見出し画像

川上未映子の『夏物語』をどう読むか⑯ 夏の扉

 八月三日に仙川が死んだ、と遊佐から電話で知らせてきた。癌だった。夏子の唯一の理解者(?)が死んだ。

 遊佐の誘いを断り、夏子は「簡単なもの」を作ってそれを食べた。

 なんだそりゃ? 簡単なものなんて食い物がこの世にあるか?

 夏子は仙川さんのことをあれこれ考える。まるで作家か死ぬまで本を買わない読者のように。

 たった死んだくらいのことで会えなくなるとか、消えるとかおかしなことだと思いませんか。

(川上未映子『夏物語』文藝春秋 2019年)

 夏子は逢沢のことを思う。そして突然「わたしは本当に逢沢さんとセックスができないのだろうか」と言い出す。

 そして指先で性器をさわってみた。

(川上未映子『夏物語』文藝春秋 2019年)

 何しとんねん。仙川さんが死んだのに。ここはそういうことのためにつかうものではないと夏子は思った。

 久しぶりの緑子からの電話はいたちの話だった。

 夏子は新幹線で大阪に帰る。ペットボトルの水を飲んでおにぎりを食べる。

 逢沢から電話がかかってくる。逢沢は今大阪にいるという。そして三十分だけ会いたいという。

 この章はこれだけ。

 やはり十五章が詰め込み過ぎだった。

 所謂緩急をつけるというやっちゃ。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?