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締約国会議4日目ルポ(11月30日)

会議4日目、条約の12「普遍性」についての議論が行われました。

各国の市民社会(civil society)からの発言も多く、日本からはNGO連絡会の発言がありました。以下にその内容をまとめてお伝えします!

アフリカからの参加者:
核兵器は新植民地主義を作り出している。ネルソンマンデラは “We must ask a question… why do they need them anyway?(私たちは聞かなければならない、結局なぜ彼らは核兵器が必要なのか?)TPNWは補完性がある。アフリカ非核兵器地帯条約(ペリンダバ条約)にも言及。

NGO連絡会(浅野英男さん):
ヒバクシャ(核実験や原爆の被害者)の実体験を伝えていく必要がある。TPNW12条「普遍化」は重要であり、政治家や市民社会の様々なセクター間のコミュニケーションの場が必要である。

共同議長(メキシコ):
ウィーン行動計画7について。国連の軍軍縮教育の取り組み、市民社会の軍縮教育の取り組みを確認すること。市民社会(Guardian of nuclear taboo:核のタブーの保護者)である。

つづいて、第4条「核兵器廃絶の実施」に向けて議論が進められました。

共同議長から、これまでの人道会議で触れられた内容についての報告の後、科学諮問委員会から以下のような指摘がなされました。

・核燃料や輸送システムに関する配慮
・核検証委員会、学術委員会、地域委員会、科学委員会などのネットワーク構築

これらを主導する(核に関する組織に留まらず)新しい視点が必要であることについて言及されました。

次に、6条と7条「被害者支援・環境回復」についての議論セッションが開かれました。
ここでも主な発言国とその内容について紹介します。

キリバス・カザフスタン
1回目(前回)の締約国会議以降、共同作業グループとして議論が交わされてきました。
被害者支援と環境回復に加えて、国際信託基金の実現可能性とガイドライン作成についても言及し、次回以降(第3回)の締約国会議に向けてのガイドライン提案のために、科学諮問委員会や国連機関であるUNDIR(国連広報センター)とも連携してワーキンググループのが進行していることも報告しました。

ニュージーランド
市民社会の重要性についてあらためて言及。核兵器使用に関して、人道性・先住民への影響・核レガシー問題点の観点から、気候変動や海面上昇、それらによる核実験場への影響など、太平洋の国々に重要な地球規模の課題に対する取り組みに関して指摘しました。各国の核に関する報告義務の規定についても触れ、国際信託基金やガイドラインについては共同議長とや他国とも連携を図りたい旨を述べました。

ICRC(赤十字国際委員会)
紛争の現場において当事者と中立な立場での対話を行う機関としての意義を主張したうえで、この条約に関して国際信託基金に期待すること、NPT(核拡散防止条約)やTPNW(核兵器禁止条約)へ未加盟の国々やTPNW以外の協力関係にも芽をむける重要性について言及しました。また、ICRCユースを代表して高垣慶太さんは、過去の核実験や原子爆弾による影響の過小評価がなされていることの問題性を指摘し、核被害者への補償の必要性を訴えました。加えて、そうした核兵器の問題に関して、教育や協力の重要性をスピーチしました。

南アフリカ
1989年に核兵器を放棄した南アフリカ周辺地域で行われてきた核実験について言及し、核兵器の廃棄の検証や国々による報告形式への賛同を示す発言を行いました。

キューバ
各国による核兵器に関する情報報告の透明性は重要であり、委任するワーキンググループの継続を支持しました。

フィジー
核兵器に関する問題の情報を入手することの困難さに言及し、情報収集の改善についての対応を求める旨を発言しました。

今回は7か国がオブザーバー参加となりましたが、一部の国からはその他の国に働きかける旨の発言も聞かれ、そうした各国の立場性に則した包括的なアプローチの方法も一つの論点だったように思います。

スイス
TPNW締約国以外の国からもサポートが得られるように呼びかけることも明言されました。

各国の主張に続いて、市民社会からの発言も複数ありました。

ピースボート
核被害者を中心に据えた援助に関する議論の重要性を協調し、核使用の影響を受けた人々をどのように援助するのか、国際信託基金をいかに活用するのか、という点について問いかけが行われました。

International Human Rights Cilinicと ICAN
核兵器に関する報告義務について触れ、国際信託基金の重要性についても言及しました。

そのほか、Reserve theTrendなど、比較的に(戦争を経験した事のない)若いユース世代による発言が活発に行われました。市民社会の尽力によって成立した、このTPNWの特徴とも言えるのではないでしょうか。

共同議長(カザフスタン):
核兵器に関する研究やワーキングペーパーの作成について言及。各国からの報告制度に関して、経済的・技術的・コンサルティングなどの面から幅広いサポートを行うことが重要だと協調しました。

4日目の最後は、5条の「国内実施措置」に関する議論が行われました。

ここでは科学諮問委員会による活動と研究結果について紹介がありました。
(それぞれのレポートなどは国連のサイトから閲覧することができます。)

科学諮問委員会の活動報告
https://undocs.org/en/TPNW/MSP/2023/6
研究結果の報告
https://undocs.org/en/TPNW/MSP/2023/8


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