【映画感想】月とキャベツ

不思議ちゃんが出たぞー!! 逃げて―ッ!!
「月とキャベツ」はスランプに陥った男性ミュージシャンが再度曲を書くようになるまでの話で、そのきっかけとなるのが彼のファンだと告げる不思議少女との交流である。
もうその、不思議っぷりがむずがゆくてむずがゆくて。
途中から、彼は彼女にいて欲しいという想いを表に出し、そこからの描写は良い雰囲気のところもあるのだが、もうこの馴れ初めが個人的に辛くてつらくて。
「とっとと警察呼んで引き取ってもらいなさい!!」
って言わずにはおれないほど。これ主人公が女性でファン役が男性だったら絶対成立しない設定ですよ。
偶然出会ったミュージシャンとそのファン、乗ってきたバスに財布を入れたバッグを忘れてしまったというファンにミュージシャンは壱万円札を渡し、返さなくていいからこの金で帰れと言う。その晩何故かミュージシャンの住む家を訪れたファンは金を返しに来た、今日はここで寝ると言い、木の下に野宿しようとする。見かねたミュージシャンは「今晩だけだぞ」とソファーを貸してファンを一晩泊める。
怖いよー!! 「ミザリー」みたいな展開になったらどうすんだよおぉ!! わたしの気に入るように曲を書けぃーッ!! ガツーン!! みたいなさ。
ファンだというヒロイン役の彼女がそこそこ可愛いからいいようなもんの、これがブスであってごらんなさい、「北斗の拳」のケンシロウなら「やはり豚か……豚は豚殺場へ行け!!」って即座に秘孔突いて殺すと思うんですよ*注1。こっちは初対面だが相手はゼロ距離射程、ってのはファンなら仕方がないのかもしれないけれど、受け入れ方に無理がありすぎて観るのを一旦止めたくなった。
しかしわたしは必死にわたしにこの映画を視聴し続けるため、言い聞かせる言葉を考えていたのです。そこでハッ、と気が付いた。これは山崎まさよしのファンのための恋愛ムービーなんだと。観客はそのファン役に自己を投影し、
「わたしもこんな風にまさよしさんと恋仲になりたい、というかあれはわたしなんだけれど……」
と、もう観てるうちに体は火照るわまんこは濡れるわで仕方ない作品にすることが意図ではないのかと、なるほどそれなら仕方がないと、納得したのです。そしたらあんまり気にならなくなった。
そして主人公は何となく筆を取る気になり、ピアノをポロポロ弾いて新曲を作り始めます。彼女はそれを見守るようにバレエダンスをはじめます……
って邪魔だろ!! 作曲に集中できねぇよ!!
しかし劇中では何故かこれが主人公のインスピレーションをバンバン喚起させることになり、おおよそ曲は出来上がるのです。そんな訳ねぇだろ、と何回脳裏に浮かんだことでしょう。しかしこれでいいのです。観客はヒロインに感情移入しているのです。「まさよしの触媒となるわたし……(じゅんッ)」という気でいるのです。

そんなヒロインは、実は幽霊だったのでした。

なんでだよおうぅぅ!!!!!! いきなりホラー展開止めろよ!! 違う意味で心臓に悪い!! そういや思わせぶりな伏線的シーンあったけど、あれで分かる訳ねぇだろ!! どう考えても「あーこれ難病ものみたいなラストだったらヤダなー」程度にしか思えなかったよ!!
そしてヒロインは曲の完成と共に成仏します。彼女を忘れられない主人公は、その想いを歌詞に込めて歌うのです……

するとその想いが届いたのか、彼女は再び主人公の前に現れるのでした。

そんなドンデン返しいらねぇよおおぉぉ!!!!! スッパリ終われやあぁぁ!!!!
ことほど左様に脚本自体は目も当てられない出来のものでしたが、ところどころに出てくる山崎まさよしの演奏シーンはどれも素晴らしく良いです。発声練習ひとつで「あぁ、この主人公は才能あふれるミュージシャンなんだ」という事が伝わってきます。それは冒頭に出てくる「月明かりに照らされて」の架空PVが流れた時点でわかるのですが、ダルい展開のところどころでハッとされられる彼の歌声こそが、この映画の推進力にもなっていたと思います。
また舞台となった群馬県中之条町のロケーションも美しく、実際には群馬県の田舎にある分校を主人公の住まいとした(原作はアパートの一室という設定だったらしい)アイデァも良かったです。タイトルの「月とキャベツ」も、監督がこの映画のロケハン時に現場の風景を観て浮かんできたそうです。実際にはキャベツも月も主人公が再起する直接の理由にはなってなくて「なんだったんだ」と思いました。

山崎まさよしファンなら必見、お薦め。それ以外の人には退屈極まりない映画ですので、歌が聴きたい方はライブDVDを、美しい自然が観たい方は環境ビデオを借りてみると良いでしょう。
あと主人公のマネージャー役としてダンカンが出ているのですが、彼が音楽に関わっている人だという事を伝えるためだけにスタジオでバンドがレコーディングしているところを1カットだけ挟んでいて、「無駄に手がかかってる!!」と思いました。
最後に一言、
「白い薄着で雨に濡れたんだから、透け乳首くらいはサービスしろ」
さようなら。

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