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SNSが検索手段になる理由

こんにちは。

マーケティング視点で読解力を高めるノートでは、小さくてもファンを増やす仕組みと仕掛けがわかると題し、デジタルネイティブ時代の情報発信を主たるテーマとし、中小企業や個人事業主がオンラインチャネルを活用する際の前提となる、情報接触態様の変化を読み解き、IDやSNS、そして口コミを科学して理解するノートをお届けしてまいります。

第1章 デジタルネイティブ時代の情報接触
(3)SNSが検索手段になる理由

第2章 知らぬままに置いてけぼりになるリスク
第3章 生活者理解のために必要ないくつかのこと
第4書 口コミが生まれる、広がる、その理由を科学
第5章 ファンを作るために必要なことはひとつだけ
第6章 オリジナリティとどこにもないストーリー
第7章 ファンを増やす、共感を得る仕組みと仕掛け



1.スマホとSNSの利用時間


前節では、デジタルネイティブ世代が主たる情報検索手段としてSNSを利用していることや、目的に応じ、TwitterやInstagramを使い分けている点、「#」ハッシュタグを利用して情報を手繰り寄せている様を、ご紹介いたしました。

今節では、第1章デジタルネテイィブ時代の情報接触、のまとめとして、SNSが検索手段となる背景や理由を読み解いてまいりたいと思います。

まず、10代~20代の女性の情報接触態様を、スマホやSNSの利用時間に着目して確認してみたいと思います。2つの調査結果を拝見し、簡単にまとめましたので、以下の図表をご確認ください。

接触時間1

1つ目の調査は、ネット行動分析サービスを提供する株式会社ヴァリューズが行った「SNS女子のユーザープロファイル調査」で、SNSの中でも、Twitterをよく利用している「Twitter女子」の時間の使い方を尋ねたものです。

インターネット(スマホ)を使い、日々、どれくらいの時間情報に触れているか(見聞きしているか)という質問に対し、29%が一時間~二時間未満と回答し、52.4%が毎日二時間以上と回答していることから、全体の80%以上が、毎日1時間以上、スマホを操作しているという情報接触態様が見えてきました。

続いて、総務省 情報通信政策研究所が、東京大学大学院 情報学環との共同研究として実施した、「2018年度情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査」より、平成30年度のコミュニケーション系メディアの平均利用時間を確認すると、SNSの平均時間は、10代平日54.0分→71.6分、10代休日75.8分→98.7分、と前回の調査からも大幅に時間が伸びているということがわかりました。

上記の図表は、別々の調査結果から確認している為、2時間を超えるスマホの利用時間を分母とし、SNSの利用時間が休日は1.5時間あり、その占有割合は75%もある、と結論付けることはできませんが、動画を見る、天気や交通情報のアプリを使う、検索エンジンを利用する、口コミサイトを読む、といった情報収集や、ゲームをする、音楽を楽しむといった、数多あるスマホの利用シーンにおいて、かなり多くの時間をSNSの利用に費やしている、という実態が垣間見えてくるのではないでしょうか?

情報検索にSNSが使われる理由の一つとして、デジタルネイティブ世代のSNSとの接触時間の長さや、スマホに触れる時間に占めるSNSの占有率の高さ、が挙げられるのではないかと思います。

2.嘘偽りのない今を表すSNS


本項では、デジタルネイティブ世代が情報検索手段としてGoogelやYahoo!といった検索エンジンを利用せず、SNSを主たる検索手段に用いる理由を、別の角度から考えてみたいと思います。

私が、大学や大学院で講師を務める際、特に学部生(20歳前後)を対象とした講義の際は、このような質問を投げかけています。
「検索エンジンを使わず、SNSを利用する理由はなんですか?」

学生からは、様々な表現で、いろいろな回答が出てくるのですが、最近聞いた回答を大まかに分類すれば、以下の2つに大別出来るのではないかと思っています。

・「情報が古い(実態を表していないかもしれない)」
・「時間がかかる(知るという目的を果たすために)」

アナログ世代の筆者は、日常、検索エンジンを良く使っている為、率直に申し上げ、このような印象を持つことは少なかったのですが、検索エンジンを経由して到達するWEBサイトと、SNSが持つ特性を勘案した場合、学生の皆さんが仰っていることには、一理以上のものがありますので、2つの事例を通じ、確認していきたいと思います。

