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夏目漱石の『こころ』をどう読むか⑨ 「私」は静に子を産ませたのか?

「私」は静に子を産ませたのか?


「子供でもあると好いんですがね」と奥さんは私の方を向いていった。私は「そうですな」と答えた。しかし私の心には何の同情も起らなかった。子供を持った事のないその時の私は、子供をただ蒼蠅いもののように考えていた。
「一人貰ってやろうか」と先生がいった。
「貰いッ子じゃ、ねえあなた」と奥さんはまた私の方を向いた。
「子供はいつまで経たったってできっこないよ」と先生がいった。
 奥さんは黙っていた。「なぜです」と私が代りに聞いた時先生は「天罰だからさ」といって高く笑った。(夏目漱石『こころ』)

 何十回と読み返してみれば、この引用部分には様々な意味が込められていることが解る。これまで私はこの引用部分からおおよそ以下の様な意味を取り出してきた。

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