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上肢疾患に共通した機能障害に対するセルフエクササイズの選択

臨床+.3週目を担当する佐藤康です。
今回は、臨床場面での「上肢疾患に対する運動療法」に着目していきます。

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上肢疾患に対するセルフエクササイズとしては、各関節周囲のストレッチ、腱板トレーニングや四つ這いexなどは臨床場面でも多く活用することが多いと思います。

まず、臨床で対応する上肢疾患にはどのような疾患が多いでしょうか。

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上図にもありますが、肩の挙上制限やテニス肘などの肘外側痛、手首の痛みはよく対応することの多い疾患です。

下肢疾患に対するトレーニングは、スクワットやランジ動作をはじめ、多くのものが挙げられていますが、上肢に対するトレーニングの選択やそのバリエーションに悩む方も少なくないと思います。

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そこで今回は、
上肢疾患に共通した機能障害に着目し、
それに対する運動療法の選択を考えていきます。

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■上肢疾患に共通した機能障害とは

はじめに、それぞれの各関節に対する機能障害の要因を挙げていきます。

|肩:肩甲上腕関節/肩甲胸郭関節
|肘:腕尺関節/腕橈関節
|手:橈側手根関節/尺側の安定性

|肩

肩関節においては
肩の挙上制限や回旋制限に着目します。

これらの制限をきたす要因として、
局所機能である肩甲上腕関節・肩甲胸郭関節の要因を考えていく必要があります。

その多くに関節の求心位(適合性)が低下し、
適合性低下を代償した異常運動を招くことがあります。

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▶肩甲上腕関節
肩甲上腕関節では、
肩の挙上・回旋制限における異常運動として、
上腕骨頭の前方偏位や上方偏位をきたすことが多くみられます。

本来、上腕骨頭は関節窩に対して、転がり運動・滑り運動の副運動が逆方向に起こることで、骨頭中心の回旋運動を一定に保っています。

しかし、腱板機能が低下した例において、骨頭運動の求心性が低下すると、副運動が同方向に起こり、関節窩に対して上腕骨の上方化をきたしやすくなってしまいます。

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肩甲上腕関節を動的に安定させるにあたって、
腱板と上腕二頭筋長頭腱が主な役割をします。

腱板筋群には、肩関節回旋運動など主動作筋としての働きに加えて、上肢挙上時にはforce coupleとして、上腕骨頭に安定した支点をつくる役割があります。

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▶肩甲胸郭関節
肩甲胸郭関節は、
胸郭上に肩甲骨が浮遊する機能的な関節であり、
多くの運動方向が存在します。

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挙上位では肩甲上腕リズムより、
肩甲骨の内転・後傾・上方回旋(外旋)運動が求められます。

上方回旋や後傾運動の低下は、肩峰-上腕骨大結節間の距離を狭小化させてしまい、肩峰下におけるインピンジメントが誘発されやすくなります。可動域制限ではこれらの運動が複合的に低下しているケースが多くみられます。

肩甲骨のマルアライメントや異常運動により、肩甲胸郭関節や肩甲上腕関節の解剖学的な位置が変化することで、肩甲上腕リズムが破綻し、それらに加わるメカニカルストレスは増強しやすくなっていきます。

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|肘

肘関節の運動は主に
屈曲伸展方向と回旋方向に動きます。

正常な動きとして、肘伸展運動に伴い
腕橈関節では橈骨頭が小頭後方へのすべり運動を行い、
腕尺関節では尺骨が外反していきます。

肘伸展運動時に
この腕橈関節・ 腕尺関節運動が破綻することで、
肘関節に対するメカニカルストレスを増大させる要因となります。

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前腕の回外運動においても
関節の適合性が大きく求められます。

回外運動においては、
肘頭窩に対して尺骨肘頭が嵌っていることが
適切な関節運動を行う条件となります。

また、橈骨では橈骨頭が腹側に偏位していたり、
背側方向への可動性が低下していると、
回外制限での肘伸展運動を招き、
キャリーアングルの増大した外反した肘伸展運動を招く要因となります。

▶腕尺関節
肘伸展運動に伴い、腕尺関節では尺骨の外反・内旋が生じます。

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