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映画『ジュラシック・パーク』に心震えた昔の私、今の私

ティラノやスピノ、トリケラトプス
統制不可な恐竜たちが大暴れ

 太古の昔に、化石に封印された蚊から恐竜の血液を採取し、そこからDNAを抽出。そのDNAを基に現代の技術を駆使し、恐竜を蘇らせる。巨木の上で首長竜ブラキオサウルスと目が合ったり、トリケラトプスと触れ合ったり、ティラノサウルスに食べられそうになったりと、ビッグサイズの生き物が画面いっぱいに動き回る映像は、今でも私の心に刻まれています。

国立博物館で行われた「恐竜博2019」にて
撮影した展示物(2019年撮影)

 スティーブン・スピルバーグ監督作『ジュラシック・パーク』シリーズ。この1作目を私がみたのは、じつは映画館のスクリーンではなく、毎週金曜日の夜に放送していた映画番組でした。私はまだ幼く、その当時の記憶は断片的なものですが、旅行先のテレビでみたこの恐竜たちと、勇敢な学者たちの姿はよく覚えています。
 2作目以降はすべて、映画館でみました。「コンピー」と呼ばれる鳥のヒナのような可愛らしい恐竜が、獲物に向かって群がって獰猛に牙を立てる場面は戦慄を覚えましたし、3作目で登場したスピノサウルスは「ティラノサウルスを上回る」と言われ、とても興奮しました。毎回新しい恐竜が出現し、とてもワクワクしたのを今でも覚えています。
 14年ぶりとなる新シリーズ『ジュラシック・ワールド』シリーズも全部、映画館の大きなスクリーンで楽しみました。旧シリーズとはまたひと味違う、「恐竜を飼い犬のように調教する」という視点は、とても面白みを感じました。このシリーズについては新旧ともに、語り尽くしたいことが山ほどあります。

「プテラノドンは羽ばたけたのか」
知識が生む学術的な面白み

 『ジュラシック・パーク』に心揺さぶられた幼少期の頃と、『ジュラシック・ワールド』に感動した私。どちらも少年心を爆発させている私自身なのですが、大きな隔たりがあると感じています。
 その隔たりはきっと、蓄えられてきた知識が生んだものでしょう。『ジュラシック・ワールド』の公開は2015年なのですが、その時にはすでに私は社会人でした。生き物好きが講じ、生物や自然環境といった分野の大学に進学した私は、社会人になってからも生き物に関係する雑誌や書籍を読んでいました。ですので、恐竜のことについてもどんな研究がされ、どのような恐竜像が生まれているのか、ある程度の知識がありました。かなり昔に生きていた恐竜ですので、データですべてが解き明かされるとは考えていません。むしろそうした傲慢な考えは、恐竜を統制できなかったあの愚かな博士たちと同じ悲劇を有無と考えています。
 それでも、車を追いかけるほどの持久力がほんとうにティラノサウルスにあったのか、ディロフォサウルスにエリマキトカゲのようなエリがついていたのか、そうした疑問を抱ける程度には、思慮深く作中の恐竜たちを観察できるようになっていました。『ジュラシック・ワールド』シリーズでは、「プテラノドンはあんなふうに羽ばたけたのか」とか「羽毛恐竜はあんなふうに泳げたのか」などと、フィクションと現実の研究報告との狭間に思いを傾けながら、映画を楽しんでいました。

プテラノドンの展示物。
大阪自然史博物館にて撮影

 そうした学術的な面白さを味わるようになった半面、恐竜たちが放つ迫力に対し、子どもの頃のような怖気混じりの興奮は湧かなくなってしまった、と感じます。知らないからこそ没入できる感動もあって、それはじつは子どもの特権なのではないか、と最近感じるようになりました。とくに博物館に行って恐竜の展示物をみるときにそう感じます。

子どもの目線が生む
恐竜が放つ怖気混じりの迫力

 博物館に行くと、恐竜の骨格標本が展示されていることが多くあります。それは本物だったり、レプリカだったりしますが、いずれも現存した生き物を体感できる、再現度の高い資料だと私は思います。
 これらの展示物をみると、「なんだか小さいな」「物足りないな」と感じます。その違和感は私が高校生くらいからうっすらと感じていたことですが、その理由が判明した最近では、とくに意識的に感じます。子どもの頃と比べ、大人になった分、私の視線が高くなっているのです。
 子どもの視線でみると、大型肉食恐竜の口は、子どもの全身をすっぽり食べきってしまうサイズになります。もちろん、大人になった私も、ティラノサウルスからみれば小さなエサにすぎないでしょう。それでも、みる視線によって異なるサイズ感の違いは、単純に伸びた身長の長さ分だけでは収まらないでしょう。視線が低いからこそ、体感できる恐竜の迫力。大人になった私は、その感動を味わうことが難しくなりました。
 ですが、まだ、恐竜研究は途中段階です。もしかすると、ティラノサウルスを上回る大型の肉食恐竜が、これから発見されるかもしれません。いや、もしかすると、じつはそういう生物が世界のどこかに、たとえば深海の底などに生きていて、思いがけず遭遇する機会がないとはいえません。
 もしそんな生き物が発見されたら、間違いなく映画の世界でも取り上げられるでしょう。幼少の頃に映画館で抱いた、恐怖心と紙一重の感動と迫力。それをまた味わえる日は、もしかすると数日後、いや、あなたがこの記事を読み終えた数秒後かもしれません。

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