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一日一鼓【12月】

一日一鼓【12月まとめ】
『魅せて、魅せられ、惑わして。』


この世界に生きる人じゃない、そう感じる人がいた。

この世界…この狭い世界、このつまらない世界。俺の世界。


23時45分、ホットスナックが売り切れるのを待っていると、大抵やってくる人がいた。

彼女がくるたび、思った。


 なんだ、またか と。


絶対にホットスナックなんて買って行かない常連さんだった。

名前も住所も年齢も知らない。


23時45分、エネルギーチャージのゼリーと、たまに絆創膏。

黄色いクマの“ハズレなしのキャラクターくじ”が始まったら

じっとぬいぐるみを眺めて…

結局やらずにエネルギーチャージのゼリーと、たまに絆創膏を買って帰っていく。


きっと黄色いクマのキャラクターが好きなんだろうと思う。


でも、分かるのはその程度で。

やけに姿勢が良くて、決まってその時間にやってくる、俺よりちょっと年下の女の子。


25歳でこんな生活するなんて

俺だってあの子くらいの頃には思ってなかった。


地元で成人式を迎えて、その頃はまだフリーターになるなんて思ってなかった。

かと言って、何か夢(…という立派なものじゃなくても、目指すもの)を持ってるわけでもなかった。


そういう普通でつまらない、たまにある大学生の末路を生きるのが俺だった。


だから


目の前の生活にいっぱいいっぱいの自分にとって

普通、並べば見てしまうレジ横のホットスナックに目もくれない彼女は、

そういう“普通”に目もくれない彼女は、

100くらい先の生活を見ているであろう彼女は、


「違う世界で生きる人」だった。

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