ショートストーリー スナックパン

溶けていく柔らかさと甘さのバランスが絶妙的。
一袋を二人で分け合って、コーヒー牛乳で流し込む。
お互いコーヒー牛乳とパンを交互に食べ勧めていく。
二人分のコーヒー牛乳がバランスよくなくなるように、コンビニ前でゆっくりと語らった。

塾ではあんパンばかり食べてるあの子に、たまには違う物を提案したら、なぜか奢ることになった。
「私の食事に口を出すなら奢ってよ」
塾の帰りにそう言われたので、二人並んでコンビニへ寄る。

勉強終わりのボーッとした脳で、女の子の好きな物を考えるだが、何にも思い浮かばない。
店内をグルリと一周して、昔一緒に遊んだ記憶のある女の子が食べていたものを思い出す。
女の子が誰かは思い出せないけれど、美味しそうに食べていたのは鮮明に覚えていた。

記憶の中の女の子が手に持っていたスナックパンは、変わらない見た目で店頭に置かれていた。
一袋に数本入っていて二人で食べるのには、ちょうど良い。
そう思ってコレでも食うかと声をかける。

彼女は、少しだけ嬉しそうに了承してコンビニの前で静かに袋を開ける。
パンの甘さでようやく頭も働くようになり、塾で習ったことを話す。
分かりにくかった部分を共感しあい、解釈の意見交換をし、理解を深め合う。

内容に色気なんてものはなかったし、甘い雰囲気にもなってなかった。
けれど、居心地が良いと思っていた。
それは、自分だけではなく彼女もきっと同じ気持ちで、細く柔らかいパンのはずがゆっくりと減っていっていた。

たまにはこういうパンも良い。
袋に入ったそれを彼女に差し出し、もう一本ずつ食べ始めた。

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