一つ目の「情報が古い」という点を考えてみたいと思います。私が好きなテレビ番組の一つに、毎年9月に放送されている「有吉の夏休み」という番組があります。ご存知の方も多いかと思いますが、タレントの有吉弘行さんが、気心の知れた仲間たちと、ハワイで夏休みを過ごす様子に密着するバラエティ番組です。

私は、毎年かかさず楽しみに観ているのですが、今年放送された「有吉の夏休み2019」で、出演者が宿泊していたワイキキ・ビーチコマーbyアウトリガー、というホテルを取り上げ、情報の鮮度について考えてみます。

ワイキキ・ビーチコマーへの宿泊を考えている人が、お部屋の様子や、部屋から見えるワイキキビーチの景色を確認してみたいと思い、WEBで検索をした場合と、SNSで情報検索をした場合、表示される情報にはどのような違いがあるでしょうか?

実際、同じワイキキ・ビーチコマーについて発信される情報の相違点を、ワイキキ・ビーチコマーbyアウトリガーの公式WEBサイトと、Instagramで見比べてみたいと思います。

引用させていただく、こちらのWEBサイトの「客室とアメニティ」というメニューを押下すると、お部屋の紹介がありますので、まずはご確認ください。

オーシャン・ビュー紺碧に輝く海の眺めを。

続いて、「#ワイキキ・ビーチコマーbyアウトリガー」で検索した、Instagramの中で、上記のオーシャン・ビューが掲載されている写真をご紹介させていただきます。

こちらの2つのオーシャン・ビューの写真は、ほぼ同じ構図で撮影されているものですが、ご覧頂くと分かるように、解像度やサイズの問題もあるのかもしれませんが、Instagramで紹介されている写真の方が「臨場感(シズる)」があり、実態を理解できるような気がします。

こちらのホテルは2019年4月に内装をリニューアルしてOpenしているのですが、お部屋の写真を考えると、WEBサイト(検索エンジン経由)は2つの課題を抱えていると思います。1点目は、ホテルが掲載する部屋の写真はリニューアル直後に撮影された、最もきれいで、コンディションが良い状態の写真であり、宿泊した日から、離れれば離れる程、古くなっていく、というものです。(ワイキキ・ビーチコマーbyアウトリガーのWEBサイトと実態のコンディションが異なる、という指摘を申し上げているわけではございませんので、悪しからず。一般論としてのご説明です。)

もう1点は、WEBサイト(検索エンジン)を通じて表示される画像は、今年4月のリニューアル前に撮影されたものが消去されずに残置されているケースも見受けられました。この場合、たどり着いた先の情報は、実態を表していないことになり、ご覧になった方の中に、誤った情報がインプットされてしまうかもしれません。

一方で、Instagramの投稿は、投稿日を見れば、その情報の鮮度を理解することができます。例えば、投稿日が、宿泊予定日から遠くない日付のものであれば、おおよそ実態を表していると、判断することができそうです。

上記のWEBサイトとSNSの相違点から、情報検索手段にSNSを用いる理由として、「情報の鮮度」が挙げられるのではないかと思います。WEBサイトにある情報の真偽や新旧といったことを、自ら評価し、情報を取捨選択する、という行為は、頭を働かせることであり、そこには「考えるコスト」が発生しています。

私は、デジタルネイティブ世代がSNSを情報検索に用いる理由の一つを、SNSは「考えるコスト」を多く支払う必要がない、あるいは検索エンジンを用いた情報収集よりも「安価」であるためだと、整理しています。

3.理解する時間を短縮する


続いて、情報検索に「時間がかかる(知るという目的を果たすために)」という課題感について、考えてみたいと思います。こちらも、WEBサイト(ここでは化粧品の口コミサイト@コスメ)とInstagramとを比較し、主に知るという目的を果たすための情報処理の視点で見比べてみます。

