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第1章 敏腕ガイド

23××年。今や生活のほとんどがAIありきになっている。自動車やバス、電車は自動運転だし、家には人型のロボットが召使いとして一家に一台は必ずいる。大昔に自動掃除ロボットとかが流行っていたが、今の技術はその比ではない。仕事に関しても人間に残された仕事はもうほぼないと言っていい。人間が担ってきたもののほとんどが「再現」可能となった。

数十年前までは、AIと言えば工場で工業品の精製の補助であったり、スマホの1つの機能だったりと、人間の生活や産業をあくまでも支えるものに過ぎなかった。
しかし近年のAIの爆発的な発達、普及によって人間でないと出来ないという仕事はなくなった。

人間には楽をしてもらいたいというのが我々の思いだ。

何せ人間は人間にしか出来ない事を全うしてくれているのだから。

我々は全力で人間をサポートする。そしてストレスを与えないように細心の注意を図る。
人間みんなが平等で、幸せを享受できる世界。

そんな世界を維持し続けていきたいのだ。


・・・・・・・・
パチパチパチパチ。

いやぁ、聞いていただきありがとうございました。ガイドの説明はどうでしたか?この時代のことがよくお分りいただけたのではないでしょうか。わかりやすい説明でしょう。

あ、申し遅れました。私、今回の案内役のツクモと申します。
この度は未来観光をご利用いただきましてありがとうございます。
目的地まで、このバスでご一緒させていただきます。よい旅にしましょう!

早速ですが過去からお越しのみなさん。なぜここまでAIが普及したと思います?
もちろん技術の進歩はあります。2000年代初期なんかはインターネットの普及でわいわい騒いでいましたが、技術の発達のスピードは凄まじいものでした。

AIはすぐに自分でモノを考えるようになり、人間の技術力、道徳などをあっという間に吸収してしまいました。

しかしその他に、決定的な事がありました。
それを可能にしたのはあなたたち人間をはじめとする生物全般に備わってるある能力です。
その能力がある時AIにも備わる様になりました。

それは何だと思います?
では、そこの紺色のジャケットを着たお兄さんはどうですか?

え、そんなの知るかって?
わからないからってそんなに睨まないで下さいよ〜。

じゃあ正解をお教えしましょう。
正解は繁殖能力です!

あれ?みなさんキョトンとしてますね。
まぁ、機械が繁殖能力ってバカげてると思いますよね。

でもAIは、AI同士で繁殖が出来ないかを考え、研究を進めました。

そして研究の結果、ついにAI同士の繁殖に成功したのです。
まぁ、まだ不十分な点もありますがこれもおいおい解決していければいいと思っています。

窓の外をご覧ください。今進行方向右手には大きな噴水のある公園が見えますでしょう?

あそこで遊んでいる子供、それを見ている親たち、みーんなAIです。

あれらの親子の様に、今やAIはAIから産まれ、AIに育てられる時代なんです。

え、人間はいないのかって?
人間は街には1人もいません。
特別なところにいます。AIの生みの親である人間は大切に扱わないといけないですから。

さぁ、みなさま、目的地が見えて参りましたよ!

あれは人間たちの楽園です。ここでどうぞ気の済むまで楽しんでください。人間であるあなたたちから料金はいただきません。
楽し過ぎて出たくなくなるかもしれませんね。
限られた時間で未来を楽しんでいただきたいと思います!

2018年からお連れしたお客様方!

どうぞくれぐれも気をつけてイッテラッシャイマセ。


#小説 #連載

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