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六脈

(はじめに)

先日の(2019年の)3月5日に、インドでアジャンタの石窟寺院群に行ってきました。その時、サンフランシスコ在住の30代後半の香港人Mr and Mrs. Jeff Lee夫妻と一緒の車に乗り、アジャンタに行ったことは、10日ほど前に皆さんにお話しした通りです。そのアジャンタで、ひょんなことから同行のLee夫人から、大変不思議な話を聞きました。この話は、私の亡くなった父母以外から聞いたことがない話で、非常に印象深かったので、皆さんに、お話ししたいと思います。
 

インドの脈の取り方


 
アジャンタの洞窟の素晴らしい壁画の説明を、インド人の老ガイドAshokさんから、Lee夫人と私の2人で聞いていた時のことです。インドでは古代から、人の健康状態を見るときに、患者の手首に、医者は人差指と中指、薬指の3本を当て、脈をとって診るのだと、AshokさんがLee夫人の右腕の手首を取って、やって見せてくれました。
 

米国在住香港人のLee夫人、六脈と妊娠の不思議な話

 
Lee夫人は、「インドでもそうなのですか、初めて知りました。」と言っていました。そして、さらに次のような驚くべき話をしました。「私は、サンフランシスコで漢方医に見てもらったとき、左右両方の手首をこれと同じようにして3ヶ所ずつ合計6ヶ所の脈を見て診断してもらったことがあります。実は、私は結婚して10年も子供ができずに悩んでいました。それまで、西洋医しか信じていなかったのですが、西洋医にいくら見てもらっても、何年も子供ができず、それで漢方医に見てもらいました。漢方医は私の6ヶ所の脈を診て、体調のどこが悪いか診断し、そのうえで2年間漢方により治療してくれ、その結果、ようやく初めて妊娠しました。大変不思議なことに、妊娠4週間しかたっていないのに、6ヶ所の脈のそれぞれの強さだけを手を取ってみただけで、男の子が生まれますよといわれました。超音波診断などの機械は一切使ってないのですよ、びっくりしました。」
 

80年前の私の母の体験、六脈と胎児の男女診断の不思議な話


 
私は、これを聞いていて、私も本当にびっくりしました。70年か80年前の私の父母と同じ体験だったからです。私の父母は、戦前満州国牡丹江市で住んでいて、かかりつけの漢方医、籍俊吾太夫(太夫は医師への尊称)に、いつも見てもらっていました。牡丹江在住中に、4人の子供を妊娠して、すべて、「六脈」を診ただけで、今度は男の子、今度は女の子だと、まだセックスしてから20日くらいしかたっていないのに、言い当てられたそうです。4人ともその通りであったので、父母は東洋医学は西洋医学よりも、この点は非常に優れていると絶賛していたのを私はよく覚えています。70年も80年も前ですから、現代のように超音波診断器もなく、当時は生まれるまでお腹の子供が男の子か女の子などわからない時代の話です。この話は、50年ほど前に、私の父母から聞いたのですが、ほかの人からは今まで全く聞いたことがありませんでした。同じ話を、なんと、インドのアジャンタの地で、サンフランシスコ在住の若いLee夫人から聞くとは、全く予想だにしていませんでした。私も大変驚きました。それで私は、Lee夫人に、私の父母が昔、同様な体験をしたことを話しました。彼女も、妊娠初期でまだ超音波でもわからない時期ですよねと言って、驚いていました。そのあと、昼食をアジャンタにあるレストランで一緒に取っているとき、私は、Lee夫人から、スマホに映したもうすぐ2歳になる息子さんの動画を見せてもらいました。かわいくて仕方がない様子でした。ようやく子宝に恵まれ、Lee夫妻は本当にうれしそうでした。
 

(おわりに)


 
Lee夫人は、この脈の取り方を、英語でSix Pulsesと言っていましたが、漢方では、「六脈」と言います。戦前の満州国牡丹江市で、中国語を聞いてわからない母は、籍俊吾太夫に漢字で「六脈正常」とメモを見せられた話をよくしていました。漢方の、六脈による診断は、すごいですね。
 


*なお冒頭の写真は、アジャンタ世界遺産入口の石の案内です。
 
 
2019年3月22日随筆
2022年11月19日加筆(亡母106歳の誕生日)

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