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肩甲下筋&上腕二頭筋長頭~密接な関係~

みなさんこんにちは、志水ですっ!

突然ですが
みなさんは「肩甲下筋と上腕二頭筋長頭がどのような関係にあるか」知っていますか?



それはずばり
【上腕二頭筋長頭の安定性に肩甲下筋が関与している】ということです。


そんな事知ってる


と思われた方はこれ以上読む必要はないですが


ん?なんで??


と思われた方は"無料部分だけ"でも結構ですので読んでいただけると明日からの臨床で役立つことがあるかもしれません。


あっ、いちばん重要な部分だけは先にご覧頂きたいと思います


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本記事の"キーポイント"である
『上腕二頭筋長頭腱と肩甲下筋の位置関係』はこのような感じになっています。


今回の記事では上腕二頭筋と肩甲下筋の解剖および機能的な部分についての説明しながら、上腕二頭筋長腱の安定性が低下している症例に対するオススメの介入方法をお伝えしたいと思います❗←かなり主観的な介入になるので、"参考"にしていただけると良いかと思います(^^)ただ、肌感としては結構いい感じです。


では、はじめていきましょう!

はじめに

肩関節において
上腕二頭筋長頭腱炎は臨床でもよく経験するかと思いますが,肩甲下筋腱の損傷も臨床で度々遭遇する肩前方部痛の原因の一つだと思います。


そしてこの上腕二頭筋長頭腱と肩甲下筋との関係としては,上腕二頭筋長頭腱の脱臼が存在すると以前から報告されています[1,2](古い論文は今から(約80年前にもなります。)。そして脱臼する方向は基本的に内側となります。


そしてこの内側へと上腕二頭筋長頭腱が逸脱(いつだつ)しないように,結節間溝内に収める役割を担っているのが肩甲下筋や烏口上腕靱帯とされています。つまり,これらの組織が損傷することで上腕二頭筋長頭腱が内側へと脱臼すると考えられています。[3]


さて、ここまで読む段階で肩甲下筋の重要性がわかったかと思いますが…
上腕二頭筋長頭腱が内側へ脱臼するとなぜ肩甲下筋が損傷するかイメージできるでしょうか?


理解するのには、このあたり(結節間溝周囲)の解剖学の理解がどうしても必要になってくるので、基礎的な部分ですがめんどくさがらずに学んでいきましょう!


肩甲下筋の付着部

肩甲下筋の付着部は小結節ですよね?

ただ、それだけでは『60点』です。


というのも
肩甲下筋は『小結節の前方から上方』にかけて付着すると言われています。[4]


と、その前に
肩甲下筋の起始・停止・支配神経に関する簡単な復習からです。

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起始:肩甲下筋
停止:小結節
支配神経:肩甲下神経(C5・C6)
作用:肩関節の内旋・内転
作用:肩関節の内転・内旋
~参考~
・坂井建雄; 松村譲兒 (監訳): プロメテウス解剖学アトラス 解剖学総論/運動器系. 第3版, 医学書院, 東京, 2017 Jan
・林典雄:運動療法のための機能解剖学的触診技術 下肢・体幹 改訂第2版.MEDICAL VIEW,2012

ここは超キホンなので ,しっかりと覚えておきましょう。

次は,
肩甲下筋の付着部である小結節の位置を確認していきます

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この点線赤枠の部分が小結節の位置になると思います。


そして、
肩甲下筋の走行および付着部はこのようになります


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青部分が実際に肩甲下筋の腱が付着していく部分であるとされています。(※実際は関節包へと徐々に移行して骨膜へと付着していくと考えていいと思います。)


これは前額面(前方)からみた解剖(付着)になりますが、もっと重要なのは水平面(上方)からみた解剖になるんです。


これについては上腕二頭筋長頭腱の走行を説明した後に図(骨模型+イラスト)をもちいて解説していきます!


上腕二頭筋長頭のキソ解剖

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起始  :関節上結節・上方関節唇
停止  :橈骨粗面
支配神経:筋皮神経(C5~C6)
作用  :肩関節の屈曲(外転・内旋)
     肘関節の屈曲
     前腕の回外
~参考~
・坂井建雄; 松村譲兒 (監訳): プロメテウス解剖学アトラス 解剖学総論/運動器系. 第3版, 医学書院, 東京, 2017 Jan
・林典雄:運動療法のための機能解剖学的触診技術 下肢・体幹 改訂第2版.MEDICAL VIEW,2012

起始・停止に関しては多くの方が理解しているかと思います。
そして重要なのは"結節間溝を通過"する,ということです。


上腕二頭筋長頭腱は起始部である関節上結節/上方関節唇から結節間溝を通るまでどのような"道のり"かイメージができるでしょうか?


