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シャア・アズナブルは危険なリーダーだったのか?【考察】

第二次ネオジオン抗争にて、シャア・アズナブルは総帥になります。

彼は危険なリーダーだったのでしょうか?今回は書籍をもとに簡単に考察したいと思います。

危険なリーダーの手法

まずは危険なリーダーの特徴を整理しておきましょう。

危険なリーダーと言うと独裁国家を思い浮かべがち。しかし普通選挙が行われる民主主義国家でも危険なリーダーが選出されてしまうことがあります。

例えばヒトラー。彼も選挙で勝った人物の1人です。

彼らは非常に優れた手法で民衆の心を操り、危機感をコントロールすることで得票数を増やします。その手法とはどんなものでしょう?

・危機感を煽る(嘘でも構わない)
・対立構造を作り上げる
・あだ名(レッテル)貼りをする
・私が解決する!

大まかにこの4つの特徴があります。対立構造を作り上げ、危機感を煽り、感情によって支持を得るわけです。この三段論法が非常に強力なんですよ。もう少し具体的に直すと下記。

・〇〇民族が攻めてくるぞ(危機感)
・奴らは『蛮族』だ!(レッテル貼り)
・今の不幸はすべて蛮族のせいだ!
・私なら解決してみせる!

といった具合。実際にそんな危機がある必要はなく、極端な物言いで焦らせることができればいいんです。非常に巧妙ですよね。レッテル貼りも効果的で、シンプルでわかりやすい『敵のイメージ』を作り出せます。

もっと詳しく知りたい方はこちらの本が参考になります。

ネオ・ジオンってジオン公国?ジオン共和国?なんだっけ?

ネオ・ジオンが選挙によってシャア・アズナブルを選んだのかどうかはわかりません。しかしジオンはもともと共和国。君主を持たない国でした。思想的なリーダーとしてシャア・アズナブルの父・ジオン・ズム・ダイクンがいたわけですね。

そこからザビ家がダイクンを抹殺して、ザビ家による支配が始まりジオン『公国』になります。サビ家を君主とする国家になったわけです。

【補足】
公国は君主を貴族とする国。
共和国は君主を持たない国。

紆余曲折あって、ジオンに戻ってきたシャア・アズナブル。彼の掲げるお題目は「父、ジオン・ズム・ダイクンの国を取り戻す」的なスタンスだったので、おそらく共和国になる路線だったのだろうと思います。

ネオ・ジオンは残党軍みたいなものなので、厳密には国家ではありません。シャア・アズナブルの肩書も「総帥」。軍や組織のトップにつける名称です。

まあ、ここではシャアのポジションに付いてなんとなくわかっていただければOK。

シャア・アズナブルは危険なリーダーに当てはまるか?

シャア率いる第二次ネオ・ジオンの目標は演説で下記のように示されています。

このコロニー、スウィート・ウォーターは密閉型とオープン型をつなぎあわせて建造された極めて不安定なものである!それも、過去の宇宙戦争で生まれた難民のために、急遽建造されたものだからだ!
しかも、地球連邦政府が難民に対して行った施策はここまでで、入れ物さえ造ればよしとして彼等は地球に引きこもり、我々に地球を解放することはしなかったのである!

私の父、ジオン・ダイクンが宇宙移民者、すなわちスペースノイドの自治権を要求したとき、父ジオンはザビ家に暗殺された!
そしてそのザビ家一党はジオン公国をかたり、地球に独立戦争をしかけたのである!

その結果は諸君らが知ってるとおり、ザビ家の敗北に終わった!それはいい!
しかしその結果地球連邦政府は増長し、連邦軍の内部は腐敗し、ティターンズのような反連邦政府運動を生み、ザビ家の残党をかたるハマーンの跳梁ともなった!

これが難民を生んだ歴史である!ここに至って私は人類が今後、絶対に戦争を繰り返さないようにすべきだと確信したのである!それがアクシズを地球に落とす作戦の真の目的である!これによって地球圏の戦争の源である地球に居続ける人々を粛清する!

諸君、自らの道を拓くため、難民のための政治を手に入れるためにあと一息、諸君らの力を私に貸していただきたい!そして私は父・ジオンの元に召されるであろう!

