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百物語 第三十一夜~第四十夜

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百物語 第三十一夜から第四十夜までをまとめたマガジンです。
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2016年9月の記事一覧

百物語 第三十七夜

昔から、よく見る顔がある。

男である。いつも黒いコートに黒いズボンという出で立ちで、顔だけが異様に白い。目つきは悪く、顔つきは陰鬱で、あまり機嫌が良さそうには見えない。というかたぶん悪いのだと思う。

よく見る、と言ったが、実際に男の姿を見たことはない。

男はいつも、写真にうつっている。

初めてそれに気づいたのは、中学一年の夏、母に言われてアルバムの整理を手伝っていたときのことだった。

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百物語 第三十八夜

この保育園に勤めるようになって、今年で二年目になる。

まだまだ新人の私だが、職員不足の関係もあり、年長組の担任を任されることになった。

私が生まれるずっと前からある施設なので、お世辞にも綺麗とは言えないし、遊具や設備もちょっと時代遅れの感がある。それでも、保育士の先輩たちはみんな優しく、保護者の中にもクレーマーはいない。クラスの子どもたちは素直でかわいらしく、せんせいせんせいと慕ってくれて、反

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百物語 第四十夜

四年ぶりに会った彼女は、四年のブランクをまるで感じさせることがなく、当時とまるで変わらなかった。
以前勤めていた会社で付き合いがあった彼女とは、山登りという同じ趣味があったことから意気投合し、一番の飲み友達となった。飲み屋には山ほど行ったのにもかかわらず、なぜか結局いまだに一緒に山へと行ったことはないのだが…。

私が転職し地方勤務になってからは、SNSではお互いの様子は確認していたが、なかなか会

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