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あそどっぐインタビュー8日目 その1 「あそどっぐと進撃の巨人先輩」

「お前らなんかおもしろいことやれ」
あそどっぐが高校生のとき、コワい先輩の命令に逆らえず、コントをつくることになった。
それがきっかけで芸人になった。
今回は、その先輩のおはなし。

(2020年5月13日収録分)

あかほし(以下「ほし」): あの〜、いきます。
あそ: はい。
ほし: よろしくおねがいします!
あそ: おねがいします〜。
ほし: (笑)進撃の巨人先輩って・・・(注1:文末参照)
あそ: はいはい。
ほし: どんな人だったんですか?
あそ: わねえ、まあ顔がコワいけど、やさしい人ではあったよ。
ほし: あ〜、そうなんや。
あそ: うん。顔と見た目がコワいかんじだね。
ほし: (笑)
あそ: あと、ホントね、障害がかるいんだわ。
ほし: へえ〜。
あそ: うん。
ほし: なんの病気の人だったんですか?
あそ: いちおう筋ジス。(注2)
ほし: あ、そうなんだ。
あそ: だからまあ発病してまだ、そんなには経ってないんやろうね。
ほし: へえ〜。
あそ: だからまあゆっくりなら歩けるし、うん。
ほし: へえ〜、なんこ上の先輩?
あそ: え〜っと〜、2こ上。
ほし: あ、じゃあむこう高3。あそさん高1ってことか。
あそ: そうそうそうそう。だからおそらくまあ・・・そんなに発病して間がないから、それに高校生だから、がたいもスゴいし・・・
ほし: うんうん。
あそ: オールバックだし。
ほし: (笑)校則とかなかったんだ。
あそ: 校則とかないね。うん、みたことない。
ほし: (笑)へえ〜、そうなんだ。
あそ: うん。
ほし: なんかあそさんと、その相方さんふたりに?
あそ: うん。
ほし: 「お前らお笑いやれよ」って。
あそ: そうそう。
ほし: 「コントやれよ」って言ってきたってことは、それなりにふたりのこと知ってて・・・?
あそ: ああ、まあ相方がね、けっこうあの〜・・・ずっとバンドとかやってたから。
ほし: うんうん。
あそ: もともと校内では超有名人っていうのはあって。まあちっちゃい学校だから、あれなんだけど。あと、バンドでテレビとか出たりしてたから。
ほし: へえ〜。
あそ: 相方はすごい目立つからね。
ほし: うんうん。
あそ: で、まああの〜いっしょに遊んでたから。
ほし: うん。
あそ: ・・・みたいなかんじかなあ?
ほし: へえ〜、じゃああそさんはその先輩としゃべったことあるとか・・・ではなかったんだ?
あそ: しゃべったことはあるよ。ホントにちっちゃい学校だからね。
ほし: あ、ホント。
あそ: うん。で、ぼく高1の3学期からその学校にきたから。
ほし: うん。
あそ: だから転入して、2ヶ月ぐらい。
ほし: うん。
あそ: ・・・のときに「なんかやれ」言われたんかな。
ほし: はあ〜ん。そうなんだ。
あそ: そうそう、1月に転入してきて、ぼくが。で、3月の卒業パーティでやることになったからね。
ほし: あ、じゃその進撃の巨人先輩が卒業だったんだね。
あそ: そうそうそう。で毎年あの〜、卒業パーティで1年生が何かをやるっていうのはなんか今までの習わしだったみたいで。
ほし: ああ〜。
あそ: 「じゃあお前たちなんか・・・おもしろいことやれ」みたいな。
ほし: うんうん。
あそ: うん。かんじ・・・だね。
ほし: へえ〜〜。そうなんや。
あそ: 次の年からは勝手に僕たちが習わしをかえて。
ほし: うん。
あそ: 次の年も、その次の年も、ぼくたちが漫才やったんだけど。
ほし: そうなんだ(笑)全校生徒はぜんぶで100人ぐらい?
あそ: そんないないよ、ぜんぜん100人も居ないよ。
ほし: へえ?
あそ: 小中高あわせて、あれかなあ・・・50ぐらい・・・かなあ?
ほし: 小中高・・・
あそ: 小中高あわせて。
