百物語 第一夜

起きてからやけに残る夢がある。

百物語の夢もそうだった。目が覚めてもしばらくおびえていた。

俺はオカルトは好きだったし、怖い夢をみることは少なくなかったが、起きておびえていたのは初めてだった。

今朝みた百物語の夢は特別だった。

ひとつめに、語られた怪談の中に内容をちゃんと覚えているものがあるということだ。もちろん百話すべて覚えているわけではない。

ふたつめに百話目が語られた最後のオチがきちんとあったことだ。

夢だというのに律儀にオチがつけられていた。

たまたまみた夢を手前味噌と言っていいのかはわからないがそのオチは秀逸だった。

一般的には百話目の怪談が終わり百本目のロウソクの火を消すと心霊現象がおこるとされている。

俺の夢ではこうだった。

百話目が終わり、百本目のロウソクを吹き消す。俺たち、つまり薄暗い部屋に集まり百物語をしていた顔も見えない奴らは固唾をのんだ。

すると俺の意識は徐々に薄れ、ある一本のロウソクが吹き消された。

夢から覚める最後にみた光景はまだ何十本と残る火がともったロウソク。

つまり俺が百物語で百話の怪談を語り聞いたこと自体が、ある者たちにとっては百物語のうちのひとつの怪談にすぎないってことだ。

これから書いていく物語はまったくの創作と夢で覚えていた内容のメモを元に膨らましたものも混ぜてある。

百話目が終わってからどうなるか、どうにもそれに執着を持ってしまったようなのだ。

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