投げるための「胸郭」
今回は、肩や肘の土台となる「胸郭」についてお話ししたいと思います。
「胸郭」というワードを耳にしたことのある方は多いと思いますが、どの部分を胸郭というのかわかりますか?
胸回り・・・
肋骨・・・
体幹・・・
胸郭のトレーニングをしたい!という声は選手からも聞きますが、
実際に聞くと、その場所や動きは意外とあいまいな答えが返ってくることが多いです。
はじめに
胸郭について簡単に説明したいと思います。
胸郭とは
胸をかたちづくる骨格をいいます。
例えば腕を振る動作を想像してみましょう。
本来、腕を振るには
肩の関節と肩甲骨が動くことによって
しっかりと振る動きができます。
しかし、腕を振る動作は
肩と肩甲骨の動きだけで完成するのかというとそうではありません。
肩・肩甲骨・胸郭
それぞれの部位が同時に、十分に動くことによってスムーズな動きとなっていきます。
それでは
投げるための「胸郭」について話を進めていきたいと思います。
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12月のテーマは「動作分析」
■胸郭・胸椎の動きとは
胸椎は大きく分けて6つの方向に動きます。
まずはそれぞれの動きのチェックをしてみましょう。
<前後方向>
<横方向>
<回旋方向>
これら胸椎の動きは胸郭全体の動きに大きく関わっていきます。
つまり、
胸椎の動きが制限されると、
胸郭の動きも大きく制限されてしまうため、
体の動き・投球動作にも影響していきます。
■投球のしなりをつくるCカーブ
投球動作において
“しなり”というワードをよく耳にしたり、使ったりすることがあるかと思います。
腕のしなり・体のしなり
などをイメージされるのではないでしょうか。
投球動作における“しなり“には
体がもっとも開く動作である
【Cカーブ】が重要になります。
Cカーブとは
図にあるように、
これには胸郭に加えて股関節・腕が組み合わさり、
大きなしなりの【Cカーブ】がつくられます。
図でもわかるように、
胸郭は肩と股関節に挟まれた
Cカーブの動きの中心となります。
そのため、肩と股関節だけでなく、
胸郭がかたくなってしまうと、
図にもある<しなりの少ないカーブ>
となってしまいます。
肩+胸郭+股関節でのからだ全体のしなりが
不足した状態で投げると、
腕(とくに肘・肩)に“しなり“の負担が強くなりやすく、
ケガの起こりやすい投げ方となっていきます。
つまり、図のように肘の外反ストレスが強くなり、
肘に痛みを引き起こす要因となっていきます。
外反ストレスについては、コチラにまとめています。
■“投げる“に求められる胸郭の動き
投球におけるCカーブには
胸郭の動きが重要であることは少しご理解いただけたかと思います。
それでは「Cカーブ」には
どのような動きが必要となるのかについてまとめたいと思います。
肩や股関節の動きに加えて
【胸椎の伸展と回旋】がポイントです!
つまり、
<背中を反らせること(伸展)>と
<胸を張れること(回旋)>の動きが
組み合わさることで大きなしなりを生む要素となります。
そのため、伸展・回旋の動きをしっかりと動かせることが
野球肘の予防・パフォーマンスにも関わってきます。
■胸郭の動きを広げるトレーニング
先ほどお伝えした
<伸展と回旋の動き>と
<横方向の動きである側屈>
のトレーニングについて解説したいと思います。
<背中の反り(伸展)を広げるトレーニング>
STEP1
STEP2
<胸の張り(回旋)を広げるトレーニング>
四つ這いができたら、足を開いてトレーニングしましょう。
<胸郭の横の動きを拡げるトレーニング>
これらのトレーニングは
あくまで一例にすぎませんが、投球動作を十分に行える・ケガの予防にはとても大切な動きの基礎になります。
また、選手の実際の意図はわかりませんが、
プロ野球・広島東洋カープの大瀬良投手も投球前にこのような動きをしておりました。
胸郭の動きという視点でみると、
投球前に高めておきたいことがわかりますね!
まとめ
・胸椎には大きく分けて6つの動きの方向がある。胸椎の動きが制限されると、胸郭の動きも大きく制限されてしまうため、体の動き・投球動作にも影響していく。
・投球動作に大切なCカーブ。肩と股関節だけでなく、胸郭がかたくなってしまうと、しなりの少ないカーブとなり、肘の負担が大きくなり野球肘を生む要因となる。
・Cカーブに求められる胸椎の伸展と回旋を十分に動かせることが大切である。
これまでに野球肘を予防するために必要な要素として連載を続けてきた
「強いヒジのつくりかた」
「強いヒジをつくるための肩」
「投げるための胸郭」
読み手の方によっては
簡単な内容であるかもしれませんが、肘―肩―胸郭これらは投球動作においても切っても切り離せない関係です。
野球肘を予防し、ケガから守る方に少しでも伝わり、ケガから守る一助になれたらと思っております。
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