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イギリスの大学受験制度からみる学校間格差問題

このnoteは、2023年10月23日の Voicy「【教育の明日をよむ】knockout の10分キャッチアップ」の配信内容をもとに作成したものです

この9月、長男はイギリスの大学生になりました。受験期の1年間、イギリスの大学受験を通して親として感じたことを書いてみます。

海外留学というと、多くの人が思い浮かべる国はアメリカでしょう。歴史的な経緯もあって国と国が密接に関連していますし、経済的にも学術的にも調子がいいアメリカを目指したいという高校生や大学生は多いんじゃないかなと思います。

それに対して、長男の留学しているイギリスは、 アメリカに比べると留学生の数はずっと少ないです。

ですので、イギリスの大学受験のシステムをご存知ない方もきっと多いと思います。先に、簡単にどういう仕組みなのか説明します。


ざっくり解説 イギリスの大学受験のしくみ

日本の一般的な受験と違い、イギリスの場合、ペーパーテストを受けて、テストの点数の高い人から順に合格を出していきますというシステムにはなっていません。

〇〇大学の△△学部を受験したいと思ったら、まずはその大学・学部のサイトで情報収集をします。そうすると、そこに entry requirement (入学必要条件)、つまり、必要となる成績の基準が書かれてあります。その基準をクリアすることが合格を得るためのひとつの条件になります。

イギリスの受験の場合、志望する大学に提出するのは成績だけではありません。personal statement(志望動機書)と呼ばれる、アメリカ式でいうところの「エッセイ」も提出します。合否の判断はそれらの総合評価になってしまうのですが、一応、成績的な基準という話でいきますと、entry requirement に書かれてある成績をクリアすれば、合格を得られる可能性が高くなる、というシステムになっています。

一例を挙げます。ブリストル大学物理学科のサイトを見てみますと、「スタンダードオファー(A-level standard offer)」の欄には【 A*AA 】と書かれてあります。

引用:University of Bristol

A-level という高校卒業時に受ける高卒/大学入学資格試験で、A*を取った科目が1教科、それからAの評価を取った科目が2教科。この基準をクリアすれば、オファーの可能性がありますよと書かれてあるんです。

さらにサイトを細かく見ていくと、A*と2つあるAのうちの1つは、数学・物理・化学・コンピューターサイエンスから選んでくださいね、もう1つのAはどんな科目でもいいですよ、といったことも書かれてあります。


ほとんどのイギリスの高校生は、高校2年間で3~4科目を選択してその科目を集中的に勉強します。そして、卒業時の最後の試験に臨みます。

ただし、大学に出願する成績は、その最後の試験の1年前に学校の先生から出される「predicted score(予測成績)」となります。今のあなたの到達度やこれからの伸びしろを考えると、卒業時の試験ではこれぐらいの成績が取れますよ、と先生が成績予測をつけてくれるのです。

そして、その「predicted score(予測成績)」を基に、自分の行きたい大学・学部にエントリーするのです。


ブリストル大学物理学科に話を戻します。「スタンダードオファー(A-level standard offer)」は【 A*AA 】という基準になっているんですが、 その下を見ると、もう1つ別の基準があるのがわかります。

引用:University of Bristol

それが「コンテクスチュアルオファー(A-level contextual offer)」 と呼ばれるものになるのですが、こちらには【AAB】と書かれてるんですね。2つのAは、数学・物理・化学・コンピューターサイエンスから選んでね、最後のBは、どの科目でもいいよ、となってます。

そうなんです。成績の基準が2つあるんです。


イギリス大学受験の謎に迫る

最初、これを見た時に、「なんでこんなことになってるんだろう?」と不思議に思いました。そして、調べてわかったんです。

イギリスには、社会経済的に厳しいエリアがあって、そのエリアの公立学校の生徒については、数段階低い成績でエントリーしたり、合格をもらったりすることができる、という制度があるんです。

これって、日本だと全然馴染みがないことですよね。住んいでるところによって合格基準が変わるんです。一部、医学部等で、「地域優先枠」みたいな制度はあったりしますが、 本来、一律であるべき合格基準が、人によって全然違うというのは、日本の受験制度に慣れている我々にとってはピンと来ないんじゃないかなと思います


平等な試験では成り立たない理由

イギリスの学校というと、いわゆる、私立のボーディングスクールや、そのなかでもひときわ輝く名門パブリックスクールが有名です。

豪華なお城のような学校で学び、寮生活で、かっこいい制服を着て、キラキラしたスクールライフを送ってる。そんなイメージを抱きがちなのですが、それというのは、本当に一部の上澄みだけであって、国内全土を見渡すと、当然厳しい地域もある。恵まれた学校とそうではない学校を比べると、その格差たるや、ものすごいことになっているんです。

例えば、これは調べたり聞いたりしたことなのですが、ある厳しいエリアの公立学校で学んでる生徒は、本当はやりたい科目があるのに、その科目の先生がいなくて履修できない。というようなことがあるらしいんですね。

日本ではなかなかそういうことは考えづらいですよね。素晴らしいと言われる私立の進学校であっても、あるいは地元の公立学校であっても、基本的にはどの科目にも教えられる先生はいて、自分が学びたいものは学べるようになってるはずなんです。

そうした日本における学校間の違いと比べると、イギリスの学校間の違いはもっとずっと大きくて、その格差は、我々にとってはなかなかイメージしづらいんだろうなと思います。


SNS、とりわけ X(旧 twitter)を見ていると、日々、私立の学校がいいよとか、いやいや公立も負けてないよ、といった話が侃侃諤諤なされています。

ただ、1歩離れて、外側の目から見てみると、日本の教育は本当に標準化されていて、どの学校にいても、意欲さえあれば、自分が学びたい勉強はできるようになっているんですよね。

先生がいないからその科目は学べませんとか、そもそも親が学校に行かせない雰囲気があるとか、そこまで厳しい環境はないのではないかと思います。

ですので、特に結論があるわけではないのですが、日本(の教育熱心なエリア)で思われているような学校間の差は、実は、みんながそこまで深刻に捉えているほどの差はないんじゃないか。そんなふうに思ったりもします。

親が子を思う気持ちには際限がなく、特に、受験の学年にもなると、頭がカッカして、視野もグッと狭まって、汲々としちゃうこともあります。でも、少し広い視野で物事を眺めてみると、ちょっと気持ちが楽になるんじゃないかなという思いもあり、今日はこんな話を書いてみました。


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