まず、両者を比較するために、コーセーが発売しているアイカラー「エスプリーク セレクト アイカラー N」という、目元を輝かせるアイメイクの商品を取り上げます。

こちらの「エスプリーク セレクト アイカラー N」の購入を検討している方が、商品の特徴や使用感について、口コミを確認したいとして、@コスメで、商品の評価やレビューを確認しようとする場合、該当商品の口コミページは、テキストベースの情報だということがわかります。

一部、写真を投稿しているレビュアーも見受けられますが、商品の特徴やその使用感については、基本的にテキストベースで紹介されています。※ご興味がある方は、以下の@コスメのWEBサイトで、「エスプリーク セレクト アイカラー N」の口コミをご確認ください。

一方で、「#エスプリーク セレクト アイカラー N」で、Instagramを検索してみると、色とりどりのアイカラーの写真が表示されます。商品のカラーバリエーションを紹介している写真があれば、本商品を利用したアイメイクのテクニックを、何枚かの写真を掲載しながら、ご紹介をされているコスメ系インスタグラマーの方もいらっしゃいます。


Instagramは口コミサイトと比べ、画像が主になっており、直感的で情報量が多いことがわかります。アイカラーは、カラーバリエーションが豊富な商品であるという特徴を持ち、使いこなすには、Howtoが必要だというメイク商品の特性を考えると、テキスト情報よりもビジュアル情報のほうがわかりやすく、メイクのコツや商品のバリエーションを理解することにかける時間(情報処理)は、テキスト情報に比べて短く済むことがわかります。

このように、コスメ商品に限らず、テキストよりも、ビジュアルの方が、情報量が多く、正確であり、理解するための時間を短縮できる、という分野が他にもあると思っています。

例えば、「グルメ(外食)」、「レシピ(または献立)」、「旅(ホテル、スポット」、といった情報検索では、目的の情報にたどり着くまでのスピードや、テキスト情報に比べ、目で見てわかる、わかりやすさがビジュアル情報にはあり、情報処理や理解の時間を短縮する出来ることから、今後もSNSを利用するシーンが増えていくのだろうと、予想することができます。

4.SNSが検索手段になる必然

最後に、本節のまとめとして、デジタルネイティブ世代がGoogelやYahoo!の検索エンジンではなく、SNSを主たる情報検索手段として利用する理由を、簡単にまとめましたので、以下の図表をご覧ください。

まとめ

1点目は、「接触時間」の多さです。常に身近にあり、手のひらの上の情報検索ツールであるスマホの中で、総接触時間が最も長い機能がSNSであるということをご紹介いたしました。

2点目は、「情報の鮮度」です。SNS自体が、日々、起きていることを切り取り、リアルタイムに発信、更新する、という動的な特性があることが、固定的(静的)な情報発信手段であるWEBサイトとの相違点です。

また、情報の正確性、という観点でも、SNSの情報発信主体が内発的な動機の下で投稿する個人(が多い)、という背景から、商業ベースのWEBサイトと比較した場合、発信された情報の真偽を確認するために、考えるコストを割く必要がない、という点も、情報検索手段の採否を分けるポイントになっています。

最後に、Instagramとの比較でご紹介した「ビジュアル重視」という特徴です。動画や静止画は、テキストに比べ、格段に情報量が多く、その説得力の違いは一目瞭然です。目で見てわかる、手触り感のある情報、というSNSの特徴が、デジタルネイティブ世代から支持を受けている理由だと考えられます。

第1章(3)SNSが検索手段として適している理由、では、情報検索において、SNSを利用することが、デジタルネイティブ世代にとって必然な理由について、ご紹介いたしました。

次回は、第2章 知らぬままに置いてけぼりになるリスク(1)消費購買プロセスって変わった?として、デジタルネイティブ世代の商品の選択や購買を決めるプロセスについて読み解いてみたいと思います。

宜しければ、-デジタルネイティブ時代の情報発信note-
令和時代の情報検索手法も併せてご覧ください。

 ここまで、ご一読いただきありがとうございます。マーケティング視点で読解力を高めるノートでまとめた電子書籍のコンテンツも、ご覧いただけたら、幸いです。

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