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蛙化現象③

これは投稿者本人の恋愛体験を記録したものである。最初から読みたい方は「蛙化現象①」をご覧ください。

第一章 出会い

クリスマス

あれは2018年の11月。休学2年目の冬。

僕は極度の寒がりだ。そんな僕にとって、冬の仕事は体調面で最悪だった。しかし冬は、年間通して1番お客さんが多い時期。そうクリスマスだ。僕の職場は季節ごとにイベントを行う。その中でも、クリスマスのお客さんの数は異常だった。

そんな僕はいつも通りインナーを着込み、寒さに耐えながら業務にあたっていた。

「ここで過ごす最後のクリスマスか」

来年復学することを決めたため、この年のクリスマスはそこら辺のカップルより、僕にとっては大切な冬だった。

業務中にも関わらず、僕は職場での思い出を頭の中で回想しつつ、街頭に止まっているカラスを見ていた。僕の背後でクリスマスの音楽がリズムよく流れる中、ぼーっとしていたのだ。

そして客さんから急に声をかれられた。

「あの~」

その瞬間、僕は我に返る。僕の回想シーンは、まるで猫に追われるネズミのように頭から消え去った。

「はい!こんにち、、、」

お客さんに話しかけられたら、挨拶から始めるのがこの職場の決まり。この挨拶を言い終わる前に僕は気づいた。「9月に会った人だ」と。

「私のこと覚えてますか?てか何見てたんですか?」

彼女は僕の挨拶を遮るように畳み掛けた。そして僕がカラスを見ていたことに気づいていた。恥ずかしかった。

「はい。覚えてます。」

そう応えた僕は次に、カラスの言い訳を始めた。

「この街頭とカラスが妙にマッチしててですね。でもあまりにクリスマスとはマッチしてなくて、、、、逆に見入っちゃいました。」

我ながらあっぱれの言い訳だった。

その後、5分くらいは話していた気がする。時間と会話の内容を、正確には覚えていない。なぜなら再開した喜びと、久しぶりに感じた女性への緊張で頭と心はいっぱいだったからだ。

一通り話が終わると、彼女は写真を撮るようお願いしてきた。9月と同じだ。僕はそれに応え、彼女にお願いされたお揃いのポーズで写真を撮った。今回も写りのチェックが入る。再び一発で合格をもらった。

「この後も頑張ってくださいね!」

満面の笑みで彼女はそう言って、背中を向け遠ざかって行く。なんとも儚く尊い後ろ姿だった。

僕もお客さんという同じ立場なら、絶対追いかけて怪しまれないように連絡先を聞いて、今後も仲良くしていきたいと心から思った。

しかし僕はあくまでも従業員であり、彼女はお客さん。絶対に超えては行けない境界線を、僕は無意識に理解していた。大衆のせいで彼女の姿が見えなくなると、僕はまた、いつも通り業務にあたっていた。

その日を境に僕たちは、この職場で再会することはなかった。そして翌年の2019年2月末。僕は大学に復学するために、この職場を去った。

勤務最終日には、沢山の仲間に見送られ同期の男性は、辞める本人よりも大号泣してくれた。この上ない幸せだった。今思えば2度目の再開後、僕は彼女の事をこれっぽっちも思い出さなかった。

それだけ日々の業務に追われていたのか、はたまた僕の彼女に対しての気持ちが弱かっただけなのか。今では分かる気がする。



今後も、恋愛経験を綴っていこうと思います。現在の時点では、彼女とは別れていません。しかし今後どんな関係になろうと、この過去は大切にしたいと風呂場でビビっと感じました。そこで投稿すること決めました。もし僕の友達がこの投稿を見たら、以下はご理解ください。病んではませんのでご安心を。
今後しばらくは、このタイトルでnoteを作成していきます。
それでは続きはまた明日。


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