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長頭腱はこのように関節上結節から骨頭の上方を通過し、結節間溝を通ります。

そして、この結節間溝を通る際に周囲の軟部組織との関係性が非常に重要となってきます❗

上腕二頭筋長頭腱と肩甲下筋との関係

上腕二頭筋長頭腱は結節間溝を通り、肩甲下筋はそれを支えるように位置するといったことは最初に文章で紹介しましたが、

改めて骨模型+イラストで解説していきます。


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このように長頭腱は肩甲下筋の「上」を走行するように位置します。
つまり、肩甲下筋腱は深層かつ内側から長頭腱を支える(支持する)ような役割を担うことが考えられます。

もうすこしわかりやすいように上方から観察したものはこちらです([5]を参考に作図)

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ここから先には
介入動画3つがあります。

上腕二頭筋長頭に対する介入×2
肩甲下筋に対する介入×1
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こちらを見ると
肩甲下筋と長頭腱の間には上関節上腕靭帯(SGHL)と烏口上腕靱帯が(CHL)が位置していることがわかります。

このイラストでははっきりと各組織(肩甲下筋腱・上関節上腕靭帯・烏口上腕靱帯)が分けられていますが、実際はそこまで区別できないようなので、今回はここは"まとまり"(内側支持組織)として表現します。

この内側支持組織は長頭腱を結節間溝へと留めるような役割を担っていることは前述しました。

しかし、長頭腱が内側へと脱臼することで内側支持組織は損傷し機能が破綻するとされいてます。

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こうなると,結節間溝内での上腕二頭筋の安定性が失われ,本来の滑車機能や骨頭の下方抑制機能が低下することは容易に想像でき、そしてそれが腱板損傷や上腕二頭筋長頭腱炎、インピンジメント症候群などの障害に繋がることも考えられます。

こういった損傷が生じた場合は
上腕二頭筋長頭や肩甲下筋の筋spasmが起きやすいと考えます。
(肩甲下筋のspasmが長頭腱の脱臼に関与はそれほどしていないかもしれませんが、一応紹介しておきます)

上腕二頭筋にspasmが強いと、内側へのベクトルが強くなることは想像がつきますよね?

そのため、上腕二頭筋長頭に対する介入方法もご紹介したいと思います。
※本来なら腱板や肩甲帯の機能改善も行っていくべきかと思いますが、そのあたりは別記事でもご紹介しているかと思いますので、割愛したいと思います。

上腕二頭筋長頭に対する介入方法







肩甲下筋に対する介入方法

この介入方法は
①肩甲下筋の中部から下部の徒手的マッサージ
②収縮を利用した肩甲下筋上部のリラクゼーション

になると思っています。

特に肩甲骨外側から肩甲下筋を触れにいくと疼痛がでやすいので
軽度外転位で収縮をさせる方法でも良いかと思います。


いかがだったでしょうか?


はじめて上腕二頭筋長頭腱の内側脱臼を知った方もいるかもしれません。でも、これって意外と臨床でも遭遇する病態でもあるので、まずはどういった状態になっているのか?ということを知るには良い内容だったかと思います。

今後も、みなさんが"調べたい"と思っているけどなかなか調べられない部分を記事にしていければと思っています(^^)


【参考文献】


[1]Abbott, L. C., John, B., & Saunders, M. (1939). Acute traumatic dislocation of the tendon of the long head of the biceps brachii: A report of six cases with operative findings. Surgery, 6(6), 817–840.
[2]Slätis, P., & Aalto, K. (1979). Medial dislocation of the tendon of the long head of the biceps brachii. Acta Orthopaedica Scandinavica, 50(1), 73–77.
[3]. Gambill ML, Mologne TS, Provencher MT. Dislocation of the long head of the biceps tendon with intact subscapularis and supraspinatus tendons. J Shoulder Elbow Surg 2006;15:e20-2.
[4]時吉聡介, 井手淳二, 廣瀬隼, & 水田博志. (2007). 肩甲下筋の上腕骨付着部形態に関する解剖学的検討. 肩関節, 31(2), 197–200.
[5]Tamborrini, G., Möller, I., Bong, D., Miguel, M., Marx, C., Müller, A. M., & Müller-Gerbl, M. (2017). The Rotator Interval - A Link Between Anatomy and Ultrasound. Ultrasound International Open, 3(3), E107–E116. https://doi.org/10.1055/s-0043-110473





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