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老舗企業と新興企業のGAPが生む問題の複雑化

あじゃてくアドベントカレンダーの12/14は、あじゃてくオーガナイザーこげばやしこと「こばやし」が担当します。先週まで某メガバンクでアジャイルを推進していましたが、今週から某外資系クラウド事業会社へ転職しました。今日は、老舗のユーザ企業からの視点で、今日本企業で何が「コト」を難しくしているのかを、私目線で書いていきます。

『ここでは老舗企業を銀行に絞りお話していきますが、先に断っておきますと、「誰が悪いのか」を示したいのではなく、「何が難しいのか」を伝えることを目的としています。この記事を読んで、少しでも日本の老舗企業の苦労を理解して下さる人が増えれば幸いです。』

成功体験を経験していない老舗企業

これまで特に銀行は、合併続きで何か新しい取り組みをするのではなく、合併によるシステム基盤の統合に労力を費やしてきました。一部ではまだ合併前のシステム基盤が残るところもあります。更に銀行では、ビジネスも大きく変化することなく、システム基盤は依然として合併時に構築した環境で十分耐えられるものでした。

Fintec企業参入による盤石だったビジネス基盤の変化

前述したように、世界において銀行業は、これまで盤石なビジネス基盤であり、新興企業が参入しにくいビジネスエリアでした。しかし、提供されるサービスはカスタマイズされていなく、手続きは煩雑という過去から一ミリも進化していない状態であり、不透明な手数料や高手数料な金融サービスに対する不満が一般社会に根付いていました。こういった背景の中、昔の仕組みを破壊するディスラプトとDXというキーワードと共に、新興企業への一般社会の期待が高まり、ここ10年進化していなかった金融サービスへの参入が加速したと私は考えています。

イマ求められる人材とコレマデの人材のアンマッチ

老舗企業では、盤石と考えていたビジネス基盤に対し、如何に品質高く安全にサービスを提供するかに重きを置いており、企業は社内人材に自律・自発性よりも他律・従順性を求め、よりガバナンスが効きやすい体制を人材レベルから強いていった。この結果、会社の意に反する行動をとる社員はほぼいなくなり、ガバナンスが行き届いた今の企業スタイルになっていった。

しかしながら、昨今は色々な分野から金融サービスへの参入が相次いでおり、悠長に「うちは止まらないサービスを提供できる」という売り文句だけでは対抗できないため、急遽より変化に柔軟な体制整備が必要となり、「アジャイル」に注目が集まった。

ただし、前述した通り、社内人材がアジャイルで理想とするスタイルとは、全く逆のスタイルで育っていました。更に何もないところからサービスを一から構築する経験がある人材がほぼいないことも相俟って、まったくうまくワークしないということに老舗企業は身をもって知ったわけです。プロセス・ルール、システム基盤の変化だけでも大変なのに、社内人材にも変化が求められるカオスな状態に多くの日本企業が陥ているというのが現状。

新興企業の成功体験が老舗企業の問題を複雑化

老舗企業が苦労する一方で、技術的な負債を抱えていない新興企業はどんどん新しい仕組みやプロセスを取り入れ、アジリティが高く外部環境に柔軟な状態に変化していきます。(変化というかむしろ元々というべきか・・・)

老舗企業では成功体験がないため、社外の成功体験の事例をベースに自社の変革に活用するアプローチを取っていきます。この時に事例として多く用いられたのが新興企業の事例です。その結果、外部事例ベースに自社のToBe像を描くようになっていきました。この時、完全に忘れ去られてしまったのが描いたToBe像にどうやって向かっていくのかです。そもそも、社内の事情も良く解らない外部コンサルタントに他社事例ベースのToBe像を描かせ、プロパーはこの作業に参画もせず、アウトプットだけもらいこれをIT戦略が目指すToBe像にした。

