イノセント
近付けた唇からは、微かに嘴の匂いがした
戯れがまだ新鮮なうちに
私は十分に、哀しんでおかなくてはと思う
咎められることのない、可愛いやり方で
まだ籠の中にゆられていたい
黴の生えた童話より
シミのとれない積み木より
失敗をした時の束の間、
誰もが顔に浮かべるイノセント
そんな白いものが、私の中から消えない
未だに少女に戻れるような気持ちがして
二、三度うしろを振り返れば
歪んだ地平線
思い出したい出来事も
そこはかとない火傷の痕みたいに
気付けばただの印になっていた
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