出典:機動戦士ガンダム 逆襲のシャア

ポイントをまとめると

・難民に対して地球連邦ってヒドいよね
・ウチの家族は難民のためにガンバってたんだよ
・それを邪魔したのがザビ家!
・でもって勝手に負けた
・結果地球連邦は調子乗ってますます争いを起こした
・闘いの結果、皆さんのような難民が生まれた!
・だから終わらせよう!地球にいるやつが全て悪い!
・そして私はそれができる!父ジオンの子だからね!

ってこと。結果、かなり危険なリーダー論法だと言えるでしょう(笑)
早速解説しますね。

危険な三段論法1『対立構造』

まず対立構造

難民vs地球連邦
難民vsザビ家

この構造を作ってますね。実際にはこんなにはっきり2極化した局面ではありません。宇宙移民の中には「宇宙に新たな自由の可能性を見出して出てきた人」もいますし、ザビ家だって宇宙移民の1つです。だから完全な敵とは言い切れません。

ですがここでレッテル張りを行っているんです。単純な対立構造を作り、敵と味方に分ける論法です。

そしてこのレッテル張りはこれだけではとどまりません。

・ティターンズは腐敗した地球連邦の1部
・ハマーンはザビ家の仲間

この言い回しすごいですね。映画を見ているときにはさらっと流してしまっていました。実際にはティターンズもハマーン一派ももう少し複雑な背景を持った組織です。でもシンプルに言い切ってしまう。これで言いたい事はまとまります。

危険な三段論法2『危機感を煽る』(嘘でも可能)

・地球連邦とザビ家が難民を不幸にした!
・奴らがいる限り不幸は繰り返される!

「戦争を繰り返さないために」という言い回しには、裏返せば「何もしなければまた戦争が起きる」ニュアンスがあります。

これは架空の危機ですね。

すでに戦争が起きているわけではありません。というか、これからネオ・ジオン側が戦端を開こうとしているわけです。恐ろしい話ですよね。

危険な三段論法3『私が解決する』

そして最後は感情論による支持です。

・劣悪な環境に住まされて来た難民
・難民の為に立ち上がり犠牲になった父
・その意志を継いだ私こそが世界を変える

非常にうまい構成になっている演説だと思いました。なにより感情を盛り上げるための展開が巧み。ポイントは『落として、上げる』です。

まず、今のコロニー環境の悪さ、つまり聴衆の生活から話を始め関心を引きます。そしてその原因となった戦争へつなげ、原因をザビ家と連邦に結びつける。同時に、自分が難民の為に戦ってきた家族であり、同じように不遇な立場にある仲間であるアピールもこなす。

気持ちはどんどん落ち込み、怒りとやるせなさが高まります。

でも、最後にカタルシスがある。「解決策がある」と。そして「私はそれを実行できる」。だから共に立ち上がろう、と。

めちゃくちゃうまい大衆扇動ですね。そりゃ総帥にもなれますよ。

ちなみにこの盛り上げ方はストーリーテリングを学ぶと参考になります。下記の書籍がオススメ。

シャアは政治家として優秀

シャアの演説がどれくらい危険なリーダーの論法なのか解説させていただきました。いやー、結構危険でしたね。でも、シャアには忘れてはいけないポイントがあります。

『これでは道化だよ』

映画内でシャア自身が言っている言葉です。そうなんです。実はシャアは顔を使い分けています。上記の演説も「総帥としてのシャア」が語っているに過ぎません。

パイロットとしてのシャアは「打倒アムロ」が目的で動いています。どちらかと言えばこちらが本心。もちろん、戦争をなくしたい気持ちもあると思いますが、アムロと闘うために技術をリークしたりするなど、かなりヤバい行動もしてます。

目的に合わせて態度を変えられる才能は政治面で非常に優秀と言えるでしょう。

シャアは複雑で面白い

僕はシャアがめちゃくちゃ好きです。

演説の危険性を書くとアンチかと思われるかもしれないので、念の為書いておきますが、非常に大好きです。クワトロ大尉も大好きです。つまり大ファンです。

逆襲のシャアでは

・総帥としてネオ・ジオンに向ける顔
・男としてナナイに向ける顔
・男としてクエスに向ける顔
・上司としてギュネイに向ける顔
・パイロットとしてアムロと戦いたい顔
・でも負け惜しみ言っちゃう顔

いろんなシャアが堪能できる作品ですし、それぞれの側面が複雑に絡んでいるところが人間を描いていて面白い点です。

もしよければ、逆襲のシャアももう一度見直してみると楽しいですよ。

また別の考察で会いましょう!バイバイ!

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