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発熱性好中球減少症(febrile neutropenia)
定義
発熱:腋窩温≧37.5℃(口腔内温≧38℃) かつ
好中球減少:<500/μL (あるいは <1,000/μLで48時間以内に<500/μLが予想)
ただし、ガイドラインでは、上記の基準を満たさなくても個々の患者背景を考慮して経験的抗菌薬治療の適応を判断するとしている。
好中球数は正常だが機能異常がある場合
薬物療法や放射線治療による口腔や消化管の粘膜障害
腫瘍による気道、消化管、胆管、尿路の閉塞
低体温の敗血性ショック など
初期評価
病歴聴取
併存症、最終化学療法の内容と日付、感染症の既往、抗菌薬治療/予防投与歴、薬歴、デバイス使用、シックコンタクト
オーダー
血算(白血球分画)、血培2セット、尿培
必要なら:CDトキシン、胸部X線写真、尿検査、ウイルス診断
リスク評価
入院/外来のどちらで治療するかは、①疾患・がん薬物療法によるリスク、②身体的リスク(MASCCスコアを含む)、③心理・社会的リスクの3観点から評価し決定する。MASCCスコア単独で低リスクと判定されても、約10%に重症化のリスクがあることに注意!
▶HOKUTOに詳しい記事があるので参照のこと:【解説】「発熱性好中球減少症 診療GL 改訂第3版」 リスク評価
▶HOKUTOにはMASCCスコア、CISNEスコアの計算ツールもあり
①疾患・がん薬物療法によるリスク
好中球数<100/μLが7日を超え持続すると予想される(急性白血病、骨髄異形成症候群、骨髄転移など)
造血細胞移植の施行例
②身体的リスク
MASCCスコア≦20
CISNEスコア≧3
ECOG PS≧2
併存疾患あり もしくは 癌治療による有害事象あり
MRSEなどの耐性菌保菌者
抗菌薬への過敏症あり など
③心理・社会的リスク
下記を含む8項目を満たさない場合、リスクとみなす。
外来治療について同意がある
服薬アドヒアランスが良好である
患者と同居する看護者がおり、患者の病状を24時間把握できる
治療
低リスク患者に対する外来治療
在宅での点滴抗菌薬治療
長時間作用型点滴抗菌薬の連日投与
経口抗菌薬(シプフロキサシン+アモキシシリン/クラブラン酸、レボフロキサシン、モキシフロキサシン)
入院管理での初期エンピリック治療
点滴抗菌薬治療(セフェピム、イミペネム・シラスタチン、メロペネム、ピペラシリン・タゾバクタム、セフタタジム)
一部の軽症例では経口抗菌薬も考慮
経験的治療開始後3~4日の再評価
「まずい、発熱が続いている!」
▶ガイドラインにフローチャートあり
発熱が続く場合に確認・検討すべきこと
全身状態は安定しているか
耐性菌をカバーしている抗菌薬が使えているか
抗菌薬の投与量・投与回数は正しいか
真菌感染?(→β-D-グルカン、アスペルギルス抗原、副鼻腔・胸部CT)
G-CSF療法について
抗癌剤治療に対し全例のG-CSFが推奨されているわけではない。
計画している薬物療法のFN発症頻度を推定する。
FNの発症頻度≧20%→G-CSFの一次予防が推奨される
FNの発症頻度10-20%→危険因子(65歳以上、治療歴、臓器障害など)があれば推奨あり
FNの発症頻度<10%→G-CSFの一次予防は推奨されない
まとめ
FNの診断基準(腋窩温≧37.5℃ かつ 好中球数<500/μL)
好中球数<1000/μLでも、減少が進行しそうならFN
初期評価では、癌治療と感染症に関する病歴聴取を行う
採血と各種培養をオーダー
リスク評価:MASCCスコアは有用だが完璧ではない、患者背景を総合的にみて外来/入院治療を選択
エンピリック治療開始後3~4日で治療の効果判定を行い、軌道修正を図る
G-CSFによる一次予防は、抗癌剤治療の種類と患者の危険因子により決定
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