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NCAA 2020-21シーズンの締めくくり

自己紹介

こんにちは、コウです。小学生の頃からNBAが好きで、高校生の時からアメリカ大学バスケの情報を見ています。今はソフトウェア・エンジニアしながらアメリカバスケ情報を追っています。

はじめに

ちょっと遅いですが2021年のアメリカ大学バスケのシーズンが終わりました。準決勝と決勝が日本時間の日曜日と火曜日にありまして、最後はBaylorがGonzagaを86-70で下して初めて優勝しました。決勝が始まる前のCMが印象的でした。今年は変わった1年でした。それでも数年後振り返るときはどこのスタジアムで開催したとか何人観客がいたとかはは覚えていないと思います。彼ら(特に選手達ですがコーチやスタッフ含め)の活躍は覚えています。それはいつもと変わりません。

相変わらずぼくの予想は外れちゃいました。準決勝1試合目のBaylorとHoustonが接戦になると思ったのが、Baylorの圧勝。逆にGonzagaとUCLAの2試合目が大差でGonzagaが勝利かと思いきやOTまで行き、Jalen Suggs選手のゲームウィナーがなかったら2OTまで行ってた試合でした。決勝はBaylorが3Pを決めてきたら面白い試合になると予想し、それは当たりましたが最初の10分で試合の流れがBaylorにあり、そこから逃げ切りました。

今回の記事はシーズンが終わったので決勝戦を少し振り返って、来シーズンに向けての注目ポイントをいくつかあげたいと思います。

Baylorのリバウンド力

まずはBaylorの立ち上がりがすごかったです。最初のポゼッションで2つのオフェンス・リバウンドを取り得点を決めました。試合中、何回もオフェンス・リバウンドを取りポゼッションを重ねていました。特にオフェンス・リバウンドで活躍していたのがMark Vital選手でした。彼は196cmのサイズがないフォワードですがその日はチームハイの11リバウンドの内、オフェンス・リバウンドが8個でした。ちなみにGonzagaのオフェンス・リバウンドは5個で、Vital選手だけでGonzagaの合計を上まりました。オフェンス・リバウンドがあったのでBaylorのシュート数は67回に対してGonzagaは49回しか打っていません。Gonzagaの方が効率良くオフェンスはできましたが(FG%は51%のGonzagaに対しBaylorは44%)20本近くの差があるのは大きすぎます。3Pを打つBaylorからしたらそれは理想的です。

Baylorのベンチ層

Suggs選手が試合開始3分で2つファウル(最初のはオフェンス・ファール)でベンチに下げなければいけませんでした。Gonzagaは基本的に7人ローテーションなのでここでGonzagaのベンチの薄さが明らかになりました。UCLA戦でOTまで行きそれの疲れが残っている感じでした。UCLA戦では40分以上プレーしたスタメンはDrew Timme選手以外みんなで、Timme選手もファウル・トラブルがあって38分です。ベンチも2人だけプレーして、10分のAnton Watson選手と9分のAaron Cook選手です。対するBaylorは次々と選手を入れ替えできて、ローテーションが8人です。Houston戦ではDavion Mitchell選手が36分とJared Butler選手が33分で、それ以外は30分以下。15分以上プレーしたのは合計8人です。決勝戦でも同じローテーションで8人が15分以上プレーしたBaylorに対してGonzagaはスタメンのみが15分以上プレーしました。長い大会ではやはりベンチ層が重要になりました。

Baylorのディフェンス

アグレッシブで攻撃的なBaylorディフェンスがGonzagaの普段のオフェンス・フローに入れませんでした。Gonzagaの注目選手にあげていたTimme選手をフロントし、さらにウィーク・サイドのディフェンスをペイント近くまで下げて裏も守っていたのでTimme選手へのエントリー・パスを簡単に出せないGonzagaでした。Timme選手がボールを持っていてもピタッとついていたので決勝戦のTimme選手は5つのTOをしました。TOに繋がらなくてもBaylorは頻繁にパスを弾いたりしていたのでGonzaga選手がパスコースを少し修正して普段より若干遠い位置に出さざるおえなかったです。最初の5分で試合のトーンが決まり、Gonzagaはこのディフェンスに少し怯んでいる感じでした。後半はBaylorのディフェンスに少し慣れた感じですが普段見ないTOがまだありました。

