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カネの貧しさとココロの貧しさ

"あ、これヤバイビジネス始まった"
大体こう言って何かが始まるのだ。僕らは2人ともビジネスモデルを考えたり、その内側の仕組みを詳細に調べたりする事が好きで、事あるごとにこの話になる。あれはレッドオーシャンだからダメ、あれはブルーオーシャンだけれど実現が現実的じゃない。先行投資がデカすぎる、いやコレはイケるかも。等と、どちらかが飽きるまでずっとこのやり取りが続いている。側から見ればとんだ金の亡者カップルだ。

しかしながら僕らはそれと同時にお互いの財布についてかなり無頓着でいる。どちらかがコンビニに行けば何かいるものは無いか聞き、あれば買って帰る。特にその後清算することもなく、次回自分の番が回って来たら同じように買って帰る。食べに行っても遊んでいても、その時お金を持っている方が出して何も文句は言わない。ある時彼女が言った。

"ほんと気を使わなくていいから楽"

同じ言葉をそっくりそのまま返そう。僕らは2人で特に何か決まり事を作った訳では無いがいつの間にかそうなっていた。彼女は一方的に奢られる事に対して申し訳なさを感じてしまうらしく、いつの間にか"ここは私が出すね"を僕もすんなりと受け入れてしまっていた。いつからかそんな遠慮のいらない関係性が心地よくなっていたのだろう。

幼い頃あまり裕福では無かったという共通点がある僕らだから、お金儲けやビジネスライクな話に興味が湧くのは必然なのかも知れない。今はお金に困っているなんて事はないが、お互い"あの頃には戻りたく無い"と言い合って貧乏を恐れている面がある。誰だってそうだ。お金があるに越した事はない。

しかし本当に怖いのはその金銭的貧乏から更に心までも貧しくなる事だ。これだけは本当に避けたい。卑しい人間になってしまうのだけは身包みを剥がされようとまっぴらごめんだ。それならばいっそ泥水を啜って生きていた方がよっぽど良い。貧乏故に人を妬んで、有る事無い事ぼやき時間を無駄にするような生き方はしたくない。

不思議と彼女からはそんな匂いがちっともしない。なんでなんだろうとずっと考えて居たのだが最近僕の中で仮説が出来つつある。

①自然の移ろいに敏感である事

彼女は気温、湿度、匂い、明暗そのどれもを敏感に感じ取っている。彼女の口から今日は暑いだの寒いだのを聞かなかった日はないし、彼女はそのどれもに敏感に反応を見せる。湿度が高くジメジメしていればこれでもかという程嫌な顔をするし、澄んだ空気の中雲が夕日に照らされていれば所構わず綺麗と空を見上げる。そんな豊かな人間味に僕は惹かれているし、何より彼女が心まで貧しくなったりしない人間だと思える点だ。

②自らの感情に素直過ぎる事

彼女はどんな事があろうと自らの情緒を隠したりしない。嫌なものは嫌だし、好きなものは好きなのだ。本当に嬉しい時は何故か悪戯っぽく笑うし、本当に悲しい時は子供のようにいじける。普段外では出来過ぎな程"オトナな彼女"なので、きっと貴重な表情なのだろう。時に不安定になる事もあるが彼女はそのありのままを受け止めて"今不安定だ"と何らかのサインで知らせる。本人からすれば知らせているつもりは無いのかもしれないが、僕はそれを誰よりも敏感に察知している。それは意図してと言うよりは無意識に彼女を目で追って僕が感じてしまうものの一つだ。

③誰よりも人の心に敏感である事

彼女はそれ故に気疲れを起こしてしまう事が多い。人と人との距離感や、その堆積や、相互関係に恐らく無意識に気を配っている。だから彼女は彼女が思うほどドライではない。いや、周りから見ればそう見えるのかも知れないが、誰よりも傷付きやすく、誰よりも寂しがり屋で、誰よりも情に厚い。僕はそんな彼女を心の底から愛おしいと思う。誰よりも人間臭く、誰よりも温かな心を持っている。きっとお金がなくたってこの子は変わらないんだろうな、と思う。

情緒の豊かさ

今日だって彼女が仕事へ向かった後、移動中に電話をしていると"今日の雨、なんか雪みたい"とポツリ呟いた。僕が覚えている限り、雨を雪の様だと形容した人間を知らない。なんで?と問うと細かな雨が雪の様に舞っているからだ、と。

あぁ、これだと僕は思った。彼女は僕にない目を持っていて、僕とは全く違う視点から物事を切り取る。最初からそうだったじゃないか。話の切り口、疑問を持つところ、何かに対しての感じ方。そのどれもが僕らはかなり似ている様でまるっきり違う。その違いに惹かれたし、何より面白いし、堪らなく愛しかったんだ。(はースッキリした)


今日も彼女は遅くなるらしい。
帰って来たら好きなアイスと飲み物を用意して
ゆっくりと寝られる様にしておこう。
彼女の寝顔を見ながら、どこが好きかもう一度全部思い出そう。もう一度恋に落ちよう。

そんな風に思った。


今日はここまで!
またいつか与太話を。
んじゃ、また!!

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