ほし: あ、めっちゃすくない。
あそ: うん、めちゃくちゃすくないよ。
ほし: へえ〜、でもそういやそうか。あそさんのクラスメイトひとりだもんね(編注:その唯一が相方さん。「あそどっぐの相方はモテた」)。
あそ: そうそうそうそう。
ほし: それなに、学年がふたりってこと?
あそ: そう、学年がふたり。
ほし: おう(笑)
あそ: そうよ。
ほし: 離島じゃん。
あそ: ぜんぶで50人もいないかもしんないな。
ほし: あ、そうなんや・・・たしかにその感じだったら。
あそ: そうそう。
ほし: じゃあもう、わりとみんな顔見知りなんすね。
あそ: うん、もうみんななんかアットホームなかんじだよね。
ほし: ああ〜そうなんや。それはそれでいいな。
あそ: うん。
ほし: へえ〜・・・なんか、その〜なんかやたら数がおおいと、やっぱり学年の壁みたいなのがあつくなるんすよね。
あそ: そうだよね、うんうん。
ほし: だからなんかちょっとうらやましいな。
あそ: うん、だから人数が少ないから体育の授業とか、高等部は全学年、合同でやってたし。
ほし: ああ。
あそ: うん。だからまあ、壁はほとんどないよね。みんな家族みたいな。
ほし: へえ〜、そうなんや。
あそ: うん。
ほし: そんときの知り合いとはまだつながってるの?
あそ: え〜っとねえ、先生で、講演の仕事をくれたりする人が何人かいるね。
ほし: へえ〜。
あそ: で、生徒はねえ、こないだ・・・去年か。
ほし: うん。
あそ: 去年、進撃の巨人先輩と会った。
ほし: あ、そうなの!?
あそ: うん。
ほし: たまたま?
あそ: うん、あの〜〜・・・そこの学校のとなりに筋ジスの病院があったんだけど。
ほし: はいはい。
あそ: で、みんなそこにほとんどの人は入院して、学校に通ってたのね(編注:あそどっぐは自宅から通っていた)。
ほし: うんうん。
あそ: で、僕が卒業後、その・・病院も学校も両方とも、なくなっちゃったのよ。
ほし: あら。
あそ: だからみんな、ちらばちゃって。
ほし: へえ〜・・・
あそ: で、まあどうしていいかわかんない。連絡も取れない状態になってて。
ほし: はあはあ。
あそ: で、こないだ福岡の、ちがう病院の筋ジス病棟によばれて芸をやりにいったら、進撃の巨人先輩がいた。
ほし: (笑)それなに、客席にいたってこと?
あそ: いた、いた。
ほし: (笑)すご・・・ビックリするなそれ。
あそ: (笑)
ほし: マジか。元気だった?
あそ: う〜んやっぱね、あのかなりね、すすんでたね。
ほし: ああホント。
あそ: だから客席にはいなくて。病室からなんかあの〜テレビカメラで見てた。
ほし: むこうもビックリしますよね。
あそ: うんうん。だから芸がおわったあと、まあ病室に挨拶しにいって。帰ってきたかんじかなあ。
ほし: あ、じゃあいるのは知ってたんや?
あそ: あ、僕は着いてからだね。「先輩いるよ」っていうのを知らされて。
ほし: へえ〜。よかったね。
あそ: うん、会えてよかった。ビックリした。
ほし: ね。
あそ: まあでもねえ、だいぶん障害すすんでたね。
ほし: あららあ。うーん。
あそ: うん。
ほし: そっかあ。
あそ: だからなんか、なんとなく若干、まあ複雑なきもちで帰ったなあ、うん。
ほし: ああ〜、そうかあ・・・へえ・・・なんか思わぬ後日談。
あそ: うう〜ん・・・
ほし: それは、いつ会ったの?
あそ: 去年の夏ごろ?
ほし: そっかあ。なんか会わない・・・気づかないまま帰んなくて、会えてよかったね。
あそ: うん、挨拶はできたからよかったね。うんまあなんかねえ、複雑な感じだったなあ。
ほし: そう・・・すねえ。
あそ: う〜〜ん。
ほし: そうかあ。ふあ〜ん・・・あ、じゃああそさんの病気のが進行ゆっくりなんですね?
あそ: そうだね、ぼくのはゆっくり・・・まあ人によって違うんだけどね、うん。
ほし: ああ、ああ。
あそ: うん。

