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芥川龍之介の『河童』をどう読むか⑭ 第七の龕の中にあるのは……

 

第七の龕の中にあるのは……


 どうも「書いてあることを読む」「書かれていないことを付け足さない」と書いてしまうと、「狭い読み方」と勘違いされるんではないかとも思う。たとえば「書いてあることを読む」「書かれていないことを付け足さない」とは「私は海へはいるたびにその茶屋へ一切を脱ぎ棄てる事にしていた」とあるのに、勝手に海水パンツをはかせないということだ。それでは「海水着を持たない私」を読んでいないことになる。

 当然読者は作者が言いさしにした続きを考えてみることはできる。例えば代助はどこまで行ったのか。

 そんな敢て書かかれてはいないけれど、どうも作者が意図して考えさせようとしているところはあれこれ考えてみるべきであろう。何故なら『それから』では繰り返し電車の停留所の事が書かれていて、代助もわざわざ飯田橋から電車に乗り、しばらくすると電車は大きく曲がるのだから。そこをよむことは「書かれていないことを付け足す」とは言わない。

 さて『河童』には、例えばこんな「言いさし」がある。

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