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性という観点から見る僕ら

眠れなくて彼女の事を考えていた。
笑った顔、怒った顔、悲しい顔、切ない顔。
そのどれもが僕の心の琴線にいちいち触れる。

出来る事なら四六時中笑わせていたいし、鼻チュー(鼻と鼻でスリスリするやつ)した時に嬉しそうな、どこかくすぐったいような顔をする彼女を永遠に何処かに閉じ込めていたい気もする。どこに行こうが彼女がいれば忽ちテーマパークになるし、何をしてようが彼女がいればそれは何回も見返す映画のワンシーンのように愛おしい。

好きだとか愛しているだとかそういう類の感情なのだろうけれど僕は素直に、包み隠す事なく人間の純然たる欲望を感じずにはいられない。愛と欲望のそのどちらが先なのかも分かったもんじゃない。

"この子とセックスがしたい"

そう思ったのは彼女と出会って2回目のデートだったと思う。彼女の家の近くの居酒屋に行き(これがまたべらぼうに美味い店だった)駅前のカラオケ店に雪崩れるように入った。歌が歌いたかった訳じゃない。いつまでも酔いに任せて彼女の隣に居たかった。よく食べてよく笑う彼女の笑い声は鈴のように軽快で僕の持つ蟠りや些末な悩みを一つ一つ解してくれた。今思えばどれだけ彼女に救われていたか。感謝という2文字では到底表せないものだ。その日の夜に僕はまた救われる事になったのだが。

"ねぇ、いつ好きになってくれたの?"

何回この話題を持ち出そうが何回でも答えられる自信があるが単純明快にして実に滑稽な理由だと思う。"食べ方が綺麗で旨そうに食う、それによく笑う"きっかけはたったそれだけだった。よくある話だとは思うが何故か彼女はそれだけで僕の全部を掻っ攫っていった。"人間として好き"なんて軽率に推しに貢ぐドルオタの如く瞬きの間に全てを握られてしまった。雷に撃たれたのかと思った。

彼氏じゃなきゃ部屋に入れない。

ちょっとした事件だった。冒頭に話したカラオケ店でほろ酔いで歌った後僕らはあてもなくその辺の道路を行ったり来たりしながら喫煙所を見つけてタバコをふかし、どうでもいい話をごまんとした。今日この子を抱きしめて一瞬だったとしても一つになれたらどんなに幸せだろう?なんて思っていた矢先駅前のロータリーでベンチに座りながら彼女がそう言った。言ってもいい大人だからセックスから始まる恋愛なんて珍しくもないはず(当の僕はそんな事経験すらした事なかったのだが)なのに彼氏以外部屋には入れられない?????正直試されているのだと錯覚した。

"ここで押し切って多少強引に家に上がり込むか?ホテルか?ホテルならいいのか??いや待て本当にちゃんとした子だったらどうする!??"

なんて事を考えてるうちにもう夜は明けかけていた。迫る時間、明るくなる空、目の前を裏切られたように通り過ぎるタクシー。しばらく沈黙して僕は切り出した。

彼氏にしてくれる?

自信がなかったなんて言ったら嘘になる。それがリアル。普段から身なりやファッションには人並み程度には気を使っていたし、恋愛だって今回が初めてじゃない。なのに何故かずっというのを躊躇っていた言葉がこの時何かに押し出されるようにして口からこぼれた。その何か、それこそが

君とセックスがしたい。

純粋無垢、清廉潔白、品行方正なラブストーリーを期待した皆々様方。申し訳ない。僕だって男の子なのだ。生物的本能的にヘテロセクシャルだっただけの話だ。それくらいに彼女は魅力的な女性だった。何も知らなかったしそれでも良かった。今を逃したらこの子はきっと誰かのものになってしまうなんて強迫観念すら浮かんできた。

さあどうしようもない。それでも日はのぼる。

次いつ会える?

タクシーに乗り込む前彼女が放ったその一言がいまだに耳に焼き付いて離れない。カイジ的に言うなれば悪魔的だ。抗いようのない言葉だ。結果として僕は次の日の予定をこじ開けて会いに行くのだが。それだけならまだいい。彼女は自分の家の近くまで走らせたタクシーを降りて僕に何やら紙っぽいモノを押し付けてきた。

"この前の分!"

タクシー代だった。めっちゃちゃんとしてる子だった。こわい。黙って奢られてれば良いのに(彼女は2個下なのだ)急いで財布から出して押しつけて出てった。帰りの道中運転手さんも笑っていた。

お兄ちゃん、良い女捕まえたのぅ?

この後紆余曲折あって僕ら2人が付き合うのはまた別のお話。はじまりのセックスしたいって動機はひょっとしたら僕だけかもしれない。でも彼女はそれほどまでに魅力的で、今も尚それ以上の魅力で僕を虜にする。だから僕としても必死な訳である。彼女の望む容姿や性格やその他諸々に少しでも近付こうと日々奮闘する。

そんな単純な事で人間は変われる。変われなくとも少なくとも変わろうとは思える。よく出来た生き物だとつくづく思う。

性としての僕らは思っている以上に単純で、思っているより浅はかで、思っている通りに愛おしい。

そんな彼女との日々をこれからも綴りたい。

今日はここまで。
また与太話をいつか。
んじゃまた!!

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