「誰かの好き」を尊重する

これはコロナが流行したものの少し落ち着いた時期だったと思います。当時の私はいわゆる「推し活」をしていて、大好きなアーティストのライブを観に行ったり、それ以外でも気になったアーティストのライブを観ることもありました。コロナ前は少なくとも月に1回、多いと3回くらい東京に行っていました。

その日は久しぶりの東京遠征でライブを楽しんだ後、食事をしてからバスセンターで帰りの夜行バスを待っていました。その時に偶然にも地元の友人に出会ったのです。彼は小学生時代からの知り合いで、現在は公務員をしています。以前は年に1回くらいのペースで彼を含めた数人で飲み会をしていて、友達の少ない私には珍しい仲の良い友人のひとりでした。彼は奥さんと一緒に東京に住む娘さんに会いに来たと言っていました。私がライブを楽しんできたことを伝えると、彼は私に「月に何回くらい東京に来るの?」と尋ねてきました。私が「月に2回くらいかなぁ」と答えると、彼はこう言ったのです。

「お前さぁ、どんだけお金掛かってんだよ」

私はその言葉と私を蔑むような彼の言い方に、本当に傷つき、嫌な気持ちになると同時に、とても馬鹿にされたように感じました。

もちろん、誰かに自分の趣味を理解して欲しい訳ではありませんし、私も他人の趣味を理解することが難しいと感じることはあります。しかし、誰かのお金や時間の使い方、どんなことに興味関心を持っているかなんて、他人がどうこう言うことではないと思うのです。「そんなことに口を出すな」が基本であり、簡単に言えば「ほっとけ!」です。
そして、「自分の好きを否定される」ことは、「自分自身を否定される」に近い感覚になるのです。正直なところ、「こういうことを言う人とは、お付き合いしたくない」というのが私の本音です。私には、自分の大切な価値観を否定するような人と、わざわざ会う時間的な余裕も精神的な余裕もありません。そんな時間があるなら、自分が好きな人達との時間を増やしたり、ひとりでもいいから「自分の好き」のために時間を使うほうが、ずっと人生が豊かになるような気がします。

この一件から得られた私自身の教訓は、「自分の好きを大切にする」と同じくらい「他人の好きを尊重する」ことの大切さであり、もし「他人の好き」に対して理解が難しかったとしても、少なくとも否定することなく、尊重できる人でありたいということです。

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