《馬鹿話 735》 染みの誘惑 ③
私は慌てて今入って来た部屋のドアに駆け寄り、ドアのノブを回して思い切り押してみた。スチール製のドアはビクとも動かない。
いくら空き室だったからといえ、無断で見ず知らずの他人の部屋に入ったことを私は後悔した。
「冷静になろう」と私は自分に言い聞かせた。
誰かが部屋の外から鍵を掛けたのか、それとも自動的にロックされたのか。このまま訳の分からない部屋の中に閉じ込められることに、えも言われぬ恐ろしさが込み上げて来た。
「どうする、どうする」と私は呟きながら、この部屋から抜け出