親なき後の安心はいつになったら実現するのだろう?

先日、とある勉強会でお話をさせていただく機会がありました。
内容の主は“親なき後、我が子はどうなるのか?”
というものでした。

障がいのある我が子がいる親は自分がいなくなった後、我が子がどのような人生を歩むのかについて考え、悩み、不安に感じています。

「グループホームは希望しているけれど、なかなか入れない」
「住み慣れた地域で安心して暮らし続けることができないのではないか」
「我が子のことを理解してくれる人が傍にいてくれるだろうか」

まだまだ障がいのある子ども(成人の方でも)を日常的に見ているのは母親であることが多いと思います。
母親は子どもが生まれた時から今日まで子どもの傍にずっといて、見守っています。
こどもの表情や行動、声などのあらゆる表現を敏感に察知して、色々なことを先回りして行ったり、安心できるような手立てを早め早めに取っていたりします。
また、子どもが利用している機関との日々の細々としたマネジメントも母親が担っていることが多いです。

その母親に万が一のことがあった時には、その日からこどもの生活が大きく変わってしまうという現実は残念ながらいまだにあります。

まずは現実を知るというところで実際に養育者に何かがあったら、相談員や行政はどんな動きをするのかについてお話をしました。
それは、「やっぱり…」という内容だったと多くの方が仰っていましたが、親としては気持ちが明るくはならないお話だったと思います。

そんなお話の中で私が伝えたこと、
それは
1:「あんしんノート」を作りましょう。
あんしんノートとは、子どもの今までの生育歴や現在の様子、利用や登録をしている機関などについて細かく記載するノートです。色々なものがあり、インターネットで入手することもできます。
できたら、子どもの様子だけではなく、親としての想いも書いてくださいねとお話しました。
このノートは、その方のことを支援者が知ることができるツールとなります。

2:理解者・支援者のチームを作りましょう。
計画相談と言われる相談員がいる場合にはその相談員を中心に、本人や家族のことを知る支援者(近所の人や親戚なども含めて)がチームとなることで、何かがあった時にも迅速に連携をすることができます。普段から知っている人が万が一の時に近くにいることは、とても大きな支えになります。

3:サービスや制度を知りましょう。
今は、様々なサービスや制度が出来ています。
どんなサービスや制度があるのか?どういうときに使えるか?について知り、必要なものを使っていくことも大切です。サービスや制度が複雑でなかなか理解することが難しいものもあると思いますが、そういうときには身近な相談機関や相談員に聞いてみることも必要です。

4:その上で、足りないものを「足りない」と声を上げていきましょう。
グループホームの不足、一人暮らしを支援するサービスの不足、障がいのある子どもたちの住まいの選択肢がとても少ないこと、これらはとても深刻です。住み慣れた地域で暮らし続けることをあらゆる制度やサービスで支えていくことができるようにしていくことが必要だと思います。

また、海外で取り入れているやり方や考え方をどのように日本に取り入れていくのかも考えていかないといけないと思っています。
その一つが“パーソナルアシスタント”という考え方。
その人をアシスタントするという考え方で、福祉や教育といった縦割りで直接支援をする支援者が替わるのではなく、トータルで支援をするというもの。必要があれば学校の中にも入るし、一人暮らしの具体的支援もする。
その人にとって必要な支援を行う人という感じでしょうか。常時支援が必要な人には複数人がパーソナルアシスタントに任命されて、チームで支援をします。幼少期は母親がパーソナルアシスタントになることもあるそうです。

現実的にどうしたら取り入れられるのかの名案があるわけではありませんが、10年ほど前に私自身が視察で目の当たりにした海外の状況を参考にしながら、日本の中で“親なき後の安心”をどう作っていくことができるのか、今でも私の中の大きなテーマの一つです。

勉強会終了後、多くの方からお声をかけていただきました。
数年前に実際に親自身が倒れてしまった時の経験をお話ししてくださった方、あんしんノートについて興味を持ってくださった方もいらっしゃいました。
今の生活に追われてしまっていると、なかなか将来のことについて考える時間や余裕がないこともあるとは思いますが、このような勉強会をきっかけに少しでも興味を持っていただき、できることを少しずつしていってもらえたらと思いました。

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