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season2-2 メリーランド大学へ編入

【前回までのあらすじ】

英語が喋れるようになりたくて米兵ご用達のストリップクラブでバーテンのバイトを始めた小橋。ボディランゲージを使えばある程度のコミュニケーションをアメリカ人と取れるようになっていた。

さらなる英語力の向上を目指した小橋は米軍基地の中の大学、メリーランド大学への編入を決めた。

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メリーランド大学への編入の為に試験を受けた。結果は合格だったが、面接官の「Have you been to public place?」の意味がわからずに悪戦苦闘した。

何度も言うが、このパブリックプレイスの意味が今でもわからない。僕の聞き間違いの可能性もある。だが、僕は面接官がはっきりと「パブリックプレイス」と言ったのを覚えている。当時、専門学校の先生にも聞いたが、「前後の会話になんかあったんじゃない?それがわからないと何とも言えないなぁ。」と言われた。

これもはっきりと覚えているが、前後の会話などなかった。なかったというか、前の質問は全然違う質問で、話題が変わって一発目の面接官のセリフが「Have you been to public place?」だったのだ。

直訳したら「公共の場」である。つまり「あなたは公共の場に行った事がありますか?」という質問だ。イエスに決まっている。20年間生きてきて公共の場に行った事ない人間などいない。いるとしたら、そいつは面接になんか来ない。まず面接に来ている時点でそこは公共の場じゃないのか?だからそんな質問をするのは意味がわからないのだ。だからパブリックプレイスは直訳の公共の場という意味ではないのだ。

そんな質問の意味も分からなかった僕は、メリーランド大学への編入に不安しかなかった。

1週間後、合格した日本人たちが集められた。かなり色んな人がいた。主婦のような人や、サラリーマンのようなおじさん。レゲエ好きがあふれ出すぎてるお兄さん。その中でも僕は一番年下だった。

集められた理由は、米軍基地の中に入れるようにするための手続き。大学は基地の中の施設を借りて授業をするのだ。この手続きも米軍基地の中で行われる。集められた場所は基地のゲートの目の前だ。

全員集合が確認できると基地の中に入る。アメリカに憧れている僕はこの時点で大興奮だった。

基地の中は、みなさんが思っているよりかなりアメリカなのだ。

大きいスーパーマーケットや日本にはないファストフード店。広い敷地には整えられた芝生。洋画とかで見たことあるだろう。一軒家の前は必ず芝生がある。日本の都会では見る事がない光景だ。僕は米軍基地賛成派だが、たまにこの光景を思い出してちょっとイラっとする。

そんな広くなくてよくね?

それはさておき、僕は基地への切符を手に入れた。曜日と時間指定のある切符だったが、初めて一人で入る事が出来るのだ。今まではセキュリティの友達の同伴でしか入ったことが無かった。

手続きが終わり興奮した僕は米軍基地の中をドライブした。洋楽を流しサングラスをかけキャップを後ろ向きにかぶる。アメリカ人になった気分でいた。ときおりすれ違うアメリカ人が不思議そうな目で見てる。そりゃそうだ。チビの日本人が軽自動車に乗ってかっこつけてる光景は不思議だったんだろう。僕は日本人のイメージを少し下げてしまった。

ドライブをしているうちに自分がどこにいるのかわからなくなっていた。入ってきたゲートがどこにあるのかわからない。周りは日本と違って目印となるようなものがないのだ。

うろうろしてたらまずい。変な恰好した日本人が基地をうろうろしていると通報されたMP(ミリタリーポリス)に職質されてしまう。

焦りながら車を走らせているとゲートが見えてきた。助かった。ここで出れば問題ない。

ゲートに近づくと門番がいた。僕は手に入れたばかりの入場許可証を意気揚々と見せた。

門番が黙って許可証を見る。そして

無線で誰かに連絡を入れた。

なんだ・・・?なんか問題でもあるのか・・・?

心臓がばくばくし始めた。銃を持った人間が僕を怪しんでいる。こんなに怖いことはない。

そして、待つように言われた僕のところに、先ほどの門番ともう一人別の門番が遠くから歩いてくるのが見えた。

ハンドルを握る僕の手は手汗でびしょびしょだった。僕は不法侵入だと思われているのだ。もし不法侵入で捕まったらとんでもないことになりそうだ。新聞やニュースにも乗るだろうし、捕まえられる瞬間なんて怖すぎる。手を挙げて膝をつくようなことになるだろう。撃たれないとも限らない。

「逃げろ。」

僕の心の中の悪魔が呟いた。・・・そうだよな。俺は何も悪い事はしていない。許可証だと思って渡されたものが偽物だったのだ。はめられた。逃げないと殺される。

「逃げたらそれこそ終わりだよ。」

天使が呟いた。・・・確かに。逃げたら終わりだ。怪しすぎる。そんなことしたら不法侵入だと認めてるようなもんだ。俺は悪くない。ちゃんと説明すればわかってくれるはずだ。

門番が近づいてくる。どうするか決めないと・・・

逃げるか?ちゃんと逃げれたら問題ない。だけど逃げたところでナンバーは見られてるし別のゲートから出れるわけでもない・・・説明しよう。だけどパブリックプレイスもわからない俺がちゃんと説明できるのか?・・・自身がない。でもそうするしかな・・・いや、逃げ

「Excuse me sir.」

考えてる間にいつの間にか門番がいた。こいつら歩くの早すぎるだろ。

門番は僕に話かけながら左手は後ろに隠している。映画で見たことあるぞ。後ろで銃を持っているんだ。やばい、やばすぎる・・・

そして門番は言った。

「この許可証ではここからは出れませんよ。一か所からしか出れない許可証です。ここをまっすぐ戻ったところのゲートから出てください。」

ああ、そういえばそんなこと説明されてたな・・・

安心した。精一杯の笑顔でThank youと言った。

そして、僕は正規のゲートから出た。

その時気が付いた。

僕は

少しおしっこをちびっていた。



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