振袖を脱ぎ捨てて
拝啓 12歳のみくへ
お久しぶり。というあいさつであっているのかな(笑)
12歳のあなたが20歳の私に書いた手紙が先日届いたから返事を書かなきゃいけないなと思って、この手紙を書いています。元気ですか?元気だったね確か
まず、私の近況だけど、東京で大学生をしています。山形から出ることなんて想像してなかったでしょうね。家業もろもろを継いでいると思っていたでしょ、そんな記憶があります。
ちゃんと頭使って生きてる?!と手紙に書いてあったけど生憎頭はあまり使っていないかもしれない。期待に応えられなくてごめんなさい。
愛犬のことすごく気にしていたようだけど、彼女は今もとても元気だよ。
あなたが親に怒られたときは犬の小さな体に怒りをぶつけてしまうこともあったし、辛いことがあった時は犬の背中で涙をぬぐったし、苦しいことがあった時はずっと膝の上に乗っけて八年たちました。苦楽を共にさせてしまって今ではよぼよぼだよ。ふとした時に少しでもいたわってあげてください。
さて、ここからは今の私から、12歳の私へのメッセージ。ちゃんと読んでほしい。
手紙の書き方からも伝わってくるけど、とてもあなたは自分をきれいに見せようとする癖があります。もちろん当時も自分がそういう性質があることに気づいていましたね。周りよりも考えすぎてしまうこと、いろいろなことに早く気づきすぎてしまうこと、模範解答ではない回答の出し方をしてしまうこと、などにあなたはたくさんのコンプレックスを持っていますね。だから、必死にそれを隠して、必死に模範解答通りの人生を歩もうとした。自分の考えや好みや性格ももちろん模範解答に落とし込もうとします。辛い時に辛いといえない、泣きたいときに涙を流せないように、心があまり揺れないように自分を矯正しようとします。そんなことに力を使いすぎたせいで、高校生のころには、何も特徴のない人間になります。これは本当です。
でもそうでもしないと自分を受けいれてもらえないのと考えていたと記憶しております。自分がどう見られているかを気にしすぎていたのです。自分を客観視出来すぎてしまうことで自分の周りとの違いを意識しすぎてしまっていたのだと思います。
苦しいことばかり言ったけど、ここから少しだけいいことを教えます。12歳のあなたには想像がつかないくらい、今の私はたくさんの場所でたくさんの人との出会いを経験します。もちろん別れも。その中で、あなたの本当にめんどくさくて、敏感な性格を、前向きにとらえてくれる人が現れます。苦しむあなたを包み込んでくれるような優しい人との出会いもたくさん経験します。泣きたいときに胸を貸してくれるような人にもたくさん出会います。そうしてあなたは自分がありのままの自分を表現しようと思えるようになって、生きるのが急に楽しくなります。自分を主張すること、表現することには確かに犠牲も伴うことも学びます。でも、逆に得られる深い信頼関係があることにも気づきます。このことをもっと早く気づけていたら、と思うので、特筆しておきますね。もし12歳のあなたが勇気を振り絞れるのなら、その優等生キャラは真っ先に捨てなさい。自分の意見を言わないだけのにわかせい女子はやめなさい。自分の感情を押し殺さず、正直に生きなさい。
こんなとこかしら。
あっ最後に一つ、あなたの手紙の中で
今の私は、やさしいすてきな家族にかこまれてしあわせに生活しています。私もそんなすてきなかぞくを作るのが夢です。いい人見つけなさいよ!!
って書いてあったの、すごく感動しました。最後の一文は余計だけど(笑)
思春期を通る過程で、両親とぶつかることもたくさんあるけれど、どんな時も両親はあなたの一番の味方でいてくれている、ということを忘れないでください。
「すてきなかぞく」つくれるといいね。
あまり諭すようなことばっかり言ったけれど12歳のあなたが想像していたほど二十歳の人間は大人じゃなくて、本当に未熟でした。だから私のこれからについても書いておくね。
出会いと別れに貪欲に、自分の感性に正直に向き合いたい。もし過去の自分のように自分の感情や個性を押し殺している人がいるなら救ってあげたい。そのためには、少し強引にでも、自分が出会った人には深く関わろうとしていきたい。それが私に合った生き方なのかなと今は考えています。過去の私からの伝達であった、「関わる人全てへの感謝を忘れずに」というのもその通りだと思ったので、これからの目標にします。
成人式の華やかな振袖を脱ぎ捨てて、覚悟を決めて再出発。
じゃあね!行ってきます!また逢う日まで
敬具
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