京都に飽きた、なんて嘘
年に数回は京都へ行っている。
学生のとき住んでいたから、やっぱり何か縁があるのか呼ばれることも多い。
今回も用事があって京都へ向かうことに。前の日には、また京都に行けるということにワクワクしていた。
午前中、私は一人でイノダコーヒでモーニングを食べ、祇園をぷらぷら歩き、八坂さんにお参りし、待ち合わせに向かった。
お昼に四条で夫と合流し、さて観光だ、となったとき、私たちははたと困ってしまった。
二人で行きたいところが特になかった。
午前中の内に、私は行きたいところへ行ったし、夫も用事をすませた。
「どこへ行く?」となったとき、更に行きたい場所はこれと言ってなかった。
どの観光名所も少なくとも二回は行っていると思う。今さらもう一度見たいとは思わなかった。
「もう京都に飽きてしまった…」
それは京都が大好きな私たちにとって、ショックな出来事だった。
とりあえず思い出のある出町柳に行き、鴨川沿いを散歩してみた。
そのまま暫く歩いて、地下鉄にのり、なんとなく平安神宮へ行ってみた。
そこにはかつての京都会館が、ロームシアター京都に生まれ変わって建っていた。ただ広い会館だったのに、蔦屋書店が入って何やらおしゃれな場所になっているみたい。
「変わっちゃったね」
そう言いながらも、東京の蔦屋書店は結構好きだったのでさっそく入ってみる。京都っぽい文房具が並べてあって、なんだか楽しい。
そこからまたふらりと歩くと、喫茶店があった。
「ここ!」
昔ガイドブックで見たままになっていた、スフレのお店だった。
京都のガイドブックを集めていた時には、少し遠くて本気で行こうとしていなかった、でも気になっていたお店。ほくほくと、しゅわしゅわのスフレを頂いた。
帰り道、私たちはまだ全然京都に飽きてなんかいなかったと思った。
京都は変わり続けているし、まだ行ってないお店もたくさんある。
これまでは、観光名所を一生懸命に巡る京都だった。お寺をおがんで仏像を見て、神社に参拝して可愛いおみくじを引く。
そして河原町あたり、または京都駅で有名なお菓子と、和柄のポーチを自分へのお土産にする。
そういうのが京都だと思っていたし、楽しかった。
でも、もう私の歳になると違うのかもしれない。旅に行って歩き回りたいとも思わない。並びたいとも思わない。
気の向くままに散歩して、素敵な喫茶店で休んで、おいしいものを食べて。
ホテルでゆったり過ごして、上品な味のお菓子と、長く使える扇子なんかをお土産に持って帰りたい。
京都に飽きたわけじゃなくて、楽しみ方が変わったのかもしれない。
歳を少し重ねたから。
次の十年も、また京都さんよろしくね。ずっとこれからも違う形を見せながら、京都は私たちを楽しませてくれるんだろうなと思う。
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