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中村仲蔵と報道ステーション

3月最後の金曜日、中野サンプラザホールで六代目神田伯山とクリープハイプの共演。

音楽と講談の異種格闘技戦に、6代目神田伯山の講談師としてのスゴさをみた。

緊急事態宣言が明け、主催する方も参加する方も久しぶりのライブということもあってか、開演15分前の18時30分になっても入場列は伸びるばかりで定刻には始まる気配は無し。

無事に入場を済ませ、チケットと座席表を照らし合わせて自席を探すことにすら、懐かしさを感じていると、約10分押しで神田伯山と尾崎世界観の2人がステージに登場。

「みなさんイライラしてますね!でも、僕らの持ち時間が短くなるわけではないので安心していただいて。責任を取るのは主催者なので。」とテレビで見る伯山そのままのコメントで、会場の空気を和らげていた。

「Twitterで悪口を書いてくる人はだいたいコンビニスイーツが当たるツイートか前澤社長のお金配りをリツイートしてる」話など、バラエティ番組さながらのトークを展開する2人。さすが今やテレビでも活躍する両者の会話はそれだけで面白い。しかし、時折2人に関する固有名詞を登場させ、笑いの量でこの日のお客さんが誰目当てなのか、お互いにとっての一見さんがどれくらいいるのか探っているようにも感じられた。

一度ステージからはけた伯山が先攻を務める。冒頭のトークで「初めてのお客さんにもわかりやすい話」を持ってきたという伯山がかけたのは中村仲蔵。枕はなく、いきなり台詞から始まる仲蔵ひ呼応するように張り詰める会場の雰囲気。講談を一気に現代の文化へと復活させた令和の講談師としてわかりやすい話をもってくるの優しさとテレビの姿を正面から否定するような緊張感が伯山の語りには混在していた。まるで我々がテレビで知ってる姿は本物ではないと言われているかのよう。

持ち時間目一杯、1時間ほどかけてゆっくり淡々と進行するストーリー。
ちらほら寝ているお客さんと伯山が扇子を叩く音が寄席にいる気分にさせる。終盤にかけて、たたみかける展開に伯山の凄さを見た。

「つまらなかったらおもしろくすればいい。」

「工夫しないやつが工夫するやつを笑う。」

前日炎上した報道ステーションのCMのことを言っているのだろうか。出る杭が打たれやすい日本社会へのメッセージに聞こえる。

「歳をとると、昔はよかった。先代はよかったとばかりに口にしてしまうでも」

「芝居は今だ。今、目の前でやってる芝居が面白いか面白くないかだ。」

今日の伯山の講談は、YouTubeやNetflixの収録物になれすぎた我々には贅沢すぎるリハビリだったかもしれない。

後攻のクリープハイプ。
「仲蔵に血がなかったように僕には普通の声がなかった」と2回目のMC。刺さるセリフだが、セットがすでに折り返していただけに、既に年配の伯山ファンが何人か返っていくのを目にした。もっと早く聴きたいセリフだったのが悔やまれる。


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