【映画感想】アクアマン

CGIによる表現には目を見張る昨今です。

昔だったら海中にいるシーンなんてのは、実際に役者が水に潜って演技するのを撮影したもんですが、今ではグリーンバックの前で演技しても、CGIによってちゃんと水中にいるように見える処理をほどこすことができます。

ウィレム・デフォー。この60歳を超えた俳優になぜ主人公の武術指南役(役名: バルコ)を配役したのか。それは彼が他ならぬ「魚顔」だからだな、とこの映画を観つつ確信したのです。

本来ならばもっと若い俳優でもよかったはずです。30-40代とかでちゃんと武術などの嗜みもある俳優はハリウッドにたくさんいるでしょう。しかし配役はデフォー。若い頃のアクアマン(アーサー)に稽古をつける若き日の配役も、成長し大人になってから出会うのもデフォー。ひょっとしたら演舞のシーンはアクション俳優さんがやっていて、顔だけすげ替えたのかな? そう勘ぐりますが、やはりここは全体を通して魚顔のデフォーで貫かなくてはならない。

見よこの体にみなぎるドコサヘキサエン酸(DHA)によるパワーを、とでも言いたげに、デフォーは槍をブンブン振り回します。

その昔「コクーン」という映画がありました。宇宙人パワーによりじいさんばあさんが若返る、というあらすじで、飛び込み台からプールにジャンプしていました。元気になったわい、という設定の裏では、老いた人間がいつ心臓麻痺を起こしてもおかしくないというリスクを背負いながら、体を張った演技をしていたのです。「もうやめて!! これ以上デフォーに無理な動きさせたら死んじゃう!!」そんな心配をしなくていいのも、CGIの利点だと思います。

「アクアマン」のストーリー自体は王家の血を引く主人公がなんやかんやあって王座に就く、という、「マイティ・ソー」みたいな話です。とりたてて目新しいものはありません。

しかし、このデフォーの魚顔だけは別格です。映画を観ているうち、デフォーが出るたびに、「観終わったら尾頭付きの魚の塩焼きが食べたいな」と食欲がぐんぐん増していきます。切り身ではいけません、一尾まるっとなきゃいけない。魚のことを考えながら、「デフォーはエラ取り除くの簡単そうな面構えをしているな」とか、アクアマンを見つめるデフォーを見て、「この目のところが一番栄養があって美味いんだよな」とかついつい考えてしまい、もう本編の内容よりもデフォーの表情やら立ち振る舞いやらが海産物として気になっていきます。

そしてそんなことをつらつらと書いているわたしのおなかはいよいよペコペコで、しかし魚はさばけないものですからこれから外へ食べに行こうと思います。のれんをくぐったら作務衣を着て刺身包丁を上手に引いているデフォーが笑顔で「いらっしゃい!! 今日はメバチのいいやつが入ったよ!!」と迎えてくれる小料理屋があったらどんなによいことでしょう。

「アクアマン」お魚嫌いのお子様にもぜひお薦めください。

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