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    石引商店街にある「石引パブリック」の読書会で知り合った皆さんに面白い本を紹介していただくマガジンです。(今のところ) ※石引パブリックの、本屋・カフェ部門は2022年12月で終了しています

最近の記事

書評:福間良明『「勤労青年」の教養文化史』(岩波新書、2020年)

 私が通っていた高校には、定時制の夜間部があり、そのため教科書を机に置いていくことが禁じられていた。グラウンドには照明があったが、部活動は夕方には終了して帰らなければならなかった(私自身は部活動には参加していなかったが)。入れ違いでやってくるはずの夜間部の学生と話したことはない。高校生の私にとって、彼らは影のような存在だった。  本書は、戦後日本の中卒労働者が、青年団の講座や定時制高校で勉強を継続しようとした際に行き当たった諸問題を解説する。彼らには進学組への憧れと嫉妬があ

    • 書評:今泉みね『名ごりの夢』と日本人の時間

      今泉みね『名ごりの夢――蘭家桂川家に生れて』(平凡社、東洋文庫、1963) 図書館で偶然手に取った本書は、昭和10年に、当時80歳だった老母による維新前後の回想を息子の今泉源吉がまとめたものだが、これがとても面白い。副題にあるように、洋医者の娘だった著者は、幼い頃、福澤諭吉におんぶしてもらったという家庭環境に育った。私がとくに感動したのは、潮干狩りに関連して、著者が次のように述べている箇所だ。「昔の人は今の人とちがって、ただなんでもじいっと見入る。なにしろゆっくりしたもので

    書評:福間良明『「勤労青年」の教養文化史』(岩波新書、2020年)

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