危機下こそ、これまで持ってきたビジョンを試されている。
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危機下こそ、これまで持ってきたビジョンを試されている。

はじめに

 私が就職活動をしていたのは、2011年だった。リーマンショックが100年に一度の大不況と言われていた。そんな不況のあと、東日本大震災が襲った。あの暗い2011年の就職活動は、忘れられない。

 2020年に端を発した新型コロナウイルスは、世界中の社会不安を招き、再びリーマンショック旧の不況のトリガーを引いた。人とモノの移動が自由になったグローバル化を背景に、このウイルスは地球上で拡大してしまった。100年に一度といわれた不況は、すっかり、10年やそこらで再びやってきたのである。

不況

 私が代表として参画している金子書房も創業して74年。下手したら過去最大級の危機に、私の代で直面するのかもしれない。これから先の不透明さは、はっきり言って、日々恐ろしい。

 私たちもこれからどうなるかわからない。しかし、今この不透明な状況を、どう捉えるべきなのか。

 私は、タイトルの通り「危機こそが、私たちがビジョンを持ち続けられるか問うている」と考えている。今この状況をどう捉えるべきか、考えていることを徒然なるままに書きたいと思う。

 BAIN & Companyの『不況期にこそ躍進するための戦略』というレポートがある。その中には、こう記されている。

勝者となる企業は、未来の状況と、自社の未来のあるべき姿を想定し、そこに到達するために必要なマイルストーンを特定するために未来像から逆算して考えています。そうすることで、景気後退時における機会を有効に活かすことができるのです

 すでに「withコロナ時代」など、長期戦を覚悟しなければならないことを想定した言説も出てきている。実際に、多くのゲームをこの危機は変えることになったであろう。

 しかし、Bain & Companyのレポートが示すように、こういう状況下だからこそ「未来のあるべき姿」を想定して、そこに向けていかに一歩を踏み出すかが大事なのである。

Our Vision & Value

 仕事において最も大事なことは「理想を描き/(もしくは)目標を持ち」、「そこに向けてどんな戦略/戦術を描くか」「どんな価値を世の中に提供するか」だと考える。

 74年、金子書房は心理と教育の専門出版社として事業を継続してきた。その中で大事にしてきたことを言語化しようと思い、私は以下のコーポレートビジョンを掲げた。 

わたしたちは、人の”こころ”を大切にします。
人のこころに関する事柄に真摯に向き合い、
多くの人に役立つ商品・サービスを提供します。

 このビジョンの達成のために、私たちは以下の2点から具体化をしている。

①人がより幸福に生き、人生を充実させることができるよう、専門性や科学に裏付けられた情報発信をしていくこと。

②「こころの理解と支援のため」に役立つ心理検査ツールの開発と販売。

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 特に専門家の方々が、熱中しながら「この専門書に出会えてよかった」とか、「このツールがあってよかった」と、心をつかんで離さないようなものを出し続けたいのだ。少数の熱狂を生み出せる会社でありたいと、心から思う。私たちには、こうしたビジョンがある。

試されている、私たちのビジョン

 さて、本題に入ろう。こうして私たちは、志を持って事業をこれまでやってきた自負がある。しかし、このコロナ・ショックともいうべき出来事は、私たちのこれまでの在り方に挑戦状を突き付けているようにも感じている。

 弊社のプロダクトはこれまで、売上の9割近くが紙をベースにしたものだ。そして、広告費もほとんど同じ比率で新聞/雑誌/学会誌の広告を中心としてきた。誰がどう見ても、アナログに強みを持ってきた会社である。

 このコロナ・ショックは、私たちに大きな難題を突き付けた。一つは、書店の休業に伴う注文数の激減もそうだし、心理検査商品もまた、対面を前提としているものが多く、これからどうなるか不安に思っている部分とがある。デジタルでなければ、商品が届きにくい状況が出てきている。

 さて、あらためて、今ここで問われているのは、事業を「未来に進める意志」ではないだろうか。

出版社の競争力

 深層の競争力とは、顧客からは直接見えない実力である。編集者個々の技術力もそうだし、ネットワークの形成能力、企画提案力、納期通りに仕事をやりきる力、ものづくりの素材選びなどがそうだ。

 一方で、表層の競争力とはプロダクトそのものの魅力である。どんな商品を出すかとか、いかにマーケティングをするか、どれぐらいの値付けにするか、どういう場所に流通させるか、だ。(これらモデルは、ものづくり経営について研究している藤本隆宏氏のモデルを参考にされたい。)

