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アイロンのこと

水道の水をシャワーからストレートに切り替え、容器の小さな入れ口に水を流し込む。左右に分かれて貯まる水がひとつになり、9割方貯まったところで水道のレバーを下げる。コンセントはもう差してある。容器をアイロンにセットする。

アイロンを出すのはいつも億劫だが、編み物の仕上げには必須だ。このでこぼこのカンカン帽もいくらかましになるだろうか。2週間ほどかかって子どもに帽子を編んだ。ラフィア風糸は指に引っかかり、編みにくかった。どうせならきれいに仕上げたい。5日かかってようやくアイロンを出した。

手に取るとずっしりと重たい。スチームショットを帽子のトップにあててから更にじわじわとスチームをかける。まどろっこしいので本来はNGだがタオルを敷いて直接アイロンをかける。そうやってトップ、側面であるクラウン、最後にブリムにアイロンをかけていく。

普段多少シワがあっても良い服を選んで着るためアイロンを使うことはほとんどないのだが、そういえば中学や高校の頃、夏服のシャツは毎日自分でアイロンをかけていた。シワが伸びてパリッとしていく様は心まで折目正しく伸びていくようで気持ちよかった。蒸気と共にたちのぼる独特の匂いも良い。アイロンをかけるのは嫌いじゃなかった。

母の白衣もアイロンをかけるかと聞くと母は「せんでいいよー、そこ置いときー」と言った。わたしがやると下手だからそう言ったのか、わたしにやらせる仕事ではないと思っていたのか。

何度も行ったり来たりくるくる回しながら、まぁこんなもんかとアイロンをかけ終えた。
小刻みにがたがたとしていた編み目も落ち着き、反り返ったつばも許容範囲か。

再来週末、1年ぶりに帰省する。
帽子の出来具合と制服のシャツにアイロンをかけていた頃の話をしてみたいと思う。

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