チュニジア戦雑記 ~露呈した攻略法~

少し間が空いてしまいましたが、チュニジア戦の雑記です。
みなさんご存じのように0-3というスコアに終わりましたが
この試合は文字通りの完敗であったと思います。

1失点目、2失点目とミスが続いたために
メディアも「日本のミスによって~」と報じられるケースが多く見られましたが
このミスは決して偶発的ではなく
起こされるべきして起きたミスであると考えています。
それくらいチュニジアは明確な狙いを持って試合に臨んできていました。

今回は、おそらくチュニジアが考えていたであろうことを想像しながら
「こうしたら日本に勝てる」
と露呈してしまった攻略法について考えます。

チュニジアが示した"日本の形"

チュニジアが考えていたと想定されること

①CBから縦パスが入ることはほとんどなく、運んでくることもない
②インサイドハーフを取りどころとして、攻撃参加させない
③遠藤航へのサポートは少なく、両脇が空きやすい

①CBから縦パスが入ることはほとんどなく、運んでくることもない

チュニジアのプレスは、両CBがホルダーである際には無理に追わず
遠藤と両インサイドハーフを切るような
4-1-4-1という形で守備を行っていました。

ブラジル戦でゴールキックからのビルドアップを課題に上げたように
両CBはウイングへのロングボールこそ入れるものの
鋭いグラウンダーの縦パスはほとんど見られず
パスコースを探しながら最終的には近いサイドのSBに渡す
というケースが多いことを把握していたのだと思います。

この日CBの一角であった板倉はボランチもできるという役割上
スペースを見つけて持ち上がる場面が何度かは確認できましたが
吉田の場合は持ち上がるようなプレーはほとんどないため
"CBには持たせておいても脅威はない"
という判断になっていたと見ています。

②インサイドハーフを取りどころとして、攻撃参加させない

①と繋がる話になりますが
チュニジアはウイング2枚とインサイドハーフ2枚の4枚で
日本のインサイドハーフ(前半でいうと原口・鎌田)の前に
カーテンを敷くかのごとくブラインドを作り
最終ラインからインサイドハーフ2枚を隠すような形となっていました。

これはCBからのパスコースを同サイドのSBに限定することと
その同サイドのSBに出た後も、インサイドハーフと絡みづらい状況を
作り出すためだったのではと考えています。

4枚のカーテンが崩れる形となっていたとしても
チュニジアの中盤3枚は、日本の両インサイドハーフに対して
マンマークに近い形で必ず誰かをそばにつける形で守備をしていました。

これはインサイドハーフが下がりにボールをもらいに来た際が顕著で
スペースもなく、ボールが入ってこないことから
鎌田が頻繁にボランチの列まで下りてくるケースがありましたが
この際もいずれかのチュニジアのインサイドハーフが付いてくる動きを見せていました。

それだけ、鎌田・原口には前を向かせてプレーさせたくなかったという
意思にも見えますし、捉え方を変えると"ここを塞いでおけば大丈夫"という思惑も覗かせていました。

ブラジル戦では、最前線4枚のハイプレスがカーテンの役割を持ち
同じようにインサイドハーフを取りどころとしてボールを奪われていましたが
チュニジアとしてはこれをプレスのラインをもう一列、二列後ろにした形で
実行したのではないでしょうか。
選手の質や90分間全体を考えて、自分たちが実行可能な範囲の形に落とし込んだものと見ています。

③遠藤航へのサポートは少なく、両脇が空きやすい

ここまでインサイドハーフに着目していましたが
ボランチの遠藤に関しては、トランジションの際のポイントとされていたと思います。

遠藤はボランチの位置に張り付いており
インサイドハーフもサポートに寄って来るケースは少なく
孤立する場面が多いです。

そのため、②の狙いでインサイドハーフへのボールを中盤で奪うことができれば
そのまま遠藤の両脇に対してチュニジアのインサイドハーフが突っ込み
押し込める陣形を狙っていたのだと考えます。

ただし後半、田中碧が入ってからボール保持時には
ポジションを入れ替えて、遠藤自身が前進する場面も出てきたため
今後注目したい動きではあります。

決めるのか、決めないのか

チュニジア目線の日本のウィークポイントを考えてきましたが
もちろん日本としても収穫が無かったわけではありません。

とりわけ、伊藤洋輝の大頭は一番大きいでしょう。
左利きの左サイドバックという点においても
チュニジアが敷いてきた①~③をかいくぐるように
インサイドハーフを飛ばしてライン裏を付くようなパスを見せたり
(前半冒頭の南野へのパス2本)
駆け上がりのタイミング、クロスの質など
個人的には遠藤の次に確定ポジションなのではと思うくらいの
プレーだったかと思います。

とはいえ、やはり一番の課題はメンバーではなく
日本の戦い方そのものです。

チュニジアは試合後の会見でも
「日本のことは研究してきた。
 弱点があるとすれば守備。
 ディフェンスは難しい状況に置かれるとミスをするということ。」
と、言っていたように日本に対する策を練ったうえで
その狙い通りの試合運びになったことを伝えていました。

では、日本はどうだったのでしょうか?
どのくらいチュニジアを研究し、対策を練ったのでしょうか?

試合後、三苫は
「もっと決めごとをつくらないといけない」
とコメントを残しましたが、裏をかけば何もなかったということです。

ガーナ戦で敵将から評価された前線からのプレスも
「試合の中で、久保が指示を出して行った」と選手たちから出て来ています。

ここまで弱点を露呈し、親善試合もわずか2試合しか残されていない中
チームとしてどこまでを決めて、どこからは決めずというラインを明確にし
決めたことは貫き通して、本戦を走り切ってほしいなと思います。

一方で現代サッカーにおける分析が占めるウェイトの重さにも
気づいてほしいなと願うばかりです。

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