 そう、これらすべて、わたしたちは「紙」を前提として最適化してきた。深層の競争力も、表層の競争力も、紙で勝負することがほとんどであった。

 ここまで来れば、もう大体、この先の展開が予想できる読者も多いと思うが、あえてあらためてここで宣言したい。

 そう、コロナ・ショックは私たちに本格的な「デジタル対応」ができるかどうか、問うているのではないかと私は考えている。これまでとやり方を一気に変えたとしても、これまで持ってきたビジョンをやり抜く意思があるかどうか。時代が、私たちに問うているのである。そう、デジタル領域の深層の競争力を蓄積するため、組織の中の制度設計を変えていく必要があるのだ。

 私たちはこれから下記のようなデジタル化に重点をおきたい。

2020年の目標

心理検査のオンライン化

 現在、私たちはオンラインで心理検査を実施するためのプラットフォームを開発している。これにより、必ずしも対面せずとも、受検者はいつでもどこでも機能上は受けることができるようになる。

 海外では、心理検査のオンライン化がすでに進んでいる。実際に、検査のメーカーのHPを見れば、このcovid-19下でオンラインで心理検査をいかに実施するか、声明を出している。

 今でも紙による実施と手採点が中心だと思うが、現場の業務を少しでも楽にし、多くの人に役立てるオンラインの検査商品を出していきたい。

(※今こそ、本当に多くの人が必要としている中でリリースがまだできておらず、申し訳ございません。もう少々お待ちいただけますと幸いです。)

・noteによる専門情報の発信

 noteを通じて、これから弊社は多くの専門家に執筆いただき、専門性に裏打ちされた情報を発信していきたいと考えている。

 これまで「書籍ほどの文量ではないけれど、タイムリーでお役立ちできる情報の発信」というのは、ずっと雑誌が担ってきた機能であった。専門誌というものがあることで、読者対象も専門家が多く、一般向けに必ずしも書かなくていいというメリットがあった。

 しかし、雑誌市場はこの数年で大きく縮小し、この形態での持続した情報提供は難しいものとなった。

 まだしばらくは、試し打ちのこともあり無料で記事を配信していく予定だが(※いずれは持続可能性のため有料化を検討)、私たちはnoteを通じて専門的でタイムリーな情報をこれから届けていきたいと考えている。こうすることで、インターネット上にもう少し専門的な情報が流通することに寄与できればと思う。どうか応援していただきたい。

・オンラインセミナーの開催

 とくに心理検査の商品を販売する上で感じてきたことだが、臨床に関する情報は、その普及において「教育機会の提供」が欠かせない。しかし、少なくない医師や心理職が関東圏外に住んでいることもあり、移動やスケジュールの調整が難しく、セミナーへの参加が困難であることをよく話に聞いている。

 そこで、オンラインでのセミナーを実施したいと考えている。オンラインであれば、時間や場所の融通がより効くはずである。

 また、書籍だけでは伝えにくかった実演的な部分は動画のほうがわかりやすいと考えられる。ZOOM等を使ったオンラインでのセミナーの実施も今後はしていきたいと考える。

2020年の目標

 画像を再掲するが、こうした取り組みを通じ、このcovid-19下にデジタル分野でもコーポレートビジョンの達成のために「いまできること」を注力していきたいと考えている。

 さて、「危機」という言葉は、「危険」(risk)と、「機会」(opportunity)の二面性を示している。
 オンラインとか、色々、新たな機会だってあるはずだ。素早くしゃがみ、早く立ち上がることができるように、臥薪嘗胆の思いで、次世代に向けて準備をし続けたい。

 私が自動車業界の出身というのもあると思うが、今、頭を過るのはトヨタ自動車の豊田章男さんだ。
 リーマンショック後に社長に就任し、その直後に「プリウスの大量リコール問題」を経験した。公聴会にて、彼は以下の発言を残したという。

「会社の名前と伝統と誇りに賭けて、私たちは問題から逃げようとはしませんし、また問題を隠そうとすることはしません。」

「ご存知のように私は創業者の孫であり、すべてのトヨタ車に私の名前がついています。私にとって車が傷つくことは私自身が傷つくことです。」

私も創業者の血縁の人間として、彼のこの姿勢は心から尊敬する。

すべての商品に、自分の名が刻まれているーだからこそ、逃げるわけにいかない。その想いに、心を打たれた。


私もまた、若き経営者の一人として、この時代と勝負したいと思う。

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「人のこころを大切にし、社会に貢献できる商品やサービスを世の中に届けたい」30歳。異業種を経て老舗出版社を継ぎました。創業以来、大切にしてきた想いを継ぎながら、ITを活用し、新たな選択肢をお客さまに提供したいと思っています。【経歴】早稲田(政経)→マツダ(本社 経営企画)→現職