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男性の育児について、双子パパたちに聞いてみた

はじめに

男性の育休取得など、男性の育児についてメディアでも目にすることが多くなってきました。また、双子などの多胎児家庭への支援についても徐々に増えてきています。

一方、当事者の実体はなかなか知られていないところもあるのではないでしょうか。例えば、行政や社会としての多胎児支援は最近増えつつありますが、利用者視点ではどのようなことが課題なのか、夫婦で育児と仕事を両立させていくためにどのような困りごとがあるのか、など..

ということで、今回は双子を育てられているパパたちに話を聞いてみました!ちなみに、インタビュアーも双子パパです。


<今回インタビューをさせていただいた皆さま>
双子のパパYuichiさん(以下、Yuichiさん):6歳の双子と4歳の女の子のパパ。フリーランスを経て会社員。双子パパコミュニティも運営。
中井さん:0歳の双子パパ。会社員を経て、現在フリーランスの心理カウンセラー。地域の多胎児サークルの運営にもかかわる。
工藤さん:小学生の2人と5歳の双子、男の子4人のパパ。NPO法人を経営。


各家庭での育児の状況は?

ベビーカーにのる双子


- 今日はよろしくお願いします!最初に皆さんの状況を簡単に伺えますか?

中井さん:産後はパパ休暇を2ヵ月取りました。もともと正社員で働いていましたが、職場復帰したものの正社員と兼業という形の働き方に無理が出てきて。産まれたときは体が小さく、病院通いが多かったことなどもあり、働き方をコントロールできるようにフリーランスになりました。

Yuichiさん:子どもが産まれたときはフリーランスで、今は会社員をしています。うちも産まれたときは双子は小さく、NICUに入っていました。フリーランスだと自分の時間は作れるので育児には参加しやすかったのですが、生活面とのバランスも考えて会社員になることにしました。

工藤さん:NPO法人を経営しています。現状は妻から見ると、育児は5分5分で取り組んでいると言われます。朝の送りや迎えで役割分担はしていますが、夕飯づくりや習い事は半々です。


- 皆さんは、双子が産まれることへ不安はありましたか?

中井さん:双子というのは2回目の検診で分かったのですが、驚きすぎて記憶があまりありません笑。子どもが好きなので育児は前向き。もともと育休もとるつもりでしたが、妻が双子家系で自分は一人っ子。来たか!という感じでしたが、自分にはイメージがわかないところもあり、双子が産まれたらどうなってしまうんだろう?という気持ちでした。

Yuichiさん:仕事帰りの電車の中で連絡がきたのですが、僕も記憶がありません笑。お金は一番気になりましたね。。どうなるんだろうという不安が多かったです。産まれてからは記憶にないくらい怒涛の日々で、半年くらいはいっぱいいっぱい。働けなければ収入も減るし、すごく大変でした。

工藤さん:既に二人子どもがいましたが、双子の妊娠中に検診に行ったら今日から入院と言われて。突然、上の二人の子供のシングルファーザー状態になりました。その前から急に管理入院になることへの不安はあったので、早めに仕事のスケジュールは調整していました。

また、産後、特に双子だと母体へのダメージが大きく回復まで時間がかかります。妻の時間を確保するためにも、いかに一人で4人見られる状態をつくるか、が課題でした。双子バギーを会議中も置いておくとか、ケージを職場につくるとか、友人に頼んで見てもらうとか。いろいろ工夫していました。

パートナーや周囲との関わり方は?

三世代家族

- いろいろと大変なことも多いと思いますが、育児をしていて夫婦でけんかになりやすいことって何ですか?

Yuichiさん:けんかはしないですね。自分の中で思っていることについて、「分かってよ」というのは無理があると思います。なので、ちゃんと言葉にする。お互いに疲れていたり睡眠不足だと大変ですが、そういうのは外部の要因があるから自分たちのせいではない、と割り切っています。

工藤さん:けんかはしたことがないです。お互い昔から知っているので、良い意味であきらめられていることもあり、前向きに割り切りができているのかも笑。言いづらいから言わない、というのはやめようというのを言われますね。なんとなく相手が大変になるから言いづらいな、、と思って予定が入ることなどを直前まで言わないのは良くないよね、と。今は言うことが正義という前提があるので、言いやすいです。

中井さん:けんかはないですね。すれ違いがあっても対話できています。議論になるのは例えば、保育園の選び方とかお互いのこだわりが出る部分など。


- 皆さん夫婦でうまくコミュニケーション取られているんですね。とはいえ、育児がしんどいな、、と思うときはどうやって発散してますか?

Yuichiさん:今はできていないですが、双子パパのサロンでオフ会など。子どもが1, 2歳くらいのときです。その場でお互いに話したりしていました。

工藤さん:周囲のNPO関係で同じような環境の人と話したりします。仕事ができないこともストレスなので、平日寝かしつけてもらって20時過ぎにまた仕事を始める。ちゃんと働ける状態をつくるのが一番ストレスがないなと思います。

中井さん:しんどさは、夫婦でお互いに話しますね。Twitterとかでも発散したりします笑


- ちなみに、夫婦だけでは手が足りないなど、育児で困ったときは誰に助けてもらうことが多いですか?

