見出し画像

「スズメ」ネズミ肉も食す身近な鳥

天王寺動物園「ごはんタイム」での観察
 私が好きな天王寺動物園では「ごはんタイム・おやつタイム」というイベントがあって、飼育員さんが直接動物たちにエサを与えて、その食事姿をみることができます。新型コロナウイルス感染症対策で一時期中止にされていたようですが、現在(2024年3月)はまた再開されているようです。
 一度同園でアンデスコンドル(Vultur gryphus)への給餌をみたのですが、その近くのエリアで、ほかの猛禽類のエサ用ネズミを、スズメ(Passer montanus)がついばんでいる光景を目にしました。「スズメがネズミを食べてる!」と驚いたのですが、改めてスズメの食性を調べたところ、じつはすでにスズメのネズミ食は報告されていました。

ネズミを食べるアンデスコンドル
近くのエリアにてネズミ肉を食べるスズメ

1991年の調査では76園でスズメの肉食目撃
 その報告事例は1989年10月1日、名古屋市にある東山動物園での出来事と記録されています。コンドル(アンデスコンドルかどうかは不明)が飼育されているゲージにて、餌として与えられた鶏肉を、2羽のスズメが食べていたそうです。報告はこの1園だけではありません。1991年に日本動物園水族館協会加盟の動物園86園で、スズメが肉を食べているところを目撃したことがあるかどうか、についてアンケート調査を行ったところ、76園にて「スズメの肉食を観察した」という回答が得られたそうです。

 私がみた天王寺動物園でのスズメの肉食も、じつは同園では1991年からその観察事例が報告されていました。報告によると、スズメは鶏肉や馬肉も食べるとのことで、鶏肉についてはとくに脂身をよく食べたそうです。
 サイエンスライターである ジェニファー・アッカーマン氏の著書によると、イエスズメ(Passer domesticus)の食性についてクモやトカゲ、そしてハツカネズミの子どもも食べると記されています。イエスズメは日本でみられるスズメと近縁で、スズメと同様にヨーロッパからアジアまで広く分布します。スズメは種子食・昆虫食という印象が強かったのですが、こうした報告や世界に分布するスズメの仲間の食性からみても、スズメには肉を食べる習性がもともとあるのかもしれません。

肉食系スズメにみられる黒色化
 さらに天王寺動物園で肉食するスズメは、顕著な黒色化も認められる、という報告まであります。確かに私がみた肉を食べるスズメも、日頃目にするスズメよりやや黒みがかっているような気がします。報告によると黒色化した親スズメから給餌を受けるヒナは、黒色化が認められなかったそうなので、遺伝ではないとされています。肉をついばむ際に、くちばしに脂が付着し、そのくちばしで毛づくろいするため、体に脂がついて黒っぽくなるという説が記されています。
 日常生活で風景のひとつとして馴染んでいるスズメですが、よく観察してみると黒っぽいスズメがみつかるかもしれません。そのスズメは、どこかで肉を食べた個体なのでしょうか。それともまた違った、まだ報告されていない別の事情で黒くなったのでしょうか。

日常的にみるスズメ
黒色化が指摘される肉食のスズメ

参考文献
・ジェニファー・アッカーマン(著)鍛原多惠子(訳)『鳥! 驚異の知能』講談社 2019年第4刷
・中村一恵・長瀬健二郎「肉食するスズメに関する調査報告」『Bulletin of Kanagawa Prefectura Museum(Nat.Sci),No.21』1992年
・三上修『スズメ つかず・はなれず・二千年』岩波書店 2013年

サポートいただきましたら、今後の活動費用に使いたいと思っています! 素敵な記事をたくさん書いていきたいです!!