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湊かなえのことば結び を読んだ 2023/09/08


湊かなえさんの作品を初めて読んだのは「告白」だった。
映画化された当初、かなり話題になっていたが、読んだのはだいぶ「フィーバー」がおさまってから。
ページをめくる手が止まらなかったのは期待通りだったが、思っていたより読むのにパワーがいる小説だった。
いわゆるイヤミスというやつで、もう、登場人物の心理が手に取るようにわかる描写で、その世界に引き込まれた。しかし、リアリティに富んでいる分、読むのに本当に力がいって、読んだ後、ちょっとぐったりしてしまった。

そのあと、何冊も湊作品を手に取ったが、そもそも最初に「告白」を読む気になったのは、久々にあった友達とのおしゃべりで話題になったからだった。グループの中に、二人、若き日の湊かなえさんを知る人がおり、話題は、すごいねーという他愛もないものだったが、小説は面白かった?と聞いたら、面白い!という答えだったので、そのあとすぐに手に取ったのだった。

というわけで、作品だけではなく、同い年(正しくは同じ学年か)の女性としても気になっていたのだが、エッセイまでは手に取らなかった。
「リバース」で、どうやらコーヒーがお好きだと想像してから、さらにエッセイが読みたい気分だったのだが、手に取る機会がなかなかこず、「湊かなえのことば結び」が、パーソナリティを務めておられたラジオの内容を文字に起こしたものだと知って、やっと気になる小説家に一歩近づくことができたのだった。

内容としては、本当に色々な話題。住んでいる淡路島の、美味しいものや観光について、故郷についても言及があり、お勧めの本の紹介もあり、楽しい内容。中心となるのは、リスナーから募集した短編についての講評だ。
雑談部分については、同年代の女性となんら話題に変わりないが、その雑談の間に、プロの小説家としての心構えがちりばめられていて、身が引き締まる思いだ。
当たり前だけれど、いろいろなことを意識されて、あの素晴らしいミステリがつくられていくのだと改めて感心した。
あと、案外活動的な方で、山の話とか大学時代のこととか、とても面白い話もたくさん。もっと聞いてみたい気がする。

語られている中で一番好きだったエピソードは、海外での文学賞の授賞式でのエピソードだ。
ご本人のうれしい気持ちがとてもよく伝わってきて、こちらまでうれしくなった。
賞をいただいたのがうれしいのではなく、そこでの雰囲気に感動されたという、とてもいい話だった。

読み終えて、「告白」を再読したくなった。
あと、おもったより本格的に山に登られているようなので、そちらについて書かれたものも読んでみたい。

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