中井さん:妻の実家に頼ることが多いです。一方、コロナもあり、社会資源が全然使えないのは困るところ。そもそも、社会資源側が閉まっているので。プレパパママ教室も医療機関のものはなくて、奥さんだけ個別指導をうけたり。

不安な中で情報収集していましたが、ネット上の情報など文字だけではわからないことが多かったです。なので、気になったことは関係がある保健師さんに相談できたのは良かったです。役所では、多胎向け教室もありましたが、小児科に双子ベビーカーが入れるかというような具体的な情報だとサークルの方が情報を得やすかったです。

工藤さん:妻の実家が近いので、大人の目が複数あった方が良い、ということについては何とかなっています。定期的にお願いして見てもらえるのは助かります。親族、友達も頼りながら大人の目をできるだけ1人にしないようにしています。

Yuichiさん:ばたばたしていて誰にも頼れずしんどかったです。3人目の子どもが産まれるとき、奥さんが1ヵ月管理入院して。双子が2歳になる前でしたが、1.5ヵ月くらいワンオペでした。その時は、やってやるぞ!という気持ちで乗り切りました笑。この経験は自信にはなったものの、頼れるところがあるなら頼ったほうがよいな、、と思います。

やはり、行政やサークルに頼れると良いのかなと。共通認識の持てる人を知っているだけでも違う。産まれる前に情報収集をどれだけできるかは大事なのかなと思います。

あと、#8000(筆者注:子ども医療電話相談事業のこと。受付時間は都道府県により異なります)への電話は受付時間が限られていたりしますが、保険で24時間健康相談ができる電話窓口があり、それは便利でした。

育児の中で、行政は頼りになる?

書類イメージ_出生届

- 産前から今まで、行政の支援策で助けられたこと、役に立ったことはありますか?

Yuichiさん:ほぼほぼ使っていないです。情報自体が入ってきていないというのが大きいかな。区のHPを見ても使い勝手が悪いし、ページ遷移がよくわからない。結局見つけられないので、電話して聞かなきゃいけない。そうすると、利用するモチベーション自体がなくなり、諦めてしまいました。

中井さん:公的なサービスは全然利用していないですね。身近にサポートがあるというのもありますが、申込が窓口でなくてはいけないものの場合、双子を連れて出かけるのは難しくて行けない、というのもあります。

自分は福祉系の仕事をしていて知識はありましたが、何も情報を持っていない人もたくさんいるのではないかと思います。やはりHPを見ても分かりづらいし、地域の広報誌も読まない人が多いと思います。

工藤さん:行政で働いている友達に不満を聞いてもらいます笑。子育てを支援してくれる施策を作ってくれる人に対等に話せるというのは大きいですね。パブコメを双子関連で書いたり。ちゃんと聞いてもらった感じになります。

行政の支援で役に立ったものだと、児童手当とか。先ほど出ていた#8000は非常に役に立ちました。病院に連れていくのに迷ったとき、双子だと連れていくことすら大変な中で、#8000の存在は安心につながりました。この瞬間にどうしたらよいかの判断に迷ったとき、アドバイスがもらえるだけでその後の動き方が大きく変わるので良いなと。


- 利便性高められるように頑張ります。。行政に限らず、社会としてこういう支援が欲しいな、こういうとき困るな、と思うことはありますか?

中井さん:地元のサークルで助けあえると良いなと思います。細かい話ですが、3ヵ月検診でチケットがもらえて、子育て支援センターにいくと絵本がもらえるというのがあります。ただ、多胎家庭だと外出自体が大変なので行けなかったり。

先輩パパママが手が空いているときにサポートしてくれて、付き添いなど助け合えるようにしていくとか。みんな双子の親だと分かっているので、ピアサポートしやすいですよね。ファミリーサポートはあるんですが、私の周りではみんな使っていないなと思います。


Yuichiさん:助けてほしいと思って動こうとしても家から出られないです。ちょっと外に出るのにも勇気がいる。外に出るまでのハードルが高いんです。調べようと思っても自分が求める情報が見つからないし、欲しい情報がすぐ見つかるネットサービスがあると嬉しいですね。

こういう情報発信はアナログでやるのも大事かも。買い物や予防接種のように必ず行くところとか。そういう目に触れるところに情報があると嬉しいです。

やはり、自分で探して申請してね、というのはしんどいです。サービスがあるだけでなく、それがあることを知るための手段はいろいろあると良いなと思います。

工藤さん:双子でいうと、子育て機材のリースがあると嬉しいです。双子だと期間限定なのに割高だったり、二つ必要なものはお金が倍かかるので。バギー、双子自転車、チャイルドシートなど。双子の会でゆずりあいの機会などもありますが、面と向かってもらった後でやはり合わなかったら大変だし、壊れたら大変。。

それ以外の課題だと、書類を全部2枚書くのは面倒なので、何とかしてほしいです。そもそも申請は、紙の申請ではなく電子化してほしいし、紙でやるなら分かっている情報は印字しておいてほしいなと。地図を手書きするのは大変なので、Google Mapを印刷して貼ったりします笑。

あとは、親1人に対して子ども1人がついていなくてはいけない遊び場などに、一人では連れていけないというのが困るところです。ディズニーランドではサポートしてくれたし、マドレボニータではサポーターがついてくれたのはありがたかったですね。


男性の育児参加に向けた課題とは?

