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刀削麺を食べたら宇宙の神秘にたどり着いた話

突然ですが、私は何かを語る時に「自分の好みかどうか」と表現するようにしています。例えば食べ物やお店を紹介する場合、自分にとって美味しくないと感じたとしても、もしかしたら別の人にとってはとても美味しいのかもしれないし、そもそも作っている人自身は「これが最高!」と思っているかもしれないから。なので、自分が満足できない場合は「好みではなかった」と表現するようにしています。

そして私には「嫌いなものはなぜ嫌いなのかを分析したがる」という変な癖があります。歳をとってから食べてみたら美味しく感じることもあるし、たまたまその時食べたものが好みではなかった、ということもあるじゃないですか。なので、好きじゃないな、と思うものでも何回か食べてみたり、お店を変えて食べてみたりするんですよ。
前フリはこれで終了です。

刀削麺は難しい

刀削麺ってご存知ですか?中華料理の一つで、大きい小麦粉を練った物を、独特な包丁で削って作る麺料理です。中華料理を題材にしたマンガなどでは、中華料理の秘技!みたいに紹介されることもあります。独特の包丁で削り出す麺は、平打とモチモチの二種類の食感が味わえる最高の麺!とのこと。

ラーメン大好きな私としては、そんな話を聞いたら食べてみたくなるじゃないですか。漫画では最高って言ってましたもん。中華料理は美味い。その中でも秘技として紹介されるなら美味いに違いない!

マイ・ファースト・刀削麺はそんな期待が膨らみすぎたせいか、私の好みの味ではありませんでした。味で言ったらラーメンの方が好きだし、麺は好きと言えば好きだけどまぁうどんっぽい。二種類の食感が!みたいな感じにはなりませんでした。そんなこんなで私の中で刀削麺は「好みではない食べ物」として認識されたのでした。

刀削麺リベンジ

そんな中、職場の近くにとても美味しい中華料理屋を見つけました。割と通ってしまうレベルで美味しいし安い。乱暴な接客も御愛嬌です。そんなお店のメニューを眺めていたところ、「刀削麺専門」の文字を発見してしまったのでした。前回は適当に選んだので失敗したのかもしれない…。ここの店なら間違いないかも!

そう考えた私は刀削麺を注文し、15分後に「うーん…」と頭を抱えながら店を後にしたのでした。

なぜだ…何故刀削麺はあんまり好きじゃないんだ。他の料理は美味しいのに…。それから私は何回か刀削麺を頼むことにしました。そしてふと思ったのです。

豚骨スープにしたら美味しいかも…。

麺は嫌いじゃない。問題はスープだったんです。思い起こせば本格中華麺のスープって味が薄い気がする。うすーい味にほんのり酸味があるような…。太麺に絡むから薄味なんだろうか。家系みたいな豚骨醤油にしてみたらいけるかも!なんて思ったんですが、それなら家系ラーメンを食べればいいんですよね。というわけで、私の中では「刀削麺は中華の麺料理であり、日本のラーメンやうどんとは別物なのだ」という結論に達しました。文字にすると当たり前のことなのですが、本場中華の麺料理は私の育った文化とは異なる。そう理解して納得したよ、と部下に話し、刀削麺問題は解決したかのように思えたのでした。

刀削麺、三度

刀削麺問題が解決してから半年。部下から私に写真が送られてきました。そこに写っていたのは太めの麺をすする部下。こ、これは…。
「刀削麺美味かったですよ!」

そのコメントを読んだ次の日、私は部下と共にその刀削麺を食べに出かけたのでした。
どうやら部下は刀削麺専門店に行き、そこで「焼き刀削麺」を食べたとのこと。食べ応えのある焼きそばみたいで美味しかったそうな。
しかしあえてここはオーソドックスな刀削麺で試すべきであろう。そう考えた私は焼豚と葱の刀削麺を頼みました。

でてきた刀削麺を早速いただく。ここは厨房のおじさんが削って作っている刀削麺専門店(前の店も自家製刀削麺でした)。期待に胸を躍らせて食べてみると…うん。やっぱりあんまり好みではない。スープがなー。味が薄く感じちゃうんだよなー。

そう言えばアメリカで食べたカリフォルニアロールしかでてこない寿司屋で食べた味噌汁もこんな味だった。あそこの店は日本人じゃなく中国人が経営してる寿司屋だと後から教えてもらったっけ…。やっぱり中華の麺料理は麺を食べるものであって、スープを楽しむ食べ物ではないのかも知れないな。そう考えると、麺を楽しもうという気になってきました。

気になってきました。

麺が気になってきました…。

刀削麺の麺って、小麦粉と塩と水で練った物を削りだしていて、麺の材料にはあんまり違いが見られない気がする。均一に削るのが難しいため、均一に素早く削るのが最高の刀削麺…なはずなのに割と不揃いな気がする。

中華料理は火の通りを均一にするために、素材の大きさを均一に切ったりする超技巧があります。そういった工夫があるのに、なんで刀削麺は比較的不ぞろいなんだろう…。

というか、均一にするためなら機械とか包丁を工夫するような気がするのだけれども、あえて不揃いのままにしているのは何故なんだ。中華の最高峰と言われる(注:この表現は漫画の世界だけのようです)のに、こんなに不揃いで良いのだろうか。

麺をすすりながら気が付きました。まさか、そこまでこだわる中国人が不揃いで良しとするはずなんてない。これにはきっと意味があるはず…。

そうだ!あえて不揃いで良しとしているのは、物事は全て無秩序に向かうというエントロピーの増大を表しているのではないだろうか。ゆで上がった麺の太さがバラバラな上に丼に盛られていて食べにくいのは、そうやって表現された自然や宇宙に対し、人間が抗いながら生きていくという世界観を表現しているのではなかろうか。宇宙の真理を麺で表現した中華料理。刀削麺の奥深さを知った…!

そんな話を部下にしながら席に戻り、刀削麺を調べてみました。グラグラに沸いた鍋の前で麺を削っていれるので、茹で時間がズレるといけないから早く削る技術が必要なんだそうです。ふーん。だから麺の太さも違うのかもね。というか、グラグラに沸いた鍋に直接削った麺をいれるのではなく、一旦横に全部削ってからまとめて入れたら解決なのでは…。

麺の長さも統一したら上手くいきそうですね。やっぱ機械化しないのかなー、と思ったらありましたわ刀削麺ロボ。その名も機甲厨神。
色々調べたら夢も希望も吹っ飛ぶくらいの面白さだったのですが、もともとは刀削麺って汁なしの方が近いらしいですね。なので、焼き刀削麺が美味かった!という部下の報告がある意味正解だったのかもしれません。

またいつか機械があったら焼き刀削麺を食べてみようと思います!

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