Baylorのオフェンス

Baylorの注目選手、Butler選手とMitchell選手が最初から飛ばしてきました。お互い3Pを決めて絶好調でした。この大会、特にButler選手のFG%がシーズン平均以下だったので心配でしたが準決勝から取り戻した感じでした。準決勝ではMitchell選手がダブル・ダブル(12点、11アシスト)、決勝ではButler選手が2003年のCarmelo Anthony選手以来の20得点以上と7アシストを記録しました。Butler選手が関わった合計得点(自分の得点+アシスト)は38点でチームの44%です。

Gonzagaがスクリーンの度にスイッチするのを知っていて、頻繁にミスマッチを作っていたBaylorでした。Timme選手がピック・アンド・ロールのディフェンスを何回も変えましたがどれも効果がなく、Baylorのガードが簡単にドライブできた状態です。そこを止めようとローテーションしてきたディフェンスに対しアウトサイドが打てる選手が多い時には4人いたのでほぼノーマークで3Pが打てていました。

前半の終盤、Gonzagaがリードを縮めたところでディフェンスをマンツーマンから2 - 3ゾーンに変更しました。Gonzagaは基本的にマンツーマンディフェンスのみで、今シーズンはゾーンを使ったポゼッションは22回だけでした。最初はBaylorのオフェンスが止まりかけましたが3Pシューターが多いBaylorなので必然的にGonzagaのゾーンも広がり、フリースロー辺りがガラ空き。これをカッターのMaCio Teague選手が上手く使い簡単にカウンター。そこからはたまにゾーンになりましたが、Baylor相手に長くは続かないとわかったのでコロコロ変えながらゾーンを使いました。

Gonzagaのトランジション・オフェンスは一流

UCLA戦でも見せましたが、TOからのオフェンスが早いです。Suggs選手やAndrew Nembhard選手がいるので鋭いドライブでディフェンスがまだ整っていない状況からの判断は素晴らしかったです。上手にユーロステップを使ったり、セミ・トランジションでトレーラーにパスを出すシーンが多かったです。Baylorも前半のリードが縮んだ理由はTOからファストブレークでGonzagaに簡単な得点を決められたのが大きかったです。ボールを持ったら早い選手がいるのでディフェンスとしたら嫌な相手です。

無敗シーズンまで後一歩

今年のGonzagaはスタッツ的に歴史的に残るチームになります。2FG%は歴代1位になるぐらい効率良く、シーズン中はほぼ無敵でした。毎年課題とされるスケジュールも、今シーズンはNCAA大会に出場したチームとも数回対戦して全て快勝しています。ですが最後の最後で負けちゃいました。無敗シーズンがどれだけ難しいか痛感します。1976年が最後の無敗チームで、それ以来Final Fourまで進んだ無敗チームは1979年のIndiana State(Larry BirdがMagic JohnsonのMichigan Stateと決勝で対戦)、1991年のUNLVと2015のKentuckyと同じで、あと1歩で完璧なシーズンだったのが負けたことで歴史に残ります。ここまで無敗に近くくるチームは今後出てくるか気になります。Gonzagaの場合はカンファレンスがそこまで強くないので今後も可能性があります。

Jalen Suggs選手は特別です

彼の評価はこの大会で絶対上がりました。どのmockドラフトでもトップ5に入っています。シーズン中のプレーでそれは正しいと思います。ただスーパースターにある”it factor”(ここぞの場面でチームを勝利に導かせる何か)がありました。得点やアシストはもちろんそうですが彼がベテランみたいに落ち着いて、いるだけでチームが安心します。自然とチームが彼をリーダーとして見て、彼がいるから周りも頑張ってプレーをしています。UCLA戦では試合終盤、Suggs選手がJuzang選手をマークしていました。既に噂ではGMによってはSuggs選手をドラフト1位で取る話も出ています。理由としたらプレーメイキングができ、ディフェンスもできるし、彼がいるだけでチームのDNAを変えるものを持っていると評価しています。今のところはCade Cunningham選手が1位行くとほとんどの人が予想していますがGMによってはSuggs選手を1位で指名するかもしれません。

