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一日一鼓【10月】

一日一鼓【10月まとめ】
『ある世界の「誰か」の物語』


「ワタシ、あなたに会えて幸せだった。だから最後にひとつだけ…」


目尻の雫がツーっと滴れる。


聞こえるのは子どもの鳴き声。

それは、あの子と出会った時を思わせる。

あの子が生まれたとき…そうあの瞬間。


意識が朦朧とする中でワタシを繋ぎ止めていたのは、彼女の声だった。

お母さん、会いに来たよって、そう言っているかのように

ワタシの遠のく意識を掴んで離さなかった。

どっと溢れた涙の訳は

会いたかったよ、やっと会えたね、頑張ったね、ありがとう。

そして、間に合った。

嬉しくて、悲しくて、寂しくて。

別れを生み出す出会いを

ワタシはこの瞬間してしまった。


いろんな感情を含んだ涙が口の中で溶ける感覚をワタシは今でも鮮明に覚えている。

口の中で涙が溶けていったように、

今ワタシの中に人の血が溶けていく。


あぁ、もうすぐ。もうすぐ会えるね。


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