当然のことながら、AsIsと距離がありすぎて、更に社外の人が作ったToBe像を目にしたところで、これを渡された社員はなんのこっちゃよう解らないわけです。

これが老舗企業の変革を更に遅らせる要因になったと私は考えています。

これから老舗企業がやるべき10のこと

そんな数千規模のシステムを抱える老舗企業でアーキテクチャ・アジャイルの戦略推進というIT戦略の重要施策を担当した経験から、私が思う老舗企業が変革する際に意識すべき「やるべき10のこと」を私の独断と偏見で書いていきます。

※以下はあくまで私がこれまでの経験から気づいたことです。共感してもらえる部分があればうれしいです。

① 兎にも角にも自社の人材で未来を描く 社外の人材に委ねるとノウハウは社内に溜まらず、契約終了と共に全て外へ流出します。

② 面倒くさがらずに現状を可視化 完全な鳥瞰図を書く必要はなく、何がどこにあり、どんなことをしているのか、そしてどんな課題があるのかは、全体俯瞰し整理してからでないと何をすべきなのか判断が難しくなります。

③ プロセスから過剰なイベントを減らす 無駄な部分をなくすだけでも、実は思っている以上にアジリティを向上させることが多々ありまし、実は大きく変化させずとも、ほしい効果を生むことがあります。

④ 組織からロールを作るのではなく、ロールから組織を作る 「この組織があるからこういうことをしてもらう」ではなく、「こういうロールがあるから組織・チームを作る」ようにする。組織を変えるのは悪ではなく、外部環境の変化に合わせ組織改編を行うことはごく自然。

⑤ 誰が主役なのかを意識する なんのためにシステム開発しているのかを常に意識することが重要です。例えば、ガバナンスを効かすことが目的になり、本来意識すべきお客様へ提供するサービスを作るチームに負荷を与えるようなルール・プロセスではダメ。こういうスタンスは、単なる責任の押し付けであり、ガバナンスでも何でもない。

⑥ ゴールイメージをみんなで共有して常に確認する なぜアジャイルで開発したいのか?と質問した時に、チームメンバ全員が異なった回答をしたケースをみたことがあります。この先どうしたいかのゴールのイメージを合わせずに、素早くアウトプットが出せるでしょうか?暗黙の了解がある方が、早くて良いものが出せるような気がしませんか?

⑦ 協力し合うことで良い仕事ができることを実感する 人は一人では何もできません。急に金八先生みたいなことを言いますが、仲が悪く協調性もないチームは、もはやチームにする意味がありません。本来チームを組むのは、メンバが協調し合うために、わざわざチームという枠組みにするわけです。

⑧ 経営層・二線部門は現場を信用する そもそも現場の効率を犠牲にして、管理効率を重視している状況下は、元々は現場が多くのミスしたことに起因します。ただ、ガバナンスを強めれば強めるほど、経営層が求めるDXから遠ざかります。したがって、思い切ってまかせてみると変化が起こるかもしれません。任せることで少なくとも社員のマインドには変化が起こる。

⑨ 失敗の責任追及をしている暇があるなら振り返りをちゃんとする 責任追及でケリをつけるのは簡単ですが、人を解任するだけではノウハウや教訓は残りません。次回も同じ失敗をしないように振り返りには可能な限り時間を掛けましょう

⑩ 自分よりもチームのために、チームよりも会社のために、会社よりもチームのために、チームよりもメンバのために 常に自分が置かれている環境の周辺にいる人を理解し、思いやることを意識して仕事をしていくことが、何よりも大切です。思いやりにより周辺の人たちが繋がることで、周辺へ良い影響を及ぼし、思いやりの繋がりは拡大していき想像を超えた効果をもたらすことになるでしょう。

過去を責めず未来を見据える

この状態になったことに対し、過去を憂う意見を言う方も多々いますが、終わってしまったものは、もうしょうがないのです。なりたい姿を自分たちで描き、これまでなぜうまくいなかったのかを振り返り、それを共有し、みんなで助け合うカルチャーになれば、もっと簡単に組織変革・DXは進むと私は確信しています。

「あじゃてく」のTechイメージとは違うところを主戦場とするオーガナイザーがいることを、この記事を通し知ってもらい、少しでも多くの人と「あじゃてく」で出会えることを楽しみにしております。

最後まで読んでいただきありがとうございました!

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