・・・

ほし: 進撃の巨人先輩って・・・
あそ: うん。
ほし: けっこうワルだった・・・の?
あそ: う〜んどうなんだろう?見た目が・・・ワルだったから。
ほし: あ〜。
あそ: まあ、前の学校でもワルだったのかもしれないけど。
ほし: うん。
あそ: そこらへんはわかんないね。
ほし: あ〜。
あそ: ぼくが行ったときは、まあ、話すとやさしい・・・人やったね。かなりね。
ほし: あ、そうなんだ(笑)
あそ: ホント、オールバックで、まゆ毛がなくて。
ほし: うん。
あそ: まあ、見た目はコワいかんじやったけど。
ほし: へえ、そこは相変わらずだった?
あそ: あ、いまもねえ、けっこうねえ・・・まあまゆ毛は生えたけど、細い感じで・・・
ほし: (笑)
あそ: 今もまあ、あんまり・・・見た目も顔は変わってなかったよ。
ほし: へえ〜。なに系の「コワい」なの? その〜・・・ブルドックコワいとか、ヤクザコワいとか、いろいろあるじゃないですか。
あそ: ヤンキーだね、むかし流行ってた、ちょうどヤンキーマンガとか流行ってたから。
ほし: うんうん。
あそ: そのかんじ。
ほし: あ、そうなんすね。へえ〜、そうかあ。なんかコワモテで中身やさしいって・・・
あそ: そうそうそう。
ほし: なんだよ、すてきじゃないか。
あそ: うん、いい先輩だったよ。
ほし: へえ〜・・・そうか・・・じゃあ今44,5歳ぐらいか?
あそ: そうだね、ぼくより2つ上だからね。
ほし: へえ〜、そうかあ。どんな話したの?
あそ: え〜っと、去年?
ほし: あ、そうそうそう。
あそ: 去年はねえ、もうなんかねえ、あんま話してないなあ。まあ挨拶して・・・「お久しぶりですねえ」みたいなかんじで・・・でまあ「たのしんでもらえましたか?」みたいな。
ほし: うん。
あそ: うん。あと「先輩がきっかけで、お笑いはじめたんすよ〜」みたいな。
ほし: うんうん。
あそ: のは、話して。もうね、むこうもね・・・
ほし: うん。
あそ: あんまりねえ、こう・・・大きな声で、しゃべれるかんじではないのね、もうね。
ほし: あ〜。
あそ: だいぶん、声もまあホント・・・聞き取れ・・・かすかに聞こえるぐらい。
ほし: うん。
あそ: の、声しかでないかんじで。
ほし: うん。
あそ: うーん。でまああんまりいると、ねえ、キツそうだったから。
ほし: うんうん。
あそ: まあ、5分ぐらいいたのかな?
ほし: ああ。
あそ: で、まあ・・・ってかんじかな。
ほし: ああ、そうなんだ。そっかあ。そらあなんか・・・なんか、たしかに、う〜ん・・・そうやなあ。
あそ: そうなんだよねえ。う〜ん。
ほし: だって、卒業以来でしょ?きっと。
あそ: 卒業以来、うん。ホント。
ほし: そっかあ・・・
あそ: あ、でも僕がハタチぐらいまでは相方に会いに行くときに同じ病棟に入院してたから、挨拶はしてたね。
ほし: ああ〜。
あそ: だからまあ、23歳ぐらいまでぼく病棟通ってたから、まあ18、9年ぶりぐらいかなあ。
ほし: ああ〜。

(あそ: あ、左肩洋服ひだりに。はい)

ほし: じゃあ、その学校のちかくにあった病院に、相方さんも先輩も・・・?
あそ: そうそう。
ほし: そうかふたりはそこから通ってたのか、学校に。
あそ: そうそう。
ほし: へえ〜、じゃあ家族と会えるのは、家族が病院に来たときってことか?
あそ: うん、そうだろうね。あとまあ、相方とかはときどき、家に外泊ってかんじで。
ほし: うんうん。
あそ: たま〜に家に帰ってたけど。
ほし: うん。
あそ: 先輩の親は僕はみたことないなあ。
ほし: あ〜そうなんや。あ、じゃあいつ行ったときもおらんかったってことか?
あそ: おらんし、なんかねえ・・・学校のイベントごとにも来てるのは・・・見てないんだよねえ。
ほし: あ、そうなんや。
あそ: うん、だからホント先輩の親は。
ほし: うん。
あそ: ・・・まったく、会ったことない。
ほし: ああ・・・。
あそ: うん。
ほし: うーんそっかあ。へえ・・・う〜ん、そうかあ。
あそ: う〜ん、そうなんだわねえ。だからねえ、なんか・・・ぼくはまあなんか、熊本に引っ越してきて、いろんなことがあって、今はお笑い芸人やってて、ってやってんだけど先輩はこの・・・20年間ずーっと病院に・・・いたんだなあって思うとなんか。
ほし: うんうん。
あそ: なんか「あ〜」ってなって、帰ってきたなあ。
ほし: うんうん。そっかあ。
あそ: うん。
ほし: あ、じゃあ部屋もずっと一緒ってことか?
あそ: 部屋はねえ。
ほし: うん。
あそ: 部屋はいや、ちがったとおもうなあ。
ほし: ああ、ちょっと変わったんだね。へえ〜そうなんや。
あそ: 部屋っていうかそうね、病院自体がなくなったから、まあ・・・
ほし: ああ、そうか。そうだね。しかし病院も学校もなくなるって、けっこうおおごとっすね。
あそ: けっこうすごいよね。
ほし: でも、あれですね。わざとですよね?ちかくにあるのは。病院と学校が。
あそ: あ、うん、わざとわざと。そうそうそうそう。でまあ病院があるからこそ、学校があったみたいな、かんじだね。
ほし: ふんふん。
あそ: だからまあ病院がなくなることがきまって。
ほし: うん。
あそ: 学校もなくなった。
ほし: うんうん。
あそ: ね。
ほし: へえ〜・・・そうかあ。

注1:あそどっぐの高校にいたオールバックの先輩。養護学校のなかで、自立歩行し、バドミントンのラケットぶんぶん振るなどして異彩を放っていた。
注2:筋ジストロフィー。身体の筋肉が壊れやすく、再生されにくいという症状をもつ、たくさんの疾患の総称。参照:「筋ジストロフィーってどんな病気ですか?

次回、 「あそどっぐ、学会でコントする

あそどっぐ
1978年佐賀県生まれ。熊本在住。お笑い芸人。

あかほしあまね
1991年東京都生まれ。『コバガジン』のライター。

前回の記事はこちら 「あそどっぐ、ライブデビューする


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