャベツの甘みときのこの香りが、長男坊と次男坊の大きな鼻をくすぐる。
二人で三男坊の帰りを今か今かと待つ。

その頃、三男坊は森で出会ったおばあさんとお茶をすすっていた。
クッキーに、ハーブの挟んだサンドイッチ、栗の乗ったタルトまである。
豪華なお茶会は、赤い頭巾を被ったおばあさん自慢の孫娘が用意してくれたのだとか。
三男は、おばあさんの孫娘の自慢話を聞きながら、ご馳走を遠慮なく頬張る。
おばあさんの孫娘は、さぞかし可愛いのだろう。
そんなことを考えて、鍋の具材のことなどスッカリ忘れていた。

家では、クタクタに煮込まれる具材を前に兄達が帰らぬ弟を心配する。
もしかしたら狼に……。
嫌な考えを振り切るように、二人は楽器をかき鳴らすも、奏でられるのは悲しい音ばかり。
長男は、あんなことを言い出さなければと後悔しながら、三男坊の良いところを音楽に乗せて歌う。
次男坊は、悲しみが詰まった長男坊の表情とレクイエムのような音楽にあてられ泣き出した。
しょっぱい涙が鍋に入るも弟を思う兄弟は気にしない。

そこへ三男坊が、ようやく口笛を吹きならして帰ってきた。
兄達の様子に驚くも、事情を話す。
そして、お詫びに森で出会ったおばあさんとのお茶会に誘った。
兄達はすっかり笑顔になり、三男坊はおばあさんから譲って貰ったコンソメを一つ鍋に入れる。
ゆっくりかき混ぜ、兄弟で分けて食べる。
塩味がほどよく効いて、甘いキャベツにさらに甘みが増す。

スープの美味しさに三匹は夜通し音楽を奏でる。
その音楽は、森のおばあさんと赤い頭巾の女の子との茶会でも披露されることになるだろう。

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