来シーズンに向けて:トランスファー・ポータル

今年のトランスファー・ポータル(転校)が大変なことになっています。通常転校するには1年間練習に参加できるが試合に出れない期間があります。それが免除されるのは大学を卒業して大学院に進む選手です。本人や家族の事情で実家の近くに転校したい選手も可能ですが委員会の承認が必要で多少面倒な手続きがあります。1年プレーできない選択をした場合は、転校したい学校を選べますがたまに現チームから転校できないチームやカンファレンスが出ます。よく聞くのがBig 12校から他のBig 12校に転校できない(レギュラーシーズン中対戦するので)制限をかけることです。数年前からトランスファー・ポータルができ、転校希望があるがまだ分からない状態の選手が名前を出せる仕組みになりました。これで他校からのリクルーティングを見ながら選択できます。ポータルを使っても1年間は試合に出れません。

ではなぜ今年は大変なのか?普通は大学4年間しかプレーできないですがCOVID-19だったのでNCAAがもう1年プレーしたい選手はプレーできると発表。さらに新しいルールで1回目の転校は1年プレーできないルールを適用しないことを検討しているので簡単に転校ができるかもしれません。まだシーズンが終わったばっかりですが既に1000人以上もポータルに名前を出しています。選手からするとプレー時間やチームのスタイル、コーチとの相性など様々な理由で転校したいと思いますがこの新しいルールが適用されるとリスクが低く新しい環境に行けるかもしれません。コーチからするとせっかくリクルートした選手が簡単に転校できると来年のチームがどんなチームになるか分からない状況なので混乱しています。転校はこれ以前から頻繁に使われていて、例えば今年のFinal Fourまで辿り着いたチームには転校して活躍した選手が各チームにいます。HoustonにはKansasからキャリアを始めたQuentin Grimes選手やMassachusettsでプレーしたDeJon Jarreau選手、UCLAにはKentuckyで1年プレーしたJohnny Juzang選手、BaylorのMitchell選手は元々AuburnでGonzagaのNembhard選手はFloridaです。ただ1回のオフシーズンでこんなにトランスファーすることはありませんでした。来シーズンのチーム構成が少し楽しみです。

高校生へのリクルーティング

転校生もそうですが、高校生へのリクルーティングもまだ終わっていません。今シーズンからG Leagueも選択肢になったので大学からすると貴重な才能をどう説得するかがポイントです。以前だとDukeやKentuckyなどの強豪校に数名が進んでスーパーチームを作ることが多かったですが下級生中心でMarch Madnessを勝ったチームは2011-12年のKentuckyと2014-15年のDukeぐらいです。基本的にスーパーチームを作っても注目だけされ、逆に他のスターとボールタイムを争わないといけないのでアピールできないかもしれません。それでドラフトの順位が落ちれば契約で数億円の差が出るかもしれません。最近は地元の強豪に行ってベテランと組んだり、ワンマンチームとして頑張る選手も増えています。それでもドラフトで上位に行けるのでわざわざ他のスターが集まる強豪に行かなくても大丈夫です。強豪校に行くのはそこのコーチから学べることが大きいかもしれません。なのでDukeは依然として高校生に人気です。