家族

- 最近は男性の育児参加という言葉を聞くことが増えましたが、その阻害要因になっているものがあるとしたら何だと思いますか?

中井さん:仕事では企業のメンタルヘルス対策をしていますが、具体的にはルールを就業規則にいれたり、相談窓口をつくったりという話があります。その中で、両立支援というものがあります。病気の治療と仕事の両立、家庭と仕事の両立支援などです。育児についても企業で仕事との両立に向けた支援ができると良いですよね。

他には、文化的なもの、雰囲気の部分があると思います。男性育休の前例がないから休めないという空気の企業も多いです。育児する男性も企業側もお互い不安にならない、働きやすい仕組み作りが必要ではないかと思います。


Yuichiさん:双子はやらないと家庭がまわらない、というところからスタートするので、家事育児とかイクメンとかいっている場合ではないというのはあります。みんな楽しく育児したら良いじゃん、というのは自分の思いとして持っていますね。バランスを取るために会社でも休みづらいが休む、とか。自分たちから変えていかなくてはいけないと思います。

男性の育児参加は、女性目線からすると物足りないことも多いかもしれませんが、バサッと切り捨てないで笑。育児でスキルアップしていくというような形で奮い立たせていくのがよいのではないかと思ったりはします。

工藤さん:マインドと空気とルールが必要ではないかと思います。マインドというのは例えば、育休を取りたいけど取れないと言っている人がいるとして、その人は本当にとりたいと思っているのか?どのレベルで育児に参加したいかは人によって違うかもしれません。空気というのは育休取得を阻害する会社、親族など周囲の空気です。あとはルール。法律でやるべきなのかというのはありますが、ルールがあることで進むという部分はあります。なので、ルールは大事なのかなと。

復職後に向けては、子育ての経験を仕事にフィードバックしやすいところにうまく配置できると良いのではないでしょうか。時短など時間的な制約と本人の経験としてプラスになることをうまく嚙み合わせていき、組織の成長にもどうつながっていけるか。例えば、時間的に融通がききやすいバックオフィスに一旦異動してもらうと、過去の経験を活かしながら新しい取組みができるということもあると思います。

あとは、育休をとると給与が減るというのは良くないのではないかと思います。経営者はもらえないですし。また、一般的にですが、妻の方こそ頑張っているのに、男性の方がちょっと(育児を)やるとほめられやすいというのはありますよね。まず妻をほめてもらった方が嬉しいです。

- いろいろとありがとうございました!最後に皆さんから一言ずつお願いします・・!

中井さん:自分が育児に関わっていくとか、育休を取るとか経験してきていますが、自分自身が媒体となって今後伝えていけると良いなと思います。パパという共通性を活かしながら情報提供ができていければと。

Yuichiさん:双子パパは優しい人が多いです。ただ、過去の自分と同じような気持ちの人が毎年出てくる中で、同じような苦しい思いはしてほしくない。なるべくできることは楽をした方が良いと思いますし、甘えられるなら甘えたほうが良くて、そこに罪悪感を感じる必要は無いと思います。

子どもたちが生きているだけで十分、というくらいハードルを下げてどうすれば楽になるかを考えてもらえたらと。同じ子育ての仲間として、困っている方がいたら話を聞いたりできたらと思います。

工藤さん:双子育児は辛い面がフィーチャーされがちですが、双子がうまれてきて良かったことは、双子という生態をずっと目の前で見られることです。双子が双子として会話しているところをずっと見ていける。それはすごく特別であり幸せなことだなと思います。


おわりに

双子育児 x 男性の育児というテーマで今回3人のパパにお話を伺いました。辛い側面がフィーチャーされることも多い多胎育児ですが、皆さんパートナーや周囲の方と一緒に工夫しながら取り組まれています。

それでも、働き方自体を見直す必要があったり、支援を受ける場にたどりつくこと自体が難しかったりと、多胎家庭ならではの課題はいろいろとあると改めて感じました。

行政サービスの利便性や支援の充実については、行政のデジタル化に関わっている身としては耳の痛い内容が多かったですが、双子の父という当事者として考えると、たしかにまだまだと感じることは多いです。自分ができることに、引き続き取り組んでいきたいと思います。

そして、男性の育児参加を後押ししていくということについては、工藤さんがおっしゃっていたマインド、空気、ルールという要素が必要という言葉は印象的でした。それぞれの要素が今後変わっていきながら、よりその家庭らしい育児ができるような環境ができていくと良いな、と思います。

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