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芥川龍之介 大正四年七月二十八日 短歌 七首

八雲たつ出雲の国ゆ雲いでて天ぎりふらむ西の曇れる

はろかなる出雲の国ゆ天津風ふきおこすらむ領布(ひれ)なす白雲

そのむかし出雲乙女は紅の領布ふりふりて人や招(ま)ぎけむ

紅の領布ふる子さへ見えずなりて今あが船は韓国に入る

いづちゆく天の日矛ぞ日の下に目路のかぎりを海たゝへけり

こちごちのこゞしき山ゆ雲いでて驟雨(はやら)するとき出雲に入らむ

その上(かみ)の因幡の国の白兎いまも住むらむ気多の砂山


[大正四年七月二十八日 恒藤恭宛書簡]



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