百物語 第六十四夜

五年前に彼氏が交通事故で死んで…
本当に辛くてもう恋愛はできないって本気でおもった。
だけど、落ち込んでいた私を支えてくれていた男友達を好きになって、彼が死んでから半年経って付き合うことになったの。


その男友達と付き合うようになって、デートの時に手をつないだらね、うっすらと死んだ彼氏が見えたの。罪悪感で少し胸が苦しくなった…。
キスをした時には、手をつないだときよりもはっきりと死んだ彼氏が視界の端にいて、こっちをにらんでいた…。
付き合うこととなった男友達と初めてエッチをしようとしたときは、私だけでなく男友達にも彼氏が、まるではっきりとこちらを向いて睨んでいるのが見えたの…。

男友達は気味悪がって、それ以来私とはあんまり会ってくれなくなった。
そりゃそうだよね。だってエッチしようとしたら昔付き合っていた、そして死んじゃった元カレが見えるなんて怖いし、いやじゃん…。


その後も何人かと付き合ったけれど、やっぱりみんなエッチの時に知らない男が部屋の隅に立って俺を睨んでたって…、そう言って。
お前ヤバいんじゃね?とか言われて……

もうずっとまともに彼氏もできたことないし、ちゃんと抱いてもらったこともないの……




行きずりの女は、俺に愛撫されながらそんなことを言った。

部屋を真っ暗にしておいてよかった。

とはいえ、この女を抱いたあと…。
照明をつけたら俺は何を見ることになるんだろうか……

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