さらにGonzagaみたいにMid-Majorなチームに行くのもひとつの選択肢です。Gonzagaは基本的に超高校級の選手をリクルートしません。自分たちのシステムに合った選手を説得し成長させるモデルです。証拠にこれまでGonzagaから1年でプロに行った選手はZach Collins選手のみで、彼もシーズン後半からmockドラフトで順位が少しずつ上がって最終的に10位でPortland Trail Blazersが獲得しました。Suggs選手はほぼ間違いなく1年でプロに行くと思いますし、彼がGonzagaに超高校級選手に新しいモデルを教えたかもしれません。今の高校生は彼のスパープレーを見てGonzagaに行きたがっていると思います。Suggs選手と同じミネソタ州出身で高校生ランキング1位のChet Holmgren選手はGonzagaに行くと予想されています。Hunter Sallis選手も高校生ランキング6位でGonzagaに行くことにしました。

現時点の来シーズンのランキング

既に来シーズンのチームランキングが出されています。これはNBAに行くと思われる選手はチームから離れる前提で作られています。もちろんトランスファー・ポータルにものすごい数の選手がいますし、彼らがどのチームに行くかによって現チームも変わりますし、新チームもスタメンやローテーションを変更するかもしれません。今回は簡単にFinal Fourに残ったチームだけ紹介します。

CBSのランキングではUCLAがトップ、BleacherReportでは2位でThe Athleticでは3位なので上位のランキングは間違っていないと思います。Juzang選手がNBAへ行かないと思うのでFinal Fourまでプレーした選手がほとんど残る形です。さらに5 starリクルートのPeyton Watson選手が入るので期待が高いです。

GonzagaはCBSでは2位ですがThe AthleticとBleacherReportでは1位です。Suggs選手(まだ本人からの発表はないがほぼ確実にプロ行き)、Kispert選手(まだ発表なし)とAyayi選手(発表済み)がNBAへ行きますが前項で書いたHolmgren選手(まだ決めていないがおそらくGonzagaへ)とSallis選手が入るのでカバーできるかも。さらにUNCからトランスファーで入るかもしれないWalker Kessler選手が入れば高さは十分です。予想通りになればTimme選手、Nembhard選手とWatson選手に上記の選手が加わるローテーションメンバーになると予想。

今シーズン優勝したBaylorはCBSでは5位でThe Athleticでは7位でBleacherReportでは9位でした。Mitchell選手とButler選手がNBAへ行く予想とTeague選手とVital選手が卒業するので、Adam Flagler選手、Matthew Mayer選手とJonathan Tchamwa Tchatchoua選手、あとは5 starウィングのKendall Brown選手率いる全米リクルーティング・ランキングトップ5のクラスが入るので再び優勝できる力があります。

HoustonはJarreau選手が卒業し、おそらくGrimes選手はNBAを試すがメディアによってドラフトに残ると予想しているところもあれば、Houstonに戻ると予想しているところがあります。CBSはHoustonを12位と予想し、BleacherReportは13位ですが、The Athleticがこの中で一番高く、9位です。Grimes選手が残ればトップテンに入るかもしれませんが彼がいないとトップテン外になると思います。Houstonはトランスファーを上手に使い有力選手を集めるのでポータルからどんな選手が取れるかがキーになると思います。

CBSが発表したランキングはこちらです。

The Athleticのランキングはこちらです。有料なので全部見るにはサブスクが必要です。

BleacherReportはこちらです。ちなみにBleacherReportは各チームのことではなく他社が出したランキングを比較する形にしました。CBSとThe Athleticも含みますが大学バスケは人気なのでメディア会社だと追います。

最後に

昨シーズンはシーズンの終盤からCOVID-19で中止になり、今シーズンも変わった形のシーズンでした。こんな状況の中、大学バスケを盛り上げてなんとかMarch Madnessまで開催できたのはすごいことだと思います。選手達もトーナメント最中はバブルの中で長時間ホテル生活が続きました。それでもプレーができ、感動をくれました。

来シーズンはもう少し普通に近いシーズンだと嬉しいですがどうなるかわかりません。でも選手達やスタッフが頑張る姿を見たいです。

まだシーズンが終わったばっかりですがたまにこの感動を見たくなったらこちらの動画は印象的なシーンを纏めてあります。

オフシーズンになっても記事を書いたりするので楽しみにしていてください!

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