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シナリオ⑩

第二章 大学

前回までのあらすじ

 高3の夏、友人のユウマと地元の図書館を訪れていた。ある日、図書館内で同じ高校に通うのんに、一目惚れしてしまった。そして夏休み最終日、2人は付き合うことになる。その4か月後、理由も分からずのんから別れを告げられる。そして3年後、あるLINEを受信する。それはのんからの、3年ぶりの連絡だった。このLINEがきっかけとなり、2人は再開することに、、、、

デジャブ

 まだ残暑に不快感を覚える、9月下旬。  

 のんに返信をしてから2か月が経過し、遂にこの日をむかえた。

 3年ぶりの再開である。2人はすでに大学の3回生。彼女は鹿児島の大学に通っていた。そのため実家に帰省するタイミングで、再開することになったのである。

 彼女にとっては再開することなど、帰省期間の1つのイベントでしかないであろう。そんな1つのちっぽけなイベントでも、僕にとってはかなりのビックイベントだった。まさに何か月も前から計画しワクワクして臨む、九州発のディズニー旅行と同じ感覚である。

 再開の場所を決めるのは僕の仕事。大学の3年間で最も美味しいと感じた居酒屋を予約した。そこはビルの地下にあり、隠れ家的な雰囲気を醸し出している。

 数段の階段を降り、店内へ。受付に到着すると、サバの味噌煮であろうか、心地良い匂いが鼻腔を刺激した。

 そして座席に案内される。席は個室になっていて掘りごたつ。予約通りの席を案内してくれた。

 まだ彼女は来ていないようだ。

 味噌煮の匂いよって、どこか張り詰めた思いは消えていた。しかしいざ席に着くと、再び心臓が激しい運動を始める。

 高鳴る鼓動を抑えるため、メニュー表に目を通す。しかし効果がないようだ。料理の内容は、全く頭に入ってこない。待たされる側の辛さ、というものを始めて実感したのだった。

 


 「お待たせ」

 優しい声と一緒に、黒髪ショートが似合う彼女は姿を現した。当時も、例のランキングは1位であると確信した。

 「いやいや。帰省中にありがとうね。」

 元をたどれば、この会の言い出しっぺはのんである。しかしこの時はもう、どちらが誘ったのか分からない状態になっていた。

 僕はそれだけこの会に、期待もしていたし賭けていたのかもしれない。

 メニューを広げドリンクと食事を頼む。店員は注文を聞くと、気前の良い声を上げ、厨房へと帰っていった。

 料理を食べながら、授業の話、サークルの話、部活の話と色んな話をした。緊張していた自分を徐々に忘れ、開始20分後にはお互いに笑い合っていた。

 高校の帰り道、2人で寄り道した公園を思い出す。当時との違いで言えば、お互いソフトドリンクではなくアルコールを手にしていることだった。

 大人への成長を感じつつ、あの頃との違いに寂しいさを抱いたのを覚えている。

 

 そんな幸せな時間は、圧倒的な速度で終わりに向かっていった。

 酒によるほろ酔いと、たらふく食べた満腹感から気分が大きくなった僕は、散歩に誘った。

 快く了承してくれたのんと2人で近くの大型商業施設へ。その建物の4階には、近くの景色が一望できるスポットがあった。

 そんな絶景なロケーションに、僕らは無意識のうちに足を運んでいた。

 2人で夜景に黄昏る。この時には、専ら酒は覚め切っていた。

 「なんか懐かしいね」

 その言葉は、彼女なりの照れ隠しだったのだろう。

 そんな赤面する彼女を気にも留めず、心から溢れ出す言葉たちを、僕は喉内で押さえつけることが出来なかった。

続く

  


 



 

 